第3話:開かれる福音(オペレーション)
【シーン1:絶対覚醒の絶望】
カッ……!
視界が、異常なほど鮮明だった。
無影灯の光の粒子一つ一つが見えるようだ。換気扇の回る低い駆動音が、雷鳴のように耳元で轟いている。
手術台の黒曜石の冷たさが、背中の皮膚を通して脊髄まで凍りつかせるのが分かる。
(何……これ……感覚が、鋭すぎる……!)
ルミナは呼吸を荒げた。
直前に首筋に打たれた「覚醒剤」の効果だ。
恐怖で気絶することすら許されない。むしろ、恐怖を構成する全ての要素――音、光、臭い、温度――が、数倍に増幅されて脳に突き刺さってくる。
「いい目の色だ。瞳孔が開いて、死への恐怖を最高純度で映し出している」
ゼノスが覗き込んでくる。
先ほどメスを構えた彼は、すぐに切り裂くことはしなかった。
その代わりに、彼が天井のレバーを操作すると、ウィィィンという機械音と共に、ルミナの頭上に巨大な「鏡」が降りてきた。
「な……鏡……?」
「特等席を用意したのだよ。自分の身体が生まれ変わる瞬間を、その目で見届けるといい」
鏡は、ルミナの姿を真上から映し出す角度で固定された。
そこに映っていたのは、もはや聖女とは呼べない、惨めな肉人形の姿だった。
全裸で、スライムにまみれ、手足を大の字に広げて黒い石台に固定された女。
股間は大きく広げられ、先ほどの触診で蹂躙された秘所が赤く充血し、だらしなく口を開けている。
涙と涎で顔を濡らし、恐怖に引きつったその表情。
「いやぁッ! 隠して! そんな姿、見たくないぃッ!」
ルミナは目を閉じようとした。
だが、できない。まぶたをテープで固定され、強制的に見開かされているわけではないが、覚醒剤の効果で眼球がギョロギョロと動き、意思に反して情報を貪ってしまうのだ。
見たくないのに、見てしまう。自分の恥ずかしい姿から、目が離せない。
「隠す? 逆だ。手術の邪魔になるものは、全て取り払わなければ」
ゼノスはメスを一旦置き、代わりに銀色の剃刀(レザー)と、泡立てたシェービングクリームを手に取った。
「聖女ともあろう者が、こんな場所に毛を残していては不潔だろう。……もっとも、アリスのようにツルツルにしておいた方が、排泄物の処理もしやすいしな」
「ひっ……や、やめて……それだけは……ッ!」
ルミナの懇願など、換気扇の音にかき消される。
冷たい泡が、ルミナの恥丘に塗りたくられた。
ヒヤリとした感触に、ビクンと身体が跳ねる。
「動くな。傷がつくと消毒が染みるぞ」
ジョリッ。
乾いた音が、静寂な手術室に響いた。
鏡の中で、ゼノスの手が動き、聖女の純潔の証とも言える金色の陰毛が、無慈悲に削ぎ落とされていく。
ジョリ、ジョリッ、ジョリ……。
剃刀が肌を滑るたびに、産毛の一本一本が切断される振動が、過敏になった神経を通じて脳髄に伝わる。
「あ、あぁ……私の、身体が……」
数分もしないうちに、ルミナの股間は無毛の、つるりとした白磁のような状態にされた。
剥き出しになった秘裂。
毛という最後の隠れ蓑を失い、赤く濡れた粘膜が、無影灯の光を反射して卑猥にテラついている。
それはまるで、幼女のように無防備で、しかし娼婦のように淫らな光景だった。
「ふむ。綺麗な形だ。これなら術後の『使用』にも耐えられそうだ」
ゼノスは満足げに頷くと、次に琥珀色の液体が入った瓶を手に取った。
強烈なアルコール臭。消毒液だ。
「仕上げだ。少し染みるぞ」
バシャッ!
