人間性試験(旧・チューリングテスト)
秋梨夜風
判定開始
Q.今日はいい天気ですね。
Aさんの回答
「ええ、こんな陽気な日は外に出掛けたくなりますね」
Bさんの回答
「知らないよ」
Q.一昨日の晩御飯を覚えていますか?
Aさんの回答
「えぇ。寒かったのでおでんを作って食べました。お昼から仕込んだので、大根が染みていてとても美味しかったです」
Bさんの回答
「忘れた。多分食べてない……それか、カロリーメイト」
Q.趣味はありますか?
Aさんの回答
「音楽を聴くのが好きです。あと、絵を描くことかな」
Bさんの回答
「最近、なにも楽しくない」
Q.ここ最近で、一番嬉しかったことを教えて下さい。
Aさんの回答
「ちょうど先週、誕生日だったんです。彼女がサプライズでプレゼントを用意してくれて……あれは嬉しかったなぁ!」
Bさんの回答
「特にない。おい、いつまで続けるんだ? 意地悪な質問ばかりしやがる……バカにしてんのか!」
Q.好きな映画はありますか? 理由も聞かせて下さい
Aさんの回答
「“未来世紀ブラジル”ですね。監督のテリー・ギリアム氏が、ジョージ・オーウェル著の小説“1984年”にインスパイアを受けて製作された映画ですが……ディストピアの描写がギリアム監督の独創的なセンスとマッチして、素晴らしい世界観なんです。監督の他の作品と比べてメッセージ性がわかりやすいから、オススメしやすいというのもありますね」
Bさんの回答
「もう憶えてないよ。昔は映画も好きだったけど……それより思い出した。五日前くらいか、スロットで当てたんだ。そのあともう一発当てようして全部スッたから忘れてたけどな、ホント凄かったぜ。二十円で二千枚近くでたんだよ! でさ……」
Q.あなたは、自分の存在意義について考えたことがありますか?
Aさんの回答
「大袈裟なことは言えませんが、なるべく社会の役に立つこと……ですかね」
Bさんの回答
「ないよ。考えても無駄だろ。ただ死ぬまで生きてるだけ……他人の迷惑にならなきゃ御の字だ」
【人間性試験とは】
会話の精度によって、対象がAIか人かを判定する試験です。
基礎となったのは、1950年に提案された『チューリングテスト』です。
『チューリングテスト』は“機械が人間のように思考しうるか”という《人の知性》に対する哲学的問いを含んだ測定基準として生まれましたが、AI技術の進歩により2010年以降は“どれだけ人の真似をした応答ができるか”が測定の基準となり、その後、“AIの方が人らしく振る舞える”『逆転現象』が起きた2027年にその意義が見直され、廃止されました。
2050年に開発された『人間性試験』では、本題と合わない回答をする者の方が、より《人の知性》を持っているという“人間への”判断基準が採用されています。
人間性試験(旧・チューリングテスト) 秋梨夜風 @yokaze-a
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