エルフに転生した俺は知識チートで無双する 〜現代日本知識があればその程度の理論なんてすぐに理解できますけど?〜
黒犬狼藉
第1話 プロローグ
俺は、神が嫌いだ。
俺は、運命が嫌いだ。
あるいは、俺は絶対が嫌いだ。
人間は考える葦だという、ソレは正解だろう。
無力な人間ではあるが、そんな存在でも考えることはできる。
だからそんな考えを否定する絶対という概念が、俺は嫌いだ。
「だから、俺は魔法が嫌いなんだ」
ふと、零すように独り言をつぶやいた。
朝露が滴り落ちるような小春日和、小鳥の囀りがリズムのない調べを奏で俺の耳へと届けてくれて。
半分ほど寝ぼけた頭の中には前世の記憶が渦巻いており、周囲の新緑を見ながら何処かに感じた日本の風情を探そうとする。
つまりは、俺は日本からの転生者である。
ライトノベル、或いはアニメに漫画。
サブカルチャーに触れている人間であれば深く説明せずとも理解できる異世界という概念に転生という事象、細やかな理論を考えれば無数に話はできるだろうが事実として重要なのはここが魔法のある異世界であるという話だけ。
簡素な言葉に言い換えればハイファンタジーというジャンルに分類されるだろう、なんともつまらない規定の仕方だ。
だがそうして規定された作品が詰まらないというわけではない、むしろ好奇心をくすぐり不確定性で満たされた未知の領域であるという事から面白いモノであることのほうが多い。
同じく、この世界も俺にとっては酷く興味をそそられる世界であった。
「だから俺は魔法が嫌いなんだ、そうであると信じなければ使えないなんて思考放棄に他ならない。俺たち人間は考える葦であるべきだ、或いは考える葦でなくてはならない。お前もそう思うだろ? アルリス」
「一応いうけど、私たちはエルフだからね?」
「エルフもドワーフも獣人も人間も、全部人類種っていう括りだろ」
「まぁそうだけど……、けどお爺様とかが聞いたら怒るかもだよ?」
彼女はアルリス、俺の幼馴染だ。
俺と同じエルフであり、青と緑を重ねたエメラルドのような髪色。
二房に分けた髪の毛は三つ編みで編まれており、植物性のリボンによって飾られながら纏まっている。
エルフとしての平均的な体系からは大きく離れず、いわばモデルとかと同じようなぐらいに体系は整っているといえるだろう。
1つ残念なのは、服装が地味であることか。
中世風な世界であることから仕方ないとはいえ、一切の飾り気のない服を着ているのはどうなのだろうか。
「まったく……、あ!! ホーンラビットだ、お昼ご飯を豪華にできそう。どうする? 一応、弓も持ってきてるから倒せるケド」
「やめとこう、なんかそういう気分じゃない」
「じゃ、いっか」
彼女が矢筒に矢を戻した、エルフあるあるで俺たちは大抵弓がうまい。
俺みたいに弓が下手なエルフもたまにいるが、ソレは極々稀に出る例外だ。
赤子がいつか二本足で立つぐらいに、当たり前にできることとされている。
地面を走るホーンラビットを見る、その先にはより小さな虫がいた。
雪解けが終わり気温も上がってきた頃合い、長い空腹を抱えていた冬場が過ぎ去れば激動にして飽食の春が訪れるという訳であり。
こうやって生き物が森の浅瀬までやってきて、俺たちは彼らを生きるために殺していく。
静かなだけが自然ではない、狩り殺すというのも自然のメカニズムの1つであるのは間違いないだろう。
命を頂く、或いは命を頂かれる。
日本にいたころには一切考えたこともなかった、自然のメカニズムが嫌でも体感できてしまう。
思考の片隅にある、自然の巡りとして俺は殺されるだろうという諦観に近い哲学と共に。
「どうしたの? 浮かない顔をして」
「俺はいつか死ぬんだろうなー、って考えていただけだよ。もちろん死にたくはないと思うけど、あのウサギを見てたらふとそう思っただけだ」
「ふふっ、面白い。別に私たちはウサギじゃないんだからそう簡単に死なないよ、それにもし怪我をしても私が絶対に助けてあげる」
「そんなことはないとは思うけど、それに。俺だってやられっぱなしで死ぬつもりなんてない、当たり前だろ」
死なないために生きる、生きているから死にたくない。
生物ならば必ず持っているといっても過言ではない本能だ、一度死んで転生したと言っても俺にだってその考えは存在する。
むしろ一度死んだからこそ失う辛さを、死に行く冷たさを知っている訳で。
ある意味では、ソレが俺の人生の目標なのかもしれない。
ならば自分の中でだけでも明確にする為に宣言しようか、死なない為に生きることを。
生き続ける権利を得る為に、全力を尽くすことを。
これが、俺の目標だということを。
次の更新予定
エルフに転生した俺は知識チートで無双する 〜現代日本知識があればその程度の理論なんてすぐに理解できますけど?〜 黒犬狼藉 @KRouzeki
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