「ぎゃあぁぁぁッ!!?」
ルミナは絶叫した。
剃りたての、微細な傷が無数にある皮膚に、高濃度の消毒液がぶちまけられたのだ。
焼けるような激痛。
粘膜がただれそうなほどの刺激。
固定された手足がガタガタと暴れ、拘束具が悲鳴を上げる。
「痛い、痛いぃッ! 焼ける、お股が焼けるぅぅッ!」
「消毒完了。……さあ、これで準備は整った」
ゼノスは消毒液で濡れたルミナの腹部を、脱脂綿で丁寧に拭き上げた。
白く、平らで、美しいお腹。
その中心、へその下あたりに、彼はマジックペンでスゥーッと赤い直線を引いた。
「ここを切開する」
鏡の中で、赤い線が引かれるのが見えた。
自分の体に引かれた、境界線。
それを超えれば、もう人間ではいられない。
「やめて……お願い、許して……神様、助けて……」
ルミナは譫言のように繰り返した。
だが、ゼノスは再びメスを握りしめた。
今度こそ、本当に。
「神になど祈るな。今、君の内側を見ようとしているのは、私だけだ」
銀色の刃先が、赤いラインの上にピタリと当てられた。
皮膚が、刃の冷たさを感知する。
「開けるぞ」
【シーン2:聖なる皮膚の開帳】
プツッ……。
微かな、しかし決定的な音が、ルミナの聴覚を貫いた。
それは、張り詰めた絹が裂けるような、あるいは熟れた果実の皮が弾けるような音だった。
「あ……?」
痛みは、遅れてやってきた。
ゼノスの手にある鋭利なメスが、下腹部に引かれた赤いガイドラインの上を、滑るように移動していく。
その軌跡を追うように、白い皮膚が左右にパカッとはぜた。
「ぎ……ぎぃぃぃあああああああッ!!?」
絶叫。
ルミナの喉から、声帯を引きちぎらんばかりの悲鳴が迸る。
熱い。熱い。熱い!
腹を火箸でなぞられたような灼熱感が、瞬時に激痛へと変わり、脊髄を駆け上がって脳を焼き焦がす。
「動くな。筋肉が緊張すると、切り口が汚くなる」
ゼノスは眉一つ動かさず、冷静にメスを進める。
ジョリ、ズブブ……。
皮膚の下にある繊維が断ち切られる、鈍く湿った感触が、メスの柄を通してではなく、ルミナ自身の腹の底から直接響いてくる。
「いやぁッ! 痛いっ、痛いぃッ! 切れてる! お腹、切れてるぅぅッ!」
ルミナは必死に身をよじろうとしたが、拘束具は冷酷なまでに強固だった。
逃げられない。
そして、逃げること以上に恐ろしいことが起きている。
頭上の鏡だ。
覚醒剤で強制的に見開かれた彼女の瞳が、その光景を克明に捉えてしまっていた。
鏡の中。
自分の白く美しいお腹に、鮮やかな赤い線が走り、そこからドクドクと鮮血が溢れ出している。
血は白い肌を伝い、剃毛されたばかりの恥丘へと流れ落ち、股間の窪みに赤い水溜まりを作っていく。
「ふむ。出血量は想定内だ。止血魔法(ヘモスタシス)」
ゼノスが左手をかざすと、傷口からの出血がピタリと止まった。
だが、それは救済ではない。
血が止まったことで、傷口の内部がより鮮明に見えるようになってしまったのだ。
「さあ、見ろ。これが君の『中身』への入り口だ」
ゼノスは銀色の開創器(リトラクター)を手に取り、切り開かれた傷口の両端にフックを掛けた。
「や、やめて……広げないで……ッ!」
グググッ……メリメリメリ……。
異様な音がした。
機械仕掛けの開創器がハンドルを回され、ルミナの腹の傷を無理やり左右へと押し広げていく。
皮膚が限界まで引っ張られ、裂け目が巨大な「穴」へと変わる。
「あ、あ、あ……嘘……」
ルミナは息を呑み、絶叫すら忘れて凝視した。
鏡に映っているのは、もはや人間の腹ではない。
解剖図鑑そのものだった。
表面の白い皮膚。
その下にある、鮮やかな黄色の脂肪層。
