水道漏水探しは未知未知
岩田へいきち
水道漏水探しは未知未知
「けっこう漏れてるかも?」
「えっ、あんまり漏れてないって言ってだじゃん?」
ヒロシは、妻のルミに自分で計算した漏水量の説明をしていた。
これまで、上下水道代、1月2万円くらいだったのが先月、4万円引かれていたのである。危うく引き落とし用の通帳が不当たりを起こすところだった。
水道メーターの漏水パイロットは、確かに回っている。ヒロシは、以前からそれを知っていた。でも、こんなもんなんだろう。蛇口等の僅かな水漏れでもこの漏水パイロットは反応するのだろう。ピシャッと止めるのは難しいのかもなどと思っていた。冬場の水道管凍結防止や、緊急の猫の水飲み場も兼ねて、特に脱衣場の蛇口は、キツく締めずにほんの少しは、流していたからその辺りがパイロットの微動に繋がっているのだろうと思っていた。
しかし、4万円である。夫婦2人しか住んでいないのにだ。猫も2匹住んでいるから紙砂をトイレに流す水も使って、多めに使っているなとは思っていたが、4万円だ。これが毎月請求きたら、うちは、破産してしまう。
ヒロシは、真剣に調査を始めていた。ここ数年の月々の上下水道代の引き落とし金額を調べた。11月の4万2000円は一際高い。
漏水パイロット一回転で、何リットルの水が漏水するのか、AIに尋ねてみる。標準的には、一回転約17mlらしいがメーターの機種も色々だし、実際に測ってみると、180mlという例もあるらしい。ちょっと未知の世界だ。ヒロシは、その大雑把な値で、計算してみる事にした。ルミが撮影したメーターの漏水パイロットの動きを動画で確認した。およそ1分間に7週回っていた。先ずは、標準の17mlの場合だ。
1分間で119m l。1日24時間で171ℓ。1ヶ月30日として、1344円分流出。これは少ない方と考えよう。最悪の場合、1回転180mlの場合だ。1日1814ℓ。1ヶ月で14100円分の流出になる。現在のメーターの数字からこれほどまでは、流出してないと思うが、下手をすれば、5000円分くらいが流出してるかもしれない。
ヒロシは、もう夕方6時を過ぎてるにも関わらず、検針票に書いてある問い合わせ先に電話をかけた。さあ、ここからは、未知の世界だ。
警備会社の人が電話に出て、電話番号と住所を伝えた。設備の会社が非通知で電話をかけてくるということで、待つようにと言われた。役所の仕事なので、また来週とか言われるのかと思ったけど、水道だからか、らうちみたいにチビチビとじゃなく、大量に吹き出したりすることもあるだろうからそういう警備体系になってるのだろう。以前、町の下水道工事の時に、外にはわせてあった浄水パイプを草刈機で誤って切ってしまつて、大水になったことを思い出した。その時は、近所の設備会社のおじさんが、近所の大元の元栓を専用の道具を使って止めてくれて事なきをえたが、事によっては、近所中水浸しということもあるだろう。
それはさておき、間も無く、町の設備会社ですという方から電話が掛かってきた。
『水道代が倍になって』と説明したらそれほどの大事ではないらしいと判断したのか明日土曜日の11時頃、とりあえず見に来ますとのことだった。
見にきてもらっても直ぐにどうのこうの出来ない。漏水箇所は、家の中をあちこち調べたけど、せいぜい、ポタポタ程度で、可能性としては、トイレのタンクないのウォーターフローの水が流れてるくらいか。水道の設備屋さんが来たところでがどうするのか未知の世界だ。
翌日、設備屋さんが気軽な感じでやってきた。ピンポーンと玄関のチャイムを押した時にはすでに水道メーターの蓋を開けていたようである。長い棒がついた聴診器?
みたいなものをもって、漏水の音がしないか既に聞いてまわってるようだ。 AIにきた漏れやすい所、メーターの出口あたり、外水道のあたりも漏れはないらしい。あとは、土の中。
『じゃ、家の中に入っていいですかね?』
家の中を見てもらう。洗濯機の水道のところが僅かに濡れているのを指摘してくれたが、もう、メーターの漏水パイロットを見てるからこんなものではないと再び外へ出る。
『外にも中にも無ければ、最悪床下とか?』
「床下は、2年前に住宅点検屋さんが潜ったけど、何も言われませんでしたよ」
『じゃ、今は、管の中の水を抜いてガスを注入して、漏水箇所から漏れてきたガスをガス探知機で探すという機械がありますからそれを使うと高くなりますが、その機械の空き具合を見てまた来週の月曜日に連絡します』
そうか、ガスをぶち込むのか。以前は、ずっと地面を掘って行ってやっと見つけたとかやっていたらしいけど。そんな最新の未知のやり方があったんだ。
そりゃ、少しは高くついても毎月1万4000円も流出しているかもしれないということを考えれば、是非、使って一刻も早く見つけてほしい。帰り際、裏のエアコンの室外機2台の下に落ちた水を見て設備屋さんが両方を見比べていた。雨も降っていて確認しずらい。
『月曜日晴れそうだから朝から来て見ておきましょうかね』
「ありがとうございます。じゃ、ぼくがそれまでに、泥をあげて綺麗にしておきましようかね。ああ、その前に水道代、2ヶ月分いっぺんに来てるみたいですね?検針は、2ヶ月に1度なのに月々で引かれたたから不思議には思ってましたけど。」
『今年の10月からかな? そうなったみたいですよ』
それはそれでいつも不当たりを起こしそうなヒロシの口座には、厳しいことだが、ボ〜ッと生きてるヒロシ、そんな通知も見逃してるに違いない。まあ、しかし、2ヶ月分になって、4万2000円で驚いて、ヒロシは、この未知の世界に飛び込む勇気が出た。どちらが良いんだ? そうだ、漏水箇所が直って、水道代半額になって、2ヶ月分をいっぺんに取られれば1番いいのか?
