乾物(かんぶつ)女子

なかむら恵美

第1話

月に1,2回、娘が来る。

車で10分、15分。足は決まって、レンタカーだ。

ウチで与太話で適当に盛り上がり、一応がついた頃

「じゃあ、そろそろ」

適当にお出掛けをするのだ。

悪までも近場だが、温泉スパやら、大型ショッピングモールやら。

映画鑑賞の時もあれば、お泊り旅行。

1泊2日の温泉へ、ひょいと足を運んだりもする。


息子も確かに可愛いが、ここまでとはゆくまい。

仕事自体が多忙であるし、休日は爆睡に充てている。

娘より近い所に住んでいるのに、この差って何なんだ。

だもの、モテない。つき合おうとする女子(おなご)さんなど、いないわな。


娘に戻す。

「じゃっ、又」の前に、スーパーで買い物。

娘の所より、ここいらは全て30円安い店だらけらしい。

何軒がある内の1軒。

御用達店でお買い物をするのはいいとして、殆ど乾物(かんぶつ)。

乾き物の類いしか、娘は買わない。買い物籠に入れないのだ。

カップ麺を山盛りに、「味噌汁の具」と称した、乾燥野菜に小さな高野豆腐が

入った袋。

食後の果物に買うのは、半生タイプのドライフルーツ。

ご飯もパックのを嬉々として手に取る。唯一、例外なのは蒸し豆。

子供の時から大好きだったが、長じるに従い、増々フェチ。

カルトな沼ハマりになり、一度に5袋も購入する。


「料理はしないの?」

余りにもの乾き物のオンリー。

乾物だらけの買い物に、半ば、感心しつつ聞いてみる。

「しない訳じゃないけども」

チョイとばかりに真面目になって、娘が言う。

「悪くなるじゃん、ナマモノだと。気分転換にもなるし、嫌いじゃないから

テキトーにするにはする。けど」

レジに並ぶ。

「こっちの方が、全然ラク。長期保存も可能だし、カット物を使えば時間節約&

洗い物も少なくて済むじゃん。ウチ、食洗器、ないし」

我が家にはある。

「まっ、そうねぇ。乳液ぐらいかな。お買い物で、べたっとしたのを買うって」

<乾物女子>の誕生だ。

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乾物(かんぶつ)女子 なかむら恵美 @003025

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