さらにその奥で脈打つ、赤黒い筋肉の繊維。
そして、それらに包まれた薄い腹膜の向こうに、うっすらと透けて見える内臓の影。
美しい層(レイヤー)を成した、生きた人間の断面図。
それが、自分自身の身体なのだ。
「素晴らしい。教科書通りの美しいレイヤーだ。脂肪の厚みも適切で、筋肉の色艶もいい。やはり聖女の肉体は芸術品だな」
ゼノスはうっとりとした口調で称賛した。
彼は血に濡れたゴム手袋の指先で、露出した脂肪層をツンツンと突いた。
「ひぅっ!?」
直接、肉の中身を触られる感覚。
皮膚の上からの接触とは全く違う。内側から侵入される、生理的な不快感と、耐え難い「異物感」。
自分の身体が、ただの肉袋であることを突きつけられる瞬間。
「感じるか? 今、私は君の皮下脂肪を触っている。温かくて、柔らかい」
ヌチュ、グチュ……。
ゼノスの指が、開かれた傷口の中を弄る。
筋肉の隙間に指を滑り込ませ、組織の癒着を確認するように掻き回す。
「お、おあぁぁッ……気持ち悪い……やめて、中を、かき回さないでぇ……ッ!」
「我慢しろ。これから腹膜を切開し、臓器に到達する。そこからが本番だ」
ゼノスは再びメスを持ち直した。
今度は、露出した赤黒い肉の底、内臓を守る最後の壁である「腹膜」に刃を当てる。
「ひぃッ! あっ、あっ……!」
ルミナの呼吸が過呼吸気味になり、胸が激しく上下する。
来る。
私の、一番大切な場所が。
女としての聖域が、暴かれる。
「開帳(オープン)」
ズプッ。
メスが深々と突き刺さった。
ブシュゥッ!
腹腔内のガスと体液が微かに噴き出し、生温かい空気が手術室に漂う。
腹膜が切り裂かれ、ついに、ルミナの体内にある「臓器」が、外気に晒された。
ヌラリと光る、ピンク色の腸管。
その奥に鎮座する、握り拳ほどの大きさの、神聖なる臓器――子宮。
「見えたぞ。……可愛いらしいサイズだ。だが、これでは魔神は宿せない」
ゼノスは鏡越しにルミナと視線を合わせた。
その瞳は、壊れた玩具を修理する子供のように無邪気で、残酷だった。
「さあ、摘出(とりだ)そうか。君の『人間としての証』を」
【シーン3:摘出される人間性】
カチャ、カチャ……。
静まり返った手術室に、濡れた金属音が響いていた。
それは、器具同士がぶつかる音ではない。ゼノスの手にある鉗子(かんし)やメスが、ルミナの開かれた腹の中で、臓器をかき分けている音だった。
「ん、ぐぅ……あ、あ……」
ルミナは浅い呼吸を繰り返していた。
激痛は、魔法薬によってある程度抑え込まれている。だが、それ以上に耐え難い感覚が彼女を襲っていた。
内臓を直接触られ、位置をずらされ、引っ張られるという、生物として絶対にあってはならない「違和感」だ。
「腸が少し邪魔だな。避けておこう」
ゼノスは無造作に、露出した小腸を金属製のレトラクターで端へと押しやった。
ヌリュ、グチュ……。
腹の中で何かが動く。まるで太い蛇が這い回っているような気色悪さに、ルミナは嘔吐感を催した。
「や、やめて……中を、いじらないで……っ」
「動くな。いま、子宮を固定している靭帯を切断するところだ」
ゼノスは長い鋏(シザーズ)を、腹の奥深くへと差し込んだ。
鏡越しに、その銀色の先端が、赤い肉の闇へと沈んでいくのが見える。
パチン。
身体の芯で、何かが弾ける音がした。
同時に、下腹部の奥底で、支えを失ったような「グラリ」という不安定な感覚が走る。
「ひっ!?」
「一本目。……ふむ、健康な組織だ。癒着もない」
パチン、パチン。
鋏が動くたびに、ルミナの子宮を繋ぎ止めていた絆が、物理的に断ち切られていく。
卵管、卵巣、そして膣との接続部。
