嫉妬する彼氏との日常。
ハンナ
私の彼氏は嫉妬する。
「ねぇさっきの何?」
「さっきのって?」
私は居酒屋のメニューを見ながら彼の質問に質問で答えた。すると私が見ているのを邪魔するようにメニューが映し出されている機械に彼の手が置かれた。
手が邪魔なんだけどと言いたくて彼を見ると彼はぶうたれていた。
「そんな顔するから弟ですか?って聞かれるんだよ。」
「酷い!」
いや、事実だし。以前会社の先輩に出会った時に「弟さん?」と言われたことがある。まぁ実際彼は童顔だし年齢も私より5歳年下だから、そう思われても無理はない。
でもそのことを彼はずっと気にしていたりする。
「てか、それよりさっきのは何?」
あっ、話を戻してきた。
彼は私をじーっと見つめてくる。このパターンは非常に面倒なことになることを私は過去に何度も経験している。
今日は何が引っかかったのやら・・・。
「だからさっきのって何?私なんかした?」
そう言うと彼は信じられないって顔で私を見ていた。どうやら私がわからないことにショックを受けてるようだ。
「ねぇ、本気で言っているの?」
「うん。」
そんなショックを受けた顔をされたって分からないものは分からない。
「さっきの男だよ。ペコってしてきたオトコ。」
その言葉で今いる居酒屋に入店しようとした際、お会計をしていた4人組の一人を思い出した。
「あー、会社の後輩だよ。」
「それだけ?」
それだけってなんだよ。ペコっとお辞儀してきた後輩に何を勘繰ってんだコイツは。
「ただの後輩。たまたま私に気がついたからお辞儀しただけでしょ。」
「ふーん。」
全然納得していないな、これは。
「いや、後輩は丁度帰るところで、私たちは食べる為にお店に入っただけでしょーが。」
「・・・ねぇ僕に黙ってる関係じゃないよね。言っとくけど僕は友達でも許せないんだけど。」
「ただの同僚です。」
友達でもない。
「じゃぁ RINE交換してないよね?」
「・・・・。」
私が黙ったので、彼の目が見開いた。
「ねぇまさかしてるの?」
「 RINE交換してる方が何かと便利で。」
「無理。今すぐ削除して。今すぐ。」
私が正直にRINEを交換していることを認めると、テーブルに置いてあった私の携帯に彼が手を伸ばしてきたので、先に取られまいと携帯を手に取り、すぐに自分の鞄にしまった。
「いや仕事に支障きたすからマジで無理。」
「俺は無理なことが無理。」
「てか、透だって職場の人と交換してるでしょうが。」
「俺は大丈夫。」
「なんでだよ。」
おかしいでしょーが。
私が納得していない表情をしていたからか、「俺はだってあーちゃん一筋だもん。ブレないから心配ない。」などと言ってきた。
「だったら私も大丈夫。」
私も透一筋である。
「いや全然大丈夫じゃない。」
「だからなんでだよ。」
「あーちゃん男女関係なく知り合いが多くて俺死にそう。これ以上俺の知らない知り合いを増やさないで。」
「仕事している以上無理でしょうが。」
「じゃぁ仕事辞めて。」
「無理。バカなこと言わないで。」
「じゃぁ今日僕の家に泊ま「無理。」断るの早くない!?」
このパターンは何回も繰り返している。彼の家に泊まったら最後、休日中まともに外に出れた試しがない。
「明日用事があるの。それに今日はご飯だけって話を会う前にしたよね。」
私はなし崩しに泊まることになることを恐れて、先にしっかり約束してから今日彼に会っている。
「そうだけど、でもあんなの見ちゃったら無理。このままご飯食べてお別れなんて僕耐えられないよ。」
見たって、ペコっとお互いお辞儀しただけじゃん!!!
