心の魔法の国

かいるん

第1話 お金が欲しいだけなんです!!

 ーひゅ〜ー

 冷たい風が吹いた。僕は凍えて寒く、ブルブルと震えた。木造の家の中なのだから当たり前な気もした。

 僕の名前は、橘 優斗。中学2年生だった。僕はという国に住んでいた。色々経緯があって、今は異世界に住んでいる。

 僕の住んでいる街は山布サンフという江戸時代で言う三軒長屋、木造の建物が集まる住宅街である。

 山布から15分ほど歩くと、烏塵カチリという花魁が集まる遊郭のような場所である。烏塵に入ると夜になる。烏塵の中だけ夜なのだ。烏塵は、酔っぱらいや酒飲みがやってきて綺麗な花魁さんとよろしくする大人の街だ。でも、酒臭い空気に、江戸時代の煙草タバコらしきものの匂いが立ち込める空間だ。本当に居心地の悪い吐き気を催す街だ。

 烏塵から20分ほど歩くと、山城商店街やましろしょうてんがいだ。山城商店街に入れば烏塵の夜は明けて朝になる。肉や魚、貴族向けの家電製品を売っている。家電製品の世代は全て昭和でカラーテレビは家が5軒買えるほどの値段だ。スマホや現代のテレビに慣れている僕にとってはボヤケて画質が悪くて見にくい。山城商店街はいつも、ケーキやアイスの甘い匂いや焼いた肉の美味しそうな匂いでいっぱいだ。八百屋「みどり」の水戸さんはいつもサービスしてくれる。異世界に来て忙しい僕には優しい…。水戸さんは異世界転生者でも召喚者でもない。異世界人だ。

「あんらぁ、優斗ちゃ〜ん。また痩せたんじゃない??ちゃんとご飯食べてね。はい、沢庵たくあん。いっぱい食べんだよ?」

 水戸さんには感謝しかない。僕は最初に転生したときにこの商店街の翠の目の前に急に現れたのだ。そこから知り合い、今では仲良しだ。僕は召喚されてしばらくした日水戸さんに聞いた。

「僕の世界では、漫画で異世界の話があったんです。」

「ほぉ〜。」

 水戸さんはニッコリとして聞いてくれた。

「そこには、豚の化け物のオークや餓鬼のようなゴブリン、妖精フェアリー、1000年以上生きるエルフ…。でも、この世界は人間しかいない。魔法とか、そういうのもない。違いますか??」

 僕は、目を凄い勢い瞬いて尋ねた。興奮気味だったんだろう。

「…いるねんなぁ。」

 水戸さんはボヤッとしていった。

「えっ!!いるんですか??フェアリーとかエルフとかぁ!!」

 僕は、大きな声で言った。

「いんでぇ。おる!全然おるよ。」

水戸さんは、平然そうに言った。

「…やっぱり異世界なんだ。」

僕は、悲しくなった。ココは日本じゃない、現実の異世界なんだと思った。本当に悔しかった。この世界が異世界だったことに…。もう、帰れるか分からない…。

「僕、もとの世界に帰れるんでしょうか…」

僕は、希望がないように言う。

「…異世界召喚ってわかるかい?」

水戸さんは慰めるように言う。

「はい、漫画で読みました。」

僕は、ぼそっと言った。

「もとの世界に帰るには異世界召喚で君を君の来た世界へ送る。あっちの世界で、誰かが異世界召喚すればな帰ることも出来るが…。こっちから送ることも出来る。そのためには1000号ドルゴンいるがな。」

僕は目を輝かせた。1000号ドルゴン…。日本円で約10億…。そう思ったら少し希望がなくなったような気もした。でも、もとの世界に戻れるのならば僕は…。

「…私は、優斗くんがいなくなるのも悲しいよ。」

水戸さんは寂しそうに言う。

「…また、異世界転生したら水戸さんに会いに来ますよ!」

僕は、ゆっくり微笑んだ。

「そうかい。でも、君はあと五十年は生きなさい。」

水戸さんは、目を見開き口をグッとつぐんだ。

「水戸さんはそこまで生きてくれますか?」

僕はおそるおそる尋ねた。水戸さんはもう50代だからだ。50年後には100歳になる。僕はうつむいた。

「生きてやるよ!」

水戸さんはニカッと笑った。僕は、少しホッとしたような声を出した。

「…水戸さん。また、来ますね。」

朝日が店内にサッと差し込んだ。

「おうよ!!」

水戸さんも白い歯を見せながらニカッと笑った。僕はそういって後ろを向きながら水戸さんに手を振りながら、八百屋「翠」を後にした。

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