第8話




「いいですよ、なっても」



だめだってわかってた。



「!、、、っ間宮、さ、」



本音なんか押し殺して、見ないふりをすれば

全部それで解決する話だって。



「だ、、め、、」


「だめ、?本当に?」


「っ、、、、」


「だめならいくら酔ってたって

そんな簡単に男の家に入っちゃいけませんよ。」



ふわふわの白いベッドが沈む。

縫い付けるように、私の腕をつかむその手が大きくて、ああ、やっぱり男の人なんだ、なんてそんな些細な事実に胸がぎゅっとなる。


間宮さんのこと、こんなに近くで見たの、はじめてで。

ふと視線を向けると、知らない顔をしていて。


熱っぽい瞳が、あまりにも、綺麗で。



「、、っ」


「で、俺のものになってくれるの?」



そんな聞き方されて、頭を横に振れるわけない。

でもきっと頷いたら、もう戻れない。



「ほっとけない子だなと思ってた。

配属されたたてなのに仕事を覚えるスピードが早くて、内心ちょっと焦ってたんだよ。

そんな後輩、今までいなかったから。」



夢みたいだ。

私、今、間宮さんに褒められてる。



「どうにかなりそうなのは俺の方だよ。」



自然に解かれた敬語。

熱っぽい表情も、触れる優しい指先も

口調さえ、初めて聞いたもので。


すべて身を任せたら

どれだけ楽になれるだろう。



この誘惑に、乗ってしまえたら、




「そんな可愛い顔で見ないでよ、もう眠いんでしょう。」



ああ、目が、閉じてゆく。



もっと見ていたいのに。



もっと、触れていたいのに。




「良い子は寝てください。

このベットで寝ていいから。」




ふ、と笑って

私の髪をそっと撫でた。




ああ、神様


これが夢なら、醒めないで。





「おやすみ」







これが、恋なら、








fin.





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これが恋なら、醒めないで 葉月結花 @yuika_novel

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