夢
@fish_f
夢
夢はなんですか?と聞かれるといつも迷ってしまう人生だった。
夢だとかいう輝いたものは私には関係のないものだといつも思っていた。夢を聞かれていてもよく聞く平凡な将来を答えていた。その中には自分というものはないのだが、周りの人はそれを信じ応援してるだとか絶対になれるだとかそういうことを仰る。
死にそうな女がいた。何故その女が死にそうかどうかなど私には分からないが死にますと言ったので死ぬのだろう。
女の顔は色白で目の下には黒い隈があり肌の色とは対極的でどこか浮いているように見えた。
毛虫のようなまつ毛の中に真っ黒い瞳があり自分が写っている。私はその瞳を閉じたくて下瞼を引っ張り閉じさせようとした。下瞼には小さな黒い点がありそこから露のような透明なものが溢れていき私が閉じさせなくても勝手に閉じていった。
「生きたい」と女は言った。生きれるさと私は言ったのだろう医者でもない女が発した責任感のない言葉を女はただただ頷いてありがとう、ありがとう、と言って感謝の言葉を繰り返した。そのすぐ後に女は死んだ。死ぬ瞬間の女は笑っていた。瞳は光を反射し、生きていると思っていたが、気づいたらもう私の言葉に何も反応しなくなった。女は死んでいても輝いて見えた。
私はまだ生きている。私の人生で女という人物が風化していく。生きている私はこの女のことを忘れるのだろう。
私はこの女のことを忘れたくないと思ってしまった。
夢 @fish_f
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