エルフを探そう!~異世界転生したので本物のエルフを見に行こうと思う~

みのせ

第1話

――みんなは、「エルフ」と聞いた時に何を思い浮かべるだろうか?

とんがり耳?

見目麗しい?

弓使い?

オーク?


この物語は、異世界転生を果たしたオレが、エルフのエッチなお姉さんを探す旅に出る冒険譚である。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

とある令和の7月7日。

地元の商店街の七夕祭りで短冊を貰ったオレは、「異世界転生」と書いて笹にぶら下げた。

織姫か彦星が願いを聞き届けてくれたのか、帰り道、隕石の直撃を受けて死んだオレは異世界転生を果たしていた。


オレの知っているゲームや小説の世界ではない。ごく普通の剣と魔法のファンタジー世界だった。


王都の靴屋の息子として生まれ変わったオレだが、なんやかんやあって16歳。かねてよりの夢であった「トールキン・エルフ」を探す旅に出た。


この世界で文明を築いているのは残念ながら人間だけ。

エルフどころか、ドワーフやホビットもいやしない。


あ、ちなみにトールキン・エルフってのは「ロード・オブ・ザ・リング」の作者、J.R.R.トールキン氏が作中で描いた存在。

痩身痩躯、半不老不死、弓の扱いにたけ、森に住んでる美しいあれ。それをオレが勝手にそう呼んでるだけ。


それ以外のエルフってのは、ヨーロッパのどっかの伝承にある、イタズラ好きの妖精……一言で表すなら汚ねぇティンカーベ〇だ。


なんでオレがこんなにもエルフを求めてるかと言うと――

あれは前世でまだ小学生だったころ、兄貴の部屋で読んだエルフが登場する聖典(薄い本)が原因である。

あの時の衝撃が今でも忘れられず、転生しても思いが消えなかったのだ。


オレは――エルフのエッチなお姉さんを見つけるのだ!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

オレは馬車に揺られて、大陸最南端の村を目指している。

12歳の頃から、情報収集と路銀集めで冒険者として活動していたオレは、いくつかエルフの生息地に目星を付けていた。

今向かっているのは、その中でも一番可能性が高いと思っている、大陸南部に広がる大森林だ。


ここに来るまで長かった……。

家を出てからすでに1年は経過している。

道中いろいろなことがあったなぁ……。

詳しいことは割愛するが、

スタンピードで魔物を蹴散らし、

リッチに支配された街を解放し、

囚われの姫を助け、

地を這う片翼のドラゴンを討伐したり……。


お礼にと貰った装備で、オレもだいぶ強くなった。

家を出たときは、皮の装備に鉄の剣だけだったけど、

今は王国に伝わりし宝剣を腰に佩き、金と銀で装飾された魔法の鎧一式を着け、ブレスから身を守る青いマントに身を包んでいる。

オマケに大容量のマジックバッグなど各種マジックアイテムを装備し、もはや歩く宝物殿だ。


物思いに耽っていると馬車がゆっくりと止まり、御者の男が話しかけてくる。

「はいよ、騎士様。着きましたでぇ、最果ての村、エルダー・ウッドでさ」

「ああ、ありがとう。これは礼だ、受け取ってくれ」

そう言うとオレは御者の男に銀貨を3枚渡した。


「こんなに頂けるんでぇ!へへへ……また、頼んます」

そう言うと御者は馬車をUターンさせ、来た道を引き返して行った。


村に入ると村人たちが、「なんだ?なんだ?」と集まって来た。


村長らしき年老いた白髪の男が代表として話しかけてくる。

「これはこれは騎士様、このような辺鄙な村にようこそおいで下さいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「探し物があってな、少し話を聞かせて欲しいのと、数日宿を貸してもらえないだろうか?

それと、私は騎士ではない。ただの冒険者だからそんなに畏まらなくて大丈夫だ」

さっきの御者の男もそうだが、姫様を助けたときに貰った鎧を着てから、各地で騎士と誤解されるようになってしまった。

まあ、見るからにすごそうだもんな、この鎧。


「ほう、冒険者でしたか!それでは空き家がありますので、滞在される間はその家をご自由にお使いください。代わりと言っては何ですが、是非あなた様の冒険譚を村の者にお聞かせ願えますかな?その鎧を見るに、さぞや名のある冒険者なのでしょう……!」