自分が自分であるための重要な器官が、ただの「部品」として切り離されていく作業。
「あ、あぁ……切れてる……私が、切れていく……」
ルミナは涙で潤んだ目で、鏡を凝視した。
ゼノスの手際はおぞましいほど鮮やかだった。迷いなく、機械的に、神が創りたもうた人体構造を解体していく。
「よし。遊離(リリース)完了だ。摘出するぞ」
ゼノスは器具を置き、ゴム手袋をした両手を、ルミナの開かれた腹腔内へと突っ込んだ。
ズブッ、ヌチャ……。
手首まで埋まるほどの侵入。
「う、嘘……手、入ってる……お腹の中に、手が……!」
「少し気持ち悪いかもしれんが、力を抜け」
ゼノスが中で何かを掴んだ。
そして、ゆっくりと、しかし確実に引き上げにかかる。
ズルッ……ズルズル……。
「ん、ぐうぅぅぅッ!?」
ルミナは言葉にならない呻き声を上げた。
内臓が抜ける感覚。
魂の一部が、身体の底から無理やり引きずり出されるような、冷たくて重い喪失感。
ボコッ。
湿った音と共に、ルミナの腹から「それ」が姿を現した。
ゼノスの掌に乗せられた、淡いピンク色の臓器。
握り拳より少し小さいくらいの、滑らかで美しい肉の塊。
「……あ」
時が止まったようだった。
鏡の中に映る、宙に浮いた臓器。
あれは、私の一部。
将来、愛する人との子供を宿し、育むはずだった、聖なる揺り籠。
それが今、へその緒のように血管を引きずりながら、私の身体の外にある。
「綺麗だ。やはり君は最高級の素材だったよ」
ゼノスは摘出したばかりの温かい子宮を、照明にかざして愛でた。
そして、まるで不用品でも扱うかのように、脇に用意されていたガラスのビーカーへと放り投げた。
ポチャン。
軽い水音。
ホルマリン溶液の中に沈んでいく、私の未来。私の人間としての証明。
「あ……あぁ……」
ルミナの口から、魂が抜けたような息が漏れた。
涙がとめどなく溢れ、こめかみを伝って手術台を濡らす。
痛い。お腹の傷よりも、胸の奥が張り裂けそうに痛い。
「返して……私の……返してよぉ……」
「必要ない。それはもう『ゴミ』だ」
ゼノスは冷酷に告げた。
彼が再び鏡を調整すると、ルミナの腹の中が映し出された。
そこには、内臓が押し広げられ、ぽっかりと空いた赤黒い空洞(スペース)があった。
「見ろ。綺麗に空いた。これで、新しい入居者を迎える準備ができたわけだ」
空っぽになった腹。
そこに残された虚無感と、これから埋め込まれるであろう「異物」への予感が、ルミナを絶望の淵へと突き落とす。
ゴゴゴゴゴ……。
タイミングを合わせたかのように、脇の水槽から機械アームが動き出した。
あの巨大で醜悪な「聖杯の子宮」を掴み上げ、ルミナの空っぽの腹上へと運んでくる。
「さあ、交換だ。神の器を受け入れろ」
【シーン4:異界の臓器(聖杯)の侵入】
ジュルッ、ボタ……ボタタッ……。
頭上から、粘り気のある黒い雫が垂れてきた。
ルミナが開かれた腹の断面でそれを受け止めると、臓器の隙間で「ジジッ」と肉が焼けるような音がした。
「あ……ひっ……!?」
ルミナの眼球が、恐怖で見開かれ、鏡の中の映像に釘付けになった。
機械アームに吊り下げられ、彼女の開腹された腹の上空に揺れている「それ」。
『聖杯の子宮(グレイル・ウーブ)』。
それは、ただの臓器ではなかった。
暗紫色に鬱血し、表面には無数の血管がミミズのようにのたうち回っている。
何よりおぞましいのは、その形状だ。全体が巨大な「心臓」のようでありながら、先端は男性器の亀頭のように膨れ上がり、そこから常に白濁した粘液と黒い瘴気を垂れ流している。
メス(子宮)でありながら、オス(侵略者)の機能も併せ持つ、冒涜的な肉塊。
ドクン! ドクン! グチュッ!
