【短編】自称勇者様、行きずりの少女と商隊を助ける
じょお
【短編】自称勇者様、行きずりの少女と商隊を助ける
カクヨムコン11用短編 その2
長編は既に完結まで書き終わってるので応募したので(前やってたコンテストには選考に引っ掛からなかったけど(苦笑))短編でも書いてみようかなと……ん〜、何がいいかなぁ?
……そのにっ!
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──自称勇者様、行きずりの少女と商隊を助ける──
今日も絶対悪の魔王たちが攻めて来る。辺境の村々は壊滅状態……いや、魔王軍の駆使する広範囲殲滅魔法でクレーターだらけ。所謂焼け野原も生温い状況となってて、村人たちも避難できた数は僅かしか居ない……
「くぅ……何の罪も無い人々を!」
そうは言っても、駆け付けた時には既に遅しな状況で、何とか救出した女性と子供たちが数人といった状況だったんだ。
今は少し離れた洞窟の中で休んで貰ってる。走って逃げ出したので疲れてるしね!(主に子供たちが)
「近所の村とか、避難できる場所はありますか?」
「それが……」
一番年上だろう女性(見た感じは20歳には届いてない……多分17歳くらい?)に聞いてみたけど、魔王軍の叫んでいた言葉から考えると、この辺一帯の村々は全て殲滅したとの事……
「そんな……」
「次は近郊の町を襲うと……私たちは一体どうしたら……」
情報は掴んでいても、それを報せる手段が無い……そう考えて泣き崩れたんだと思う。
(何て心が清らかな人なんだ……自分たちも酷い目に遭ってるというのに)
勇者……まだ、自称だが……は、この人たちの為、町の人たちの為に力の限りを尽くそうと誓った……
◆◇◆
「「「ぎゃあーー!?」」」
「「「魔王軍が攻めて来たぞぉーーっ!?」」」
「「「何で俺(私)たちが!?」」」
逃げ惑う人々の後ろから放たれる殲滅魔法。吹き飛ぶ住民と建物だったモノ……そして。
〈クックックッ……ココは浄化が済んだ……次に行くぞ〉
〈イエッサー……〉
不健康そうな肌色の魔族と思しき人物……そして付き従う従魔らしきイキモノ……だが、発する声は……知っている者が聞けば、「何故、マシンボイス?」……と突っ込む事だろう。だが、襲われている人々にはそんな事を考える暇もあたえられず、ただ死に行くばかりだった……僅かな数の、心が清き者を残して。
※運良く生を掴み、見過ごされただけとも……心が醜い者は、例え生き残っていてもジェノサイドされたという……
◆◇◆
「ここも、同じか……」
勇者(自称)は、町のおおよその位置を聞き、走って来た…。だが、そこには幾つものクレーターが残っているだけであり、生存者は絶望的に見えた。
「くそっ……何故、魔王軍はこんな事を!」
からん……
そして響く僅かな音に、振り返る。すると……
「か……」
「か……?」
「水を……持って……ません……か?」
ぐぅぅぅ……
そして響く腹の音に……一気に緊張感と緊迫感が削がれる自称勇者(苦笑)
「えっと……水ならこれで……」
と、背負い袋の外に引っ掛けたコップを取り外し、先ずは
「え……ま、ほう?」
「はい、生活魔法です……もういいかな? では、これを」
更に水を無から生み出して、コップに満たして差し出す。
「!……有り難う……御座います」
コップを受け取った彼女は、一気に煽って中の水を飲み干したのだった……
※気道に入って咳き込むまでがワンセットなのは言うまでもない(苦笑)
◆◇◆
あれから残り少ない黒パンも譲り……水に入れて柔らかくしながら食べてと注意をしてからだが……この町の状況を聞く自称勇者。
「そう、ですか……」
「はい……私以外の町の住民は恐らく……」
この町では、何故か殆どの住民は消されたようだ。殺す……という表現を使わないのは、文字通り消し飛ばす程の高威力の殲滅魔法を使っているからだが……