そう言うと村長はキラキラした目でオレのことを見つめてきた。

村長だけではない、村の入り口付近に集まった女子供や年寄りたちは皆キラキラした目をして見つめてくる。


照れるぜ。


こんな辺鄙な村だと娯楽に飢えてんだろうな。

ちなみに若い男衆は、森に伐採と狩りに行ってるそうだ。


夜――

オレは村の集会場で、飯をご馳走になりながらこれまでの冒険を語った。

姫を救って剣と鎧をもらった話や、ドラゴンを狩った時の話が特に人気だった。

酒も進み、夜も更けたころ、借りた空き家に戻ったのだが、村娘3人に夜這いを仕掛けられた。

何があったかは割愛するが、そう言えば日本でも昔は旅人に娘をあてがって、村の血が濃くなりすぎるのを防いでたって聞いたことがあったな、などとどうでも良いことを考えつつ朝を迎えた。


「昨夜はお楽しみでしたね」

昼過ぎまで寝ていたオレに向かって村長がお約束のセリフを言ってくれた。


オレは村長に当初の目的であるエルフについて聞いてみた。

「村長、オレはエルフというものを探して旅をしているんだが、聞き覚えはないか?」

「エルフ……ですか。いえ、聞いたことありませんな」

「地方によって呼び方が違う可能性もあるんだが、こういう特徴の奴を見なかったか?」

オレはエルフの特徴を村長に伝えた。

・森に棲んでる

・痩身痩躯

・耳がとんがってる

・なんか古代語とか話しそう

・弓を使う

・たぶん排他的


「なるほど……もしかしたら……」

「っ!?何か心当たりがあるのか⁉︎」

「私が直接見たわけではありませんが、半年ほど前に村の狩人が森で矢を射かけられまして……その時逃げ帰ってきた狩人が見たと言う犯人の特徴と一致しておりますな」

村長が顎髭を撫でながら思い出すように話す。


「ただ……その狩人以外に見たものはおりませんし、その狩人もその時一度見たきりなので……お探しのエルフかどうかまでは……」

「いや、十分だ。森のどの辺りかわかるか?」

「村の脇の小川を3日ほど伝っていくと、森の中の湖に出ます。その辺りで見たという話です」


ふふふ、これは期待大だな。

警告として弓を放ち追い払うまではするが、それ以上に干渉してこない。

まさにエルフらしさにあふれている。


オレは村長に礼を告げると、森の湖へ向かって駆けだした。



そして、3日が過ぎ、4日が過ぎた――

湖にはまだ着かない。

森の木々や地形が邪魔をして真っすぐ歩けず、遠回りや回り道で余計な時間を喰ってしまった。

川からも離れてしまいどっちへ向かったものかと迷っていると……


ヒュッン!ヒュヒュッン!


突然、森の奥からいくつもの矢が飛んできた。


矢避けの魔法が掛かった指輪をしてるお陰で矢は逸れた位置に刺さる。


「エルフか!?」


射線の先を見るとそこには――


とんがり耳で弓を構え


森の木々に身を隠すためだろうか、木の皮で作ったような服を纏い


鷲鼻で痩身矮躯の――



「弓持ったゴブリンじゃねぇかぁ!!!!!」



――ゴブリンがいた。


確かに、特徴の大部分は一致してるな。

違いは矮躯ってぐらいか?

警告なしで矢玉を浴びせてくるところなんかは排他的だし。


そんな奴らが弓を構えてこちらの様子を窺っている。

10匹ぐらいか?いや、緑の体色に木の皮の服のせいで景色に溶け込んでいる。

数はもっといそうだ。


「人違い……いや、エルフ違いか……ッ!?」


ドヒュンッ!


何だエルフじゃないのかと落胆したところに、強烈な一矢が飛んできた。

矢避けの魔法を貫いて真っすぐ飛んでくる矢をギリギリのところで身を翻して躱す。


矢の出どころに視線を向ける。


一本の木。

その樹上に……何かいる。

目を凝らしてよく見ると……


痩身痩躯。(180㎝はあるだろうか?)


木の中に身を隠すためだろう、葉っぱをあしらった服を身に着け。


ゴブリン共の短弓よりずっと大きな弓を持ち。


樹上からこちらを見下すような目で睨みつけてくるのは――



「背の高いゴブリンじゃねぇかぁ!!!!!」



――ゴブリンだった。



Нападай!ナパダーイ


あ、なんかよく分からん古代語みたいな号令を出した。

森に棲んでて、痩身痩躯、とんがり耳に、弓を使う。

たぶん排他的で、古代語っぽい叫び声……


うん……100点だよ……あんた……


――


――


――


気が付くとオレは血の海の上に立っていた。

周りには死体の山、山、山……

手に持った宝剣は血にまみれている。


「……ここは、どこだ?」


木や石で作った粗末な家。

柵で囲ったアレは……畑か?