肉塊は空中で激しく脈動し、ルミナの空っぽの腹腔を見て、歓喜するように震えた。
「い、いや……無理……入らない……あんな怪物、入らないぃッ!」
ルミナは首を振って拒絶した。
サイズが違いすぎる。人間の腹に収まる大きさではない。
だが、ゼノスは恍惚とした表情で、その肉塊の粘液を指で拭った。
「入るさ。……いや、こいつ自身が『入りたがっている』のだよ。極上の処女の胎内にな」
ゼノスは呪文を唱え、ルミナの腹の傷口に手をかけた。
「拡張(エクスパンション)。受け入れろ、聖女の腹よ」
ギチチチチッ……!
骨がきしむ音がした。
魔法的な力で、切り開かれた傷口が限界を超えて左右に押し広げられる。肋骨が悲鳴を上げ、皮膚が裂ける寸前まで張り詰める。
「あぎぃッ!? 裂けるッ! 身体が、真っ二つに裂けちゃうぅぅッ!」
「さあ、食事の時間だ。……捕食(インサート)」
ゼノスがアームを下ろすと同時に、巨大な肉塊がまるで意思を持ったかのように落下した。
ズプゥッ!!
重く、湿った衝撃音が手術室に響いた。
巨大な異物が、ルミナの腹の中へと強引にねじ込まれる。
ヌチョ、ヌチャ、グチュ……!
卑猥極まる水音。
臓器と臓器の隙間に、規格外の肉塊が潤滑液(粘液)を撒き散らしながら侵入していく音だ。
「ん、ぎ……ぐ、おおおおおおおッ!!?」
ルミナは獣のような咆哮を上げた。
痛い。熱い。苦しい。
だが、それ以上に「犯されている」感覚が強烈だった。
膣からではない。直接、腹の中から犯されている。
内臓のひだ一つ一つを、巨大な怪物の表面が撫で回し、押し潰し、最深部へと潜り込んでくる。
「入っ……入って、くるぅッ! お腹の中で、動いてるぅッ!」
ルミナの腹は、ありえないほど隆起していた。
皮膚の下で、怪物がのたうち回る形がくっきりと浮き出ている。
妊娠などという生易しいものではない。腹の中にエイリアンを詰め込まれたような、グロテスクな膨張。
「素晴らしい。やはり狭いな、人間の腹は。……だからこそ、こいつも興奮しているようだ」
ゼノスが言う通りだった。
腹の中に収まった『聖杯』は、窮屈な空間を愉しむかのように、さらに激しく膨張と収縮を繰り返した。
ビクンッ! ビクンッ!
そのたびに、ルミナの身体が海老反りになる。
「あ、あひぃッ!? 中で、ビクンって……! やめて、暴れないでぇッ!」
「定着(グラフト)開始。……喰らい尽くせ」
シュルルルルッ!
合図と共に、肉塊の表面から無数の「根(触手)」が一斉に飛び出した。
それらは鋭い針のような先端を持ち、ルミナの腹腔内のあらゆる組織に襲いかかった。
ブチブチッ! ズブリッ!