室外機の下は、エアコンの使い過ぎでの除湿の水で、周りの泥まで濡らしていた。湿った泥を避けておかないと、何の水か分からなくなる。
午後から、雨がそぼ降る中、ヒロシは、裏の泥上げをしながら気づいた。一台の室外機は、除湿のホースは、真下にあるが、もう一台の風呂側の室外機の除湿用ホースは、別のところにある事に。
ヒロシは、月曜日の朝、設備屋さんへ連絡して、風呂側の室外機の下は、怪しいから見ておいてくださいと。
しかし、月曜日中待ったけど、連絡は来ず、見に来てくれたのかどうかも分からなかった。火曜日、こちらから連絡した。なかなか忙しくて、連絡出来なかったらしい。うちの他にも2ヶ月分になって、水道代高過ぎると気づいた方々がいたみたいだ。
工事日が決まった。週末の土曜日の午後だ。ヒロシは今週、仕事が終わったら寄り道せずに、明るいうちに家まで帰って、室外機の下の状態を確認した。
だんだん怪しく思えて来た。もう、ここを先ず掘ってもらったらいいのではないか、ガス探知機なんて使わなくていいのではないかとも。
工事日当日、最初に見に来てくれた担当の設備屋さんが一瞬、玄関に顔をだして、
『怪しいところば見つけとらすとでしょ? そここからはつっててみましょうかね?』と作業者2人を残してどこかへ行ってしまった。漏水してる家が多くあるのだろう。
間も無くコンクリートをはつるためのドリルの音が聞こえてくる。
「あっ、水道と止めんばですかね?」
『いいえ、まだよかです』
そうか、水止めたら水漏れてこないか。
◇ ◆
『水止めてよかですかね? 見つかりました』
「もう見つかったですか」
『早く見つかって良かったですね。見つからんやったら大変ですよ。風呂へ繋ぐチーズから出てます。老朽化ですね。土の中だからたぶん水道代減免も申請できると思います。』
「じゃ、ガスの機械使わなくて済んだという事でいいんですかね?」
『はい、あれ使ったら高いですから良かったですよ。強化塩ビパイプで繋ぎ直しておきます。埋め戻して、コンクリートもしておきますから。』
設備屋さんは、水の出る様子も見せてくれたがヒロシは、あんなに勢いよく出てたら1月5000円分くらい出てたんじゃないかと思った。管を繋ぎ直して、エア抜きをしてからメーターを見せてくれた。
「漏水パイロットが止まってる」ヒロシは感動していた。これが普通なのか。じゃ、今まで、何万円も払って来たのはなんだったんだ?
12月最初の検針票が玄関の隅から出てきた。1月請求分は4万4000円らしい。折しも、一昨日、この市の市長がお米券は配らない代わりに水道代2ヶ月無料にすると発表していた。これは天の助けか?
設備屋さんは、綺麗に、埋め戻して、コンクリートも元通りに、張っていてくれた。また、その間に事務のお姉さんが減免審査書を持ってきてくれた。工事の写真をつけて市役所へ申請してくれるらしい。
「設備屋さん、ありがとう。
未知の世界へ飛び込んだぼくらを救ってくれて。これで安心して年も越せそうだし、来年から新しい水道代の未知の世界が広がります。設備修理費は、いくらになるかは、まだ後で請求で未知です。
無料後の上下水道代がいくらになるかも未知です。
翌月曜日、会社が終わったヒロシは、急いで家へと着いて、早速水、道メーターの蓋を開けた。きっとほとんど、前回と変わらないメーター数と止まった漏水パイロットが見れると。
カタン
えっ? 回ってる。ルミが洗濯か食器あらいやつているのか?
慌てて家の中へ入ってルミに尋ねる。
「今水道使ってた?」
『そんなタイミングでは使ってないよ』
他にも使ってるところはない。
「もう一度メーター見てくる」
ヒロシは、メーターの蓋を再び開けて考える。老朽化してるところを直すと他のところへ一気に負担が掛かって、そこを壊してるパターンか?
薄暗い周りに耳をそばだてる。
ポタン、ポタン。
外の水道の蛇口が開けっぱなしだった。
市長さんごめんなさい。無料だからって
開けっぱなししたわけではありません。
今後は、漏水パイロットが回っていれば、直ぐに設備屋さんへ連絡して漏水を防ぎます。
終わり
漏水現場のが追う近況ノートに載せました。
水道漏水探しは未知未知 岩田へいきち @iwatahei
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