ショックのあまり心神喪失し、ゴブリンの集落を襲撃したのだろうか?


……し、……もし


なんか幻聴まで聞こえて来た。


「……もしもし、そこのお方?聞こえますか?」

あれ?幻聴じゃない?


声のする方へ辿って行くと、周りの小屋より少しだけ大きくて立派な家があった。


中を覗いてみる。


すると――


粗末な木の檻に手のひらサイズの全裸の女の子が入れられていた。


「ありがとうございます!助かりました!もう少しでゴブリンに食べられるところでした!」

小女はオレを見ると嬉しそうにお礼を言ってきた。

よく見ると背中に透明な翅が2対4枚生えており、お辞儀に合わせてパタパタと動いている。


「そっちかぁ……違うんだよなぁ、オレが求めてる方は……」

これは……アレか?汚ねぇティンカー〇ルの方か?


「?」

「……ああ、すまん。こっちの話だ。ところで君は何者?」

オレの呟きに可愛らしく小首をかしげる、ティン〇ーベル。

檻を壊して外に出してあげながら聞いてみる。

……まだ確定したわけじゃない。


「私はエ「あ”あ”~!?」っ!?なっ何ですか!?」

突然叫びだしたオレにビクッとなり固まるティ〇カーベル。


落ち着け……クールになれ……まだ決まってない……。


「すまない……心の準備が出来てなかった。すぅ~ はぁ~……よし、続けて」


一度深呼吸をし、覚悟を決める。

辺りに充満する血の匂いがオレをクールにしてくれる。


「? 私はエレン。水の妖精です」


しゃっ!おらぁ!きたぁっ!

水の妖精エルフってルビ振ってないよな?よな?

OK、まだ舞える。まだ舞える。


冷静になったオレは、改めてテ〇ンカーベルことエレンを観察する。

人間で言うと12~13歳ぐらいの美少女って感じの見た目だ。

サイズは15㎝ぐらい。

青髪のショートボブでクリクリっとした黒いお目目が可愛らしい。

新雪のような真っ白な肌に透明の翅が2対4枚。

羽ばたくたびに金の鱗粉が辺りに舞う。


「ところで、勇者様は何しにこんなところまで来られたのですか?もしかして……私を助けに?」

そう言うとエレンは両手で赤くなった頬を押さえ、キャーキャー言いながら体をくねらせる。


勇者ってのはオレのことか?

まあ、喰われそうなところを助けた立派な騎士風の装備を身に着けた男は勇者か。


「エルフを探してるんだがエレンは知らないか?」

オレはエルフの特徴をエレンに伝える。


「それって……ゴブリンのことじゃ……」

「いや、ゴブリンじゃない。アレは絶対に違う。見た目はもっとこう……キレイな感じ。翅のないエレンが人間サイズになった感じかな」

そう言うとエレンは再び、両手で赤くなった頬を押さえ、キャーキャー言いながら体をくねらせた。


「キャー!私のことキレイって!……っと、ごめんなさい。ずっと湖の近くに棲んでたから、エルフ?って言うのは見たことないです」

そうか、知らないか。

……まあ、森は広い。オレの旅はまだ始まったばかりだ。

前向きに行こう!


「オレはエルフを探す旅を続けるから、エレンは湖に帰ると良い。途中までなら送っていくよ」

オレはその辺にあった布?皮?で剣の血を拭き取り、旅の支度を始める。


「待ってください!私も勇者様の旅について行きます!」

エレンは宙を舞うとオレの目の前で両手を広げて静止の構えを取った。


「いや、しかし……」

「命を救っていただいたご恩をお返ししないといけませんし、それに……ポッ」

そう言うとエレンは頬を染め、オレの肩に乗って来た。


妙なのに好かれてしまったな……。

オレが求めてるのはエルフのエッチなお姉さんであって、

フェアリー幼女じゃないんだが……。


まあいいか。

ずっと一人で森を彷徨うのは辛いし、話し相手ができるのは良いことだ。


オレは妖精を肩に乗せ、森の奥へと向かって歩き出す。

あの日見た聖典(薄い本)のエルフを見つけるまでオレの旅は終わらない。


「あ!ところで、勇者様のお名前は何て言うんですか?」

「オレか?オレの名前は――」


――完――

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エルフを探そう!~異世界転生したので本物のエルフを見に行こうと思う~ みのせ @miminose

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