夏時
原川戸塚
第1話
「ようやっと...ここまで来た...」
休憩がてら荷物をすべて下ろし道端に座ると地図を広げる
「近くに神社はあるのかね~」
広げた地図を指でなぞりながら神社を探していると。
カ~カ~ というようなカラスの鳴き声が聞こえてきた。
「うん?」
とおもむろにその鳴き声のするほう、直上を見上げると。
ぼとっ...といやなものが落ちてきた。
「ん...」
声にできない悲鳴、納得できない現実。
蒸し暑い真夏日、徒歩で関西から東北までよくこれたと思う。
この地図も、長い旅に携帯が使えないだろうと母が持たせてくれた地図だ。
その地図が今、カラスのクソによってお亡くなりになった。
「あんっのクソカラス!待たんかいボケ~!」
俺は関西弁を放ちながら、カラスをとっちめるために追いかけていった。
「がぁ...がぁ...駄目だ、水分補給...って水筒にかばんは!?」
どこかに消えていった荷物たち、しかしそれらの心配をしている暇などなかった。
(とりあえず水をどこかにないのか!)
あたりを見回すこともなく、俺は神社の前にいることが分かった。
(この際お清めの水でもいい!)
と俺は神社の手水舎に向かい水を飲んだ。
「ぷっは!生き返る!」
口元を腕で拭う
「こら!汚いですよ!そこはあくまでお清めするための場所です!飲むのはNGです!」
誰だろうと振り返ると巫女さんだろうか、妙に赤と白がにじんで見える。顔もはっきりとしない。
「大丈夫ですか!?ふらふらとして!こっちに来てください!」
「はひ...」
俺は巫女さんの肩を借りて引きずられながら社務所へと向かった。
目が覚めると涼しく妙に頭の位置が高く、そして目前にかわいい少女の顔があった。
「目が覚めましたか...まったく、一時は救急車案件かと思いましたよ!」
「すまない...とおもっている...」
「次からは持参した水筒や境内の自動販売機でお飲み物を買ってくださいね!わかりましたか!」
「はい、わかりました...っと荷物!?すみません巫女さんまた後で!」
俺は巫女さんにお礼を言う前に置いてきた荷物が頭の片隅にチラ見えし慌てて取りに行った。
社務所の扉をガラガラと開くとザーっと雨が降っていた。
「あぁ...」
「今の時期だと天候が変わりやすいんですよねこの地域、傘持って行ってください。お忘れ物でしょう?」
「そうなんですか!?お言葉に甘えて傘お借りします!」
俺は傘を差して走り出した、転ぶことも考えずに。
カラスの糞を落とされた場所につく頃には天候が急激に変わり晴天となった。
「あぁもうびちょびちょだよ!どうしよう...」
濡れたカバンとかに服がふれないように持ち上げると、さっきと打って変わって素晴らしい景色が目の前に広がる
黄色一面の景色、しかしいくら東北だろうと、この花が咲くには遅すぎる。
「夏に菜の花が咲く地域なのか...」
「普通ひまわりだと思うだろう、私も同感だ」
「気配なく、いや今になってとてつもなく巨大な気配がいきなり現れたな」
「そう評価してくださるならありがたい」
この男、身長はぎりぎり俺のほうがデカいと思うが俺と違う点は横にもデカいという点だ。すごい存在感だ、おそらく記念写真を撮るときは後ろの殿堂入りだろう。
「この荷物、誰かにとられないように見といたぞ、次からは気を付けることだ。」
「ありがとう」
「礼には及ばない、アドバイスだがここら辺は犯罪者は少ないが野生動物が多い、気に入ったら持っていかれるぞ」
「あんた名前は?」
「名乗るほどの者でもないが旅団長とでも名乗っておこう」
「ちょっとうしお!こんなところで何してるの!」
少女の声が彼の作り出したムードを台無しにした。
「あぁ台無しだ、またの名を
「そうか、その時は遠慮なく頼らせてもらうよ!」
俺は彼とは反対方向、神社のほうへと歩き出す。
神社につくと巫女さんが鳥居の下で待っていた。
「お荷物はご無事でしたか?」
「濡れてはいますが全部残っていました!地元の人が見張っていてくれたおかげで」
「それはよかったです!あとなにか御用があるようでしたけどなんですか?」
用とは
「
巫女さんはムッとして口に手を当て考える
「聞き覚えはあります...がどういったものかは...」
その言葉を聞いて俺は飛び上がった。
「手がかりだぁあああああ!やっとだ!休学になったあの日から1か月近く歩いてやっと手がかりだぁあああああ!!!!」
「すみません、聞き覚えがあるだけで...お力添えできそうには...」
「いいえ、その言葉だけでもいいのです、俺は今まで手がかりゼロでここまでやってきたのですから、無より有をつかみ取れただけ価値があるのです!」
「そんなにですか...」
巫女さんは一息おいてこういう
「あなたのお手伝いをさせてください!」
夏時 原川戸塚 @SaotomeSousKukyoku
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