第六話・イバラ童子の家に妖湖が同棲⁉異妖『エコ娘』登場
異妖『バックパッカード』の歪みを鎮めた妖湖は、イバラ童子と待ち合わせをしていた、アパートの前にやって来た。
「よっ、早かったな」
私服姿のイバラに、妖湖はモロに不満そうな表情をする。
「自分だけ普通の格好ってズルくない……」
「別に、ついて来いよオレの母親を紹介してやる」
妖湖がイバラの後に続いて、アパートの階段を上がる。
イバラがある部屋のドアを開けて言った。
「かあちゃん、恋人の妖湖を連れてきた」
イバラの言葉にキレる妖湖。
「誰が恋人よ!」
「仕方がないだろう、お袋を説得して同居させるには、コレしか方法が無かったんだから……オレと妖湖は、母親と一緒の同棲な」
「●@仝♂♀‰❖?……はぁぁぁぁぁぁ⁉」
妖湖が何か言おうとする前に、鬼の母親が奥から出てきた。
「あなたが、妖湖さん……息子から聞いています、住む所が無いんですってね……どうぞ、どうぞ」
妖湖は仕方なく、イバラの家に入った。
♡♡♡♡♡♡
妖湖が通されたのは、イバラの部屋がカーテンで半分に仕切られた部屋だった。
「ここから、コッチがオレの部屋……カーテンから向こうが妖湖の部屋な」
「ちょっと待てぇ!」
さすがの妖湖も、二分した部屋に男性と一緒に生活するコトに抵抗を覚えた。
「これじゃあ、下手なラブコメフラグじゃないか! あたしが好きなのは異世界ラノベで……ラブコメじゃない!」
「それが、どうした」
イバラは、妖湖を無視して上半身裸になって室内着に着替える。
悲鳴を発する妖湖。
「ぎゃあぁぁぁ!」
「いちいち、大声出すな……異妖界では、男女が一つの部屋を共用するなんて、普通のコトだ……そんなに、オレと一緒に暮らすのが嫌なら、異妖界のツリーハウスで生活していてもいいぞ……その代わり、ツリーハウスから人間界に来るとなると、歪みが大きくなって……大変なコトに」
「わ、わかった一緒に住む……なんでこんなコトに」
その時、妖湖の背中からゾッゾッゾッと産毛が逆立って妖湖はゾワッとした。
「ゾワッときた!」
「歪みに取り込まれた異妖が近くにいる……行くぞ妖湖」
イバラの姿が、半裸のイバラ童子の姿に変わった。
◇◇◇◇◇◇
歪み反応がある異妖が現れたのは、カップルが多く集まる公園だった。
焼きソバのキッチンカーが出ている公園のベンチに座っているカップルに、なにやらネコ耳と尻尾を生やした女の子が、厳しい口調で言っているのが見えた。
「一回使っただけで、割り箸を捨てたらダメにゃ……洗えば何度でも使えるにゃ、エコにゃ……焼きソバのプラスチック容器も、持ち帰って洗って使うにゃ」
イバラ童子がネコ耳の異妖を見て言った。
「異妖『エコ娘』……倹約とか節約は悪いコトじゃないんだが……歪みに取り込まれたエコ娘は、度を超えてドケチになっている」
エコ娘のカップルに向けたエコ説教は続く。
「パンツもひっくり返せば、何回も使えるにゃ……現にあたしのパンツは、裏表前後を使い回して、何巡目に突入しているにゃ……かなり臭うにゃ」
それを聞いたイバラ童子が、エコ娘にツッコミを入れる。
「パンツくらい、穿き替えろ! 不衛生で健康に悪い!」
エコ娘は、削って細くなった割り箸を取り出す。
「削ればまだ使えるにゃ……砂場の砂で頭を洗えば、シャンプーの節約にもなるにゃ……水は公園の水道水を使うにゃ……鼻をかんだティシュも洗って、天日干しにすれば」
「エコ娘、目を覚ませ! 歪みに呑み込まれている今のおまえは、ただのドケチだ! 人間界にドケチ精神を広めるな、妖湖頼む」
妖湖がブレスレットの球体を回すと、球体の色が青に変わった。
「これは?」
「武器が出るぞ、妖湖の武器は異妖界の発明家『異妖
空中に猫じゃらしのような形をした、道具が現れた。
「猫じゃらし? これで、どうすれば?」
「とりあえず、エコ娘に向けて振ってみたらどうだ」
妖湖が猫じゃらしを振ると、エコ娘の体から揺れる黒い霧のようなモノが出てきて、猫じゃらしに集まる。
ワタアメを作る要領で、回すと猫じゃらしの歪みが大きな塊になった。
惚けた表情でエコ娘が言った。
「にゃぁぁぁ……整ったにゃぁぁぁ」
二メートルほどの大きさまで大きくなった、歪み玉を妖湖は猫じゃらしを振って空に向かって飛ばす。
「あたしを好きになっちゃいな!、あぁ、また口から勝手に変なセリフが……ウザッ」
歪み玉は空中で、光りの粒子になって消えた。
歪みを祓われて、鎮められたエコ娘が言った。
「助かったにゃ、自分ではどうするコトもできなかったにゃ……これお礼にゃ、削りに削って爪楊枝サイズまで小さくなった割り箸にゃ」
一本づつ、夫婦箸ならぬ、夫婦爪楊枝を受け取った妖湖とイバラは、どうしたらいいのか対応に困った。
転生妖怪令嬢「これって転生や令嬢じゃなくてもよくねぇ」 楠本恵士 @67853-_-
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