「頼む。1回でいいから耐えてくれ。」
「無理。ていうか、なんでお別れする必要があるの?僕ん家からその用事に行けばいいじゃん。」
だ・か・ら。
「今まで行けた試しがないでしょうが!」
「それは不安にさせるあーちゃんが悪い。」
いつもこの展開に持ち込まれる。
「あなたが不安にならないことなんてないでしょーが。」
「僕と結婚して、妊娠して一歩も家から出なければ僕も安心する。」
「怖い怖い。マジでやめて。」
てか一生家から出ないって、子供が出来たら無理でしょうが、子育て舐めてんのかコイツは!
「なんで!?僕と結婚したくないの!?僕とは遊びだったの!?」
私が心の中で毒ついていると、私とは違う部分でショックを受けていた。
「頼むから声のボリューム下げてくれる?」
彼が結構な声量で言ってきたので周りの人が好奇な目で私たちを見てきた。私はなんとなく小声で注意してしまった。
「じゃぁさっきの彼の RINE消すか、今日僕の家に泊まるかどっちか選んで。」
「彼の RINEも消さないし、私は私の家に戻ります。何飲みたい?」
私は彼の選択肢をぶった斬り、そろそろ本当にお腹が空いてきたので、自分の飲みたい物と食べたいものを入力して、彼に聞いた。
「ビール。じゃぁ僕もあーちゃん家に行く。」
「は?」
彼の発言に思わずメニュー画面から顔を上げた。
「それなら良くない?あっ僕餃子食べたーい。」
そう言って彼は餃子を注文入力した。
「ちょっと待て。全く解決していない。」
「なんで?」
「なんでってなんででも。」
すると彼は本当に怪訝そうな表情をしてきた。
「ねぇひょっとして浮気でもし「してないってば。」ホントかなぁ。」
彼はそう言いながら自分の食べたいものを入力して、注文ボタンを押していた。
「僕、もしあーちゃんが浮気してたら何するか「あ・の・ねぇ。」」
私が彼の言葉を力強く遮ると彼がビクッとした。思いの外強い言い方になってしまった私の言葉に彼が青ざめた。
違う、そんな風にビクビクさせたい訳じゃない。
「ご、ごめん、なさい。僕が悪かった。だから別れるとか言わ「ないってば。」」
「だって私、あなたのことが大好きなんだもん。」
「・・・。」
私がそういうと彼は口をぎゅっと結んだ。
これはちゃんと伝えなければと私は真剣な表情になった。
「あなたがそんなに心配性になってしまった理由は知ってる。あなたがちゃんと言ってくれてるから。」
付き合う前に彼自身の口から教えてくれた。
中高ずっと好きだった人に大学時代にかなり勇気を出して告白して念願叶って付き合うことが出来たこと。そしてその子の為に死に物狂いて学生ながらに働いて欲しいものをなんでも買ってあげていたこと。でもその子は彼含め5股していて、その中で一番リッチな社会人と結婚してしまった。本当に本当に大好きだった人の裏切りに相当ショックを受けて1年大学を休学してしまったこと。そのトラウマでかなりの心配性になっていることも彼から全部聞いていた。
「でも明日は1ヶ月前から約束していた友人と会うの。それを破ることはできない。それは分かってほしい。」
「・・・。うん。」
はぁホントいい歳して怒られた子供みたいな顔するんだから。
「だけど、明日の夜、透の部屋に泊まりに行ってもいい?」
はぁだけどそんな彼が好きな私も相当甘いなと思う。
「っ!!!うん!!!嬉しい!!!もちろん!!!」
そんなに頷いたら首がもげちゃうよーと思っていると、ちょうど飲み物と食べ物が運ばれてきた。
「じゃぁ乾杯して食べよっか!」
彼は物凄い嬉しそうな表情でそう言ったので、私も釣られて笑顔になってお互い頼んだ飲み物で乾杯をした。
ただその後すぐに「明日、5分おきにRINEしていい?」と聞いてきたので、私は飲み物をゴホゴホとむせる羽目になった。
そして話し合いの結果、30分に1回必ず返信することでお互い同意した。
END
嫉妬する彼氏との日常。 ハンナ @hanna7777
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