音楽との出会い
星之瞳
第1話
それは半世紀も前の事、私は中学の進学に悩んでいた。私立に行くかどうかという話ではない。私の近くに他の校区の中学校が移転してきたのだ。本来の校区の学校と、新しくできた学校。私の住んでいるところは特例でどちらか選べるというのだ。
迷った私は中二の兄に相談した。
運動音痴の私は部活も文系しかダメだったから。
「お前こっち来い。文系は吹奏楽部しかないが、お前はリコーダーとか得意だろう。合うと思うんだよね」
「吹奏楽部???」
「ああ、管楽器と、打楽器で演奏するんだよ。やってみるのもいいんじゃないか」
兄はそう言ったが、吹奏楽って何?未知の事に私の頭の中は・・・だった。
だが、他の人に聞いてみても本来の校区の学校に行くという。友達は多い方じゃなかったが、誰も顔見知りの人がいないのも嫌で私は本来の校区の学校に行くことにした。
入学式の日。体育館の前に整列した私は、まだ部活の事を決めかねていた。
「新入生入場」そのアナウンスが行われた時、突然ものすごい音楽が流れだした。
何の曲か解らない。でもその音楽は体育館いっぱいに広がった。私はその音楽に圧倒された。
それから式次第が進むとそのたびに後ろから音楽が流れてくる。そして、退場の時に、体育館の二階席に楽器を持った人たちが私たちの為に演奏する姿を見た。
後から兄に聞くとそれが吹奏楽部の演奏だった。
それを知った私は吹奏楽部への入部を決めた。
楽器を演奏するのは大変難しかったが、多くの部員と演奏するのは楽しかったし、コンクールなどでいろいろなところに行った。
結局私は高校でも吹奏楽を続けた。
学校を卒業してからは仕事が忙しく、結婚などで楽器を演奏する機会は無かった。
還暦を過ぎ、あの時の出会いに感謝しながら、私は今日も音楽を聴いている。
音楽との出会い 星之瞳 @tan1kuchan
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