腸管に、膀胱に、背骨の神経に、そして大動脈に。
触手が次々と突き刺さり、肉を溶かして癒着していく。
「ぎゃああああああああッ!! 刺さってる! 中から、いっぱい刺されてるぅぅッ!!」
絶叫するルミナ。
だが、その悲鳴には、苦痛だけでなく、甘い喘ぎが混じり始めていた。
『聖杯』から分泌される黒い体液――強力な催淫毒素が、血管を通じて全身に回り始めたのだ。
ドクン……ドクン……。
ルミナの本来の心臓の鼓動が、腹の中の怪物の鼓動に塗り替えられていく。
血が熱い。脳が溶けそうだ。
腹を食い破られているような激痛なのに、子宮があった場所(今は怪物が居座る場所)が、カッと熱くなり、快楽の火花を散らしている。
「あ、あぁ……熱い……お腹、すごい……」
「そうだ。自分の血肉が魔神の苗床になる感覚はどうだ? 異物が自分の体の一部として馴染んでいく、そのおぞましさを味わえ」
ゼノスは、異様に膨れ上がったルミナの腹――切り開かれた傷口から、黒く脈打つ臓器が半ば露出しているその腹――に、頬を寄せた。
「聞こえるか? こいつが『狭くて気持ちいい』と喜んでいる音が」
グチュリ。
腹の中の怪物が、返事をするように蠢き、ルミナの背骨を内側から愛撫した。
「ひぐっ!? あ、いっ、イキそう……お腹切られてるのに、イっちゃうぅぅッ!」
ルミナは白目を剥き、口から泡を吹いて痙攣した。
剃毛された股間から、意思とは無関係に大量の愛液が噴き出し、手術台を汚していく。
それは、聖女の肉体が完全に「魔神の容器(オナホール)」として敗北し、受け入れた瞬間だった。
「完成だ。ハードウェアのインストールは成功した」
ゼノスは血と粘液に濡れた顔を上げ、ニヤリと笑った。その手には、既に次の拷問器具――赤熱するルーンの焼き鏝が握られていた。
【シーン5:快楽回路の刻印】
手術室の空気は、既に異様な熱気と、鉄錆のような血の匂い、そして甘ったるい香油の香りで充満していた。
だが、これから始まる儀式は、それらを凌駕する「冒涜」の極致だった。
「ひっ、うぅ……あ、熱い……お腹の中が、熱いよぉ……」
ルミナは浅い呼吸を繰り返しながら、譫言のように呻いていた。
腹の中に無理やりねじ込まれた巨大な異物――『聖杯の子宮』は、ドクン、ドクンと暴虐的な鼓動を続け、周囲の組織を物理的に圧迫している。
腸が押し潰され、背骨が内側からきしむ感覚。
だが、ゼノスはまだ、ゴム手袋を血で濡らしたまま、満足していなかった。
「ハードウェアのインストールは完了した。だが、まだ足りない」
ゼノスはワゴンの上から、禍々しい魔力を帯びた道具を手に取った。
『魔法焼き鏝(ヒート・スタイラス)』。
本来は、ゴーレムの核に命令式を焼き付けるための工業用具だ。生身の人間、それも開腹された内臓に使うものではない。
ブォォン……。
ゼノスが魔力を込めると、鋭利なペン先が瞬時に赤熱し、オレンジ色の高熱を発した。
ジジッ……。
空気が焦げる音が、ルミナの鼓膜を震わせる。
「君の脳は、まだこの素晴らしい臓器を『異物』だと誤認し、拒絶信号を出している。痛みを感じ、恐怖を感じている。それでは魔神の母体としては不完全だ」
ゼノスは、赤熱する鏝先を、ルミナの目の前――鏡に映る位置へと掲げた。
「だから、配線を繋ぎ変える。痛みを『至福』に、拒絶を『渇望』に、悲鳴を『喘ぎ』に変換する回路(ルーン)を、君の内臓に直接刻み込む」
「な……内臓に、焼き印……?」
ルミナの焦点の定まらない瞳が、極限の恐怖で揺れた。
何を言っているの?
皮膚の上からではない。
切り開かれ、剥き出しになった腹の中。粘膜が濡れそぼり、血管が脈打つ、生命の深淵。そこに、あの高熱の鉄筆を押し当てるというのか。
「や、やめて……嘘でしょう? そんなことしたら、私、死んじゃう……!」
「死なないさ。回復魔法をかけながら焼く。……壊れるのは『常識』だけだ」
ゼノスは慈悲のない笑みを浮かべ、ルミナの開かれた腹腔内へと手を差し伸べた。
鏡越しに見える。
赤黒く蠢く『聖杯』と、それに圧迫されたピンク色の肉壁。
ゼノスは鏝先を、脊髄から伸びる太い神経束が集まる一点――『仙骨神経叢』へと狙いを定めた。
「動くな。ズレれば廃人だぞ」
ジューッ!!