「……ひとつ、いいですか?」
「はい?」
「貴女は何故……助かったのでしょうか?」
「多分……ですけど」
彼女は奴隷階級であり、酷いミスをして屋敷の地下に仕置として閉じ込められていたそうだ……そして、水も食べ物も与えられずに数日間放置されていたらしい……そして町が崩壊する事件が起こり、その衝撃で目を覚ましたと……
「ナルホド……酷い主人も居たものですね」
だが、当の主人はもう……塵も残さずに消え去った事だろう。町がこのような有様なのだ。生き残っているとは考え難い……
「私はこれから……どうしたら」
座ったまま俯く彼女。見た感じ、遠くまで移動して救助を……というのも難しく感じられる。だが、一緒に行動というのも厳しいだろう……
「仕方無い……取り敢えず、一緒に来ませんか?」
「宜しいの……ですか?」
「はい……と言っても、以前救助した方たちの元に送り届けるだけですが」
暫く考えていた彼女は、意を決したのか
「そ、それで構いません!」
という訳で暫くの間、自称勇者と奴隷少女は行動を共にするのだった。
◆◇◆
「くっ……隠れていてくれ!」
「はい!」
後方の岩陰に隠れて貰い、現れた魔王軍の遊撃部隊と交戦を開始する自称勇者。
「ダァァッ!」
ダッシュで駆け寄り、手にした鋼鉄の剣で切り裂いていく!
グアアッ〜!?
ブギュルッ!
次々と倒れ伏していく魔王軍の雑魚敵たち……交戦開始してから、僅か5分で動くものは居なくなっていた……
「ハァハァ……。もう、大丈夫だ!」
「……凄い。流石勇者様です」
おずおずと岩陰から出てくる少女。だが、魔物の血で濡れた勇者を見て、身体が震え始める。
「何が……あ! スマナイ……こんな血まみれじゃ……怖いよね」
……と、自らの身体にクリーンを掛けて綺麗にした。これで、血も汚れも嫌な臭いも落ちたのだが……少女の震えは止まらなかった。
◆◇◆
「ありがとうございます……」
「いや……」
焚き火を熾し、椅子代わりに岩を持ってきて置き、少女を座らせる。自分も座り、焚き火にかけている鍋からスープを掬い、椀に注ぐ。
「さ、これを……」
「ありがとうございます……」
匙を入れるのを忘れていたので慌てて入れる。
「ふぅ……」
自分用の匙しか無いのに気付き、枝からナイフで削り出し、軽く火で炙って消毒してから手拭いで拭く。
※椀は2つ有ったので問題は無かった
「頂きます……」
小声で呟き、スープを啜る。少女も遅れて啜りだし、無言で食事を続ける……
◆◇◆
翌朝、自称勇者と少女は野営地で朝食を終え……出発の支度をしてから歩き出す。
「帰る故郷とかは……」
「ありません。既に魔王軍に依って……」
「そ、そう……」
重い空気が場を支配する……
暫く歩いて進んだ先で、鼻をクンクンと鳴らす自称勇者。
「血の匂い……不味いな」
「隠れる場所は……うぅ」
周囲を見回すが、隠れられそうな物陰は無かった。
「仕方無い……」
ババッ!……と、印を組み、
「穴よ!」
……と一言。足元に穴がポッカリと開く。
「此処に隠れていてくれ」
「え?……あ、はい!」
これは魔術でも魔法でもない。昔、見知らぬ老人から学なんだ……確か「ニンジュツ」と呼ばれる未知の技術……と言っていたか? 消費する魔力……老人は「霊力」とか言ってたかな? が少なくて済むぞ!……と言ってたと思う。発動も早いし確かに消費魔力も少ないけど、印をいちいち結ぶのが面倒なんだよね……
◆◇◆
〈クックックッ……
〈ラ・ジャー〉
ガッシャンガッシャンと重い足音を出して走る下僕たちと命令だけ出して足を留めている魔族らしき存在。
「止めろ!」
ドガッシャーーン!
剣を抜き、背中から盾を取り出し、手近な暴れている魔物を盾で弾き飛ばしてから蹴り飛ばす!
