概要
戦国を生き抜いた禅僧と剣客
正保2年(1646年)、ひとりの僧侶が「夢」と一字書き残して死んだ。僧侶の名は沢庵。沢庵の友、柳生宗矩もまた翌年、死期を迎えようとしていた。宗矩は沢庵の書き残した一字「夢」に思いを致しながら、死にあたって、弟子の鍋島元茂に柳生の剣の秘伝書を与えようとしていた。秘伝書には花押をしなければならない。宗矩は震える手で筆を持った。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!最期の一字――死を前にした人間が何を思い、何を残そうとするのか 🌙📖
『夢一字/乱れ花押』は、静かでありながら、とても濃密な余韻を残してくる歴史短編でした 🌙🖌️
友であり禅僧である沢庵が、最期にただ一字「夢」とだけ書き残して逝ったこと。その意味を、柳生宗矩が老いと死を意識しながら、静かに、しかし切実に噛みしめていく過程がとても印象的でした 🏯🌫️
沢庵の「夢」という一字と、宗矩の乱れた花押——二つの “書” が対比されることで、人は何を残せるのか、何を残したいと願うのかという問いが、読者の側にも静かに投げかけられているようです 🌾🖤
短いながらも、読み終えたあとにふと目を閉じて考えたくなる、そんな “間” を残してくれる作品だと感じました 🍶🌙 - ★★★ Excellent!!!剣士としての生涯をかけた花押(かおう)と「夢」
突然ですが、人は死に際して、何を思うのでしょうか。
それまでの人生が走馬灯のように……とは使い古された表現ですが、それまで歩んできた人生を振り返るのは多分自然なこと。そして回想したとき、おそらく人は考えるはずです。
自分の人生って、何だったのか? と。
本作の主人公は、江戸時代初期の剣豪・柳生宗矩。己の死期が近いことを感じつつある中、友人である沢庵宗彭の訃報に接します。気になったのは、「何も残さぬ」と言っていた沢庵が、死に際して「夢」の一字を書き残して逝ったということ。
親友が「夢」の文字に託した意味は何か? その問いは、宗矩自身の人生を見つめ直すきっかけになります。
そしてつ…続きを読む