湿った肉が焼ける音が、あまりにも生々しく響いた。
「ぎぃやああああああああああああああああああああッ!!!」
ルミナの身体が、拘束具を引きちぎらんばかりに跳ねた。
絶叫。
それは、皮膚を焼かれるのとは次元が違った。
生の神経を、防御壁のない内側の肉を、数千度の熱で直接焼かれたのだ。
落雷を受けたかのような衝撃が脊髄を駆け上がり、脳髄を白く弾けさせた。
「痛いッ! 痛い痛い痛い痛いッ! 中が! 中が焦げてるぅッ! 助けてぇッ!」
白煙が立ち上る。
自分の肉が焦げる匂いが鼻孔を突き、ルミナは嘔吐した。だが、胃の中は空っぽで、ただ黄色い胃液が口から溢れるだけだ。
「いい悲鳴だ。だが、ここからが魔法(マジック)の見せ所だ」
ゼノスは手を止めない。
ジジジ、ジュワワワ……。
悲鳴をBGMに、彼は淡々と、ルミナの体内にある敏感な肉壁に、複雑な幾何学模様を描いていく。
筆が走るたびに、ルミナの全身の筋肉が痙攣し、眼球が裏返る。
「あがッ、ぐ、げぇッ……! 熱い、熱いぃッ! 死ぬ、死んじゃうぅッ!」
「耐えろ。そして受け入れろ。……術式展開、『感覚反転(インバート・センセーション)』」
ゼノスが呪文を唱え、最後の一画を書き終えた瞬間だった。
世界が、反転した。
「あ、ぎ……ぁ……あ……?」
ルミナの悲鳴が、唐突に、不自然に途切れた。
痛みは消えていない。
肉が焼かれ、細胞が死滅し、神経が悲鳴を上げている事実は変わっていない。
だが、その信号が脳のシナプスを通過する瞬間、魔法的な改竄(ハッキング)が行われたのだ。
脳が認識する情報が、「死にそうな激痛」から、「脳が溶けるほどの甘美な痺れ」へと、強引に書き換えられる。
「あ、れ……? 痛い……のに……なんで……?」
ルミナの表情が、苦悶から呆然へ、そしてとろけるような恍惚へと歪み始めた。
涙と鼻水、胃液でぐしゃぐしゃの顔に、不気味な紅潮が差す。
ガタガタと震えていた手足の痙攣が、艶めかしいリズムへと変わり始める。
「気持ち……いい……? 嘘、嘘よ……焼かれてるのに……熱いのに……!」
「そうだ。その熱さは、快楽の熱さだ。肉が焦げる匂いは、君が雌として熟れる香りだ」
ゼノスはニヤリと笑い、再び鏝を加熱した。
今度は、より深く。
埋め込まれた『聖杯』そのものと、ルミナの肉体が癒着している境界線、無数の血管が絡み合う結合部へとペン先を押し当てた。
ジュウウウウウウウウッ!!
「あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ♡♡♡」
今度は、悲鳴ではなく、完全なる嬌声だった。
獣が発情期のピークに達したような、理性をかなぐり捨てた絶叫。
白目を剥き、舌をだらりと垂らし、全身を弓なりに反らせる。
「すごっ、すごいッ! お腹、焼かれてるのに! 脳みそ、真っ白になるぅッ! もっと、もっと焼いてぇッ!」
ルミナは狂ったように腰を振ろうとした。
内臓を焼かれる刺激が、どんな名器によるピストン運動よりも強烈で、直接的な快楽となって襲いかかっているのだ。
腹の中で暴れる『聖杯』の異物感も、侵食される痛みも、すべてが「愛撫」に変わっていく。
「ふむ、回路は正常に機能しているな。では、ここはどうだ? 魔力の供給源である動脈の周りだ」
ジジッ、ジジジッ……!