「おおお!」
「勇者様! お助けを!」
叫ぶ襲われていた者たちをチラ見して軽く頷き、倒れた魔物にトドメを刺す。
「俺が憎いかっ!? 憎ければ……掛かって来やがれっ!」
タウントの魔法を乗せた叫びで挑発する。タンク役の
◆◇◆
それからは地獄だった……周囲の魔族の下僕の魔物が自分へ齧り付いたり殴る蹴ろうと
「うらぁっ!」
盾で、剣で、弾き飛ばす。斬る。身体ごと回転させて回転斬りを放つ。
(僅かな隙間が出来たっ!)
剣を脇に挟んでから素早く印を組み、叫ぶ!
「火よ! 風よ!
身体の周りに業火が燃え盛り、疾風が湧き起こって身体を包む。魔物たちは最初でこそ驚いていたが、自分の身体を火炎の竜巻が包んだ事で自滅したと思い、嘲笑い始める。
〈〈〈ギャギャギャ!〉〉〉
〈ふむ……自滅したか。勇者という割には、ツマラン最期だな……〉
その言葉を待っていたかのように、最後の呪が成される。
ビカビカビカッ!
ガラガラガッシャーーンッ!
炎の竜巻が稲妻を帯び、魔力の大きい魔物と魔族へと飛び火し、稲妻が放たれる!
〈なっ……ギャアアアッ!?〉
〈〈〈ギャアアアッ!〉〉〉
一瞬の事だった……この地で暴れていた魔族と魔物たちは、勇者(自称)のタウントで集められていた事で一掃されて、全滅した……
「ふぅ、ふぅ……何とかなった、かな?」
流石に三重の呪は重かったらしく、息を荒げていた。
「……流石にもう余裕は無いな……あの、スイマセンが……」
襲われていた人に声を掛けると、代表らしい人物が現れ、
「助かったよ……ええと、ひょっとして、訳あり、かな?」
「……ま、そんな所です」
「そうか……悪いな。うちの者が勇者扱いして」
「えと……」
バツが悪そうに、実は勇者扱いしてして貰った事が嬉しくて否定しなかった……などと言える訳もなく照れていると、
「ふむ……では少ないが貰ってくれ。礼だ……路銀は多い方がいいだろう?」
……と、ウインクする中年男性。どうやら馬車を何両か率いる
「実は先程の襲撃で、護衛の者が怪我を負ってね……次の町まで護衛を頼まれてくれれば助かるんだがね?」
先程、騒ぎが収まった所で出て来た少女を見ながらニヤケ顔で話す代表オヤジ(笑)
「いや……彼女とは成り行きで一緒になっただけで、その……」
言葉を濁していると、
「ゆ、勇者様? 助けを求めているのに断るんですか?」
……と、少女から情け容赦のない言葉の刃が突き刺さる!
「う……そう、ですね……彼女にマトモな衣類と靴、そして温かい食事と寝床を保証してくれるなら……吝かではないですよ?」
代表オヤジはウムウムと頷き、
「ユウシャサマは要らないので?」
「何をですか?」
「温かい食事と寝床ですよ」
「……護衛には最低限の物で構いませんよ」
「そう、ですか……」
代表オヤジには、無理をしているように見えたが、こちらから無理強いをするのも……と思い、紙とペンを仲間に出すように言い、簡易的ではあるが契約書を作成した。
「契約書です……字は読めますか?」
「専門用語以外なら一通りは……」
「名前は書けますか?」
無言で頷き、紙の文字を読む彼……
「ペンを」
代表オヤジはペンにインクを付けて渡す。彼はサラサラとサインをして契約書とペンを返す。
「確かに……では、次の町までの護衛、宜しくお願いします、ね?」
こうして、彼は……行きずりの少女と商隊を護衛しながら、短い間だが旅を共にする事になったのだった。
(早く王都に行きたいのに、どうしてこうなった……)
……と、心の中の葛藤を声に出す事も出来ず……(苦笑)
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後から色々と絡んだりするのは世の常。良い事をしとくと後で助かるかもよ?……自称勇者くん!(笑)
【短編】自称勇者様、行きずりの少女と商隊を助ける じょお @Joe-yunai
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