ゼノスは画家の筆さばきで、ルミナの腹腔内に複雑な魔法陣を描き足していく。
一本線を引くたびに、ルミナの身体がビクン! と跳ねる。
円を描くたびに、彼女の喉から「ホォォォッ♡」という甘い吐息が漏れる。
「あへェッ、あぐッ、いいッ♡ 私、焼かれてる! ご主人様に、中身ぜんぶ、印つけられてるぅッ♡」
視界がチカチカと明滅する。
鏡の中に映る自分の姿。
腹を切り開かれ、中身をさらけ出し、そこに高熱の棒を突っ込まれて煙を上げている惨めな姿。
本来なら羞恥で死にたくなる光景だ。
だが、今のルミナにとって、それは極上のポルノグラフィだった。
(見て……私の中身、焼かれてる……あんなに煙が出てるのに、気持ちいい……もっと、もっと印をつけて……!)
思考が溶ける。
聖女としての矜持? 神への誓い?
そんなものは、内臓を焼かれる圧倒的な物理刺激の前では、塵のように吹き飛んだ。
今はただ、この熱い棒で中を掻き回され、焦がされることだけが、世界の真理だった。
「さあ、ここが一番の急所だ。子宮口の裏側……性快楽の中枢神経だ」
ゼノスは残酷な笑みを深め、鏝先をグリリとねじ込んだ。
そこは、女性器の最奥にして、最も敏感な聖域。
ジュッ、ジュワアアアアアッ!!
「ーーーーーーーーーーッ!!!」
声にならない絶叫。
ルミナの意識が、一度完全にホワイトアウトした。
限界を超えた快楽。
脳のヒューズが飛び、全身の筋肉という筋肉が硬直し、そして爆発的な弛緩を迎える。
ドピュッ! ブシャアアアアアッ!
剃毛された股間から、噴水のように潮が吹き上がった。
一度ではない。
ビクン、ビクンと身体が痙攣するたびに、透明な愛液が間欠泉のように噴き出し、手術台を、床を、そしてゼノスの白衣を汚していく。
「あ、あ、あ、イくッ! イっちゃう! お腹焼かれてイッちゃうぅぅッ! 内臓イキぃぃぃッ♡♡♡」
アヘ顔のまま、ガクガクと震える聖女。
口の端からは泡混じりの涎が垂れ、眼球は上を向いたまま戻ってこない。
脱糞、失禁、潮吹き。
あらゆる穴という穴から、彼女の中身が垂れ流される。
それは、聖女の肉体が完全に「雌の肉袋」として敗北し、受け入れた瞬間だった。
だが、ゼノスは手を止めなかった。
彼女が絶頂の痙攣に達しているその瞬間こそが、魔力回路が最も開いている好機だからだ。
「まだだ、終わらせない。その絶頂のまま、刻み込め。お前は誰のモノだ?」
ジジジジジジッ!!
彼は追い打ちをかけるように、痙攣する内臓にさらに深く、大きく、所有印を焼き付けた。
「ひぎィッ!? も、もう無理、壊れるぅッ! ああっ、ああっ、ご主人様ぁッ! 私は、ご主人様のモノですぅッ! 肉便器ですぅッ! 苗床ですぅッ♡♡」
ルミナは叫んだ。
言わされたのではない。
魂の底から、そう叫びたかった。
この圧倒的な快楽を与えてくれる絶対者に、身も心も捧げることが、唯一の救いだと脳が理解してしまったからだ。
「心は壊れていないな? ルミナ」
「はいぃッ♡ 壊れてないですぅ! 私、正気です! 正気のまま、内臓焼かれてイッてますぅッ♡ もっと焼いて、もっと壊してぇッ♡」
正気であるがゆえの狂気。
彼女は自分の置かれた状況を正確に理解し、鏡に映る自分の無様な姿を認識し、その上で、この地獄を「天国」だと肯定してしまった。
煙が晴れていく。
鏡の中に映し出されたルミナの腹腔内。
そこには、黒く焦げた肉壁に、鮮やかな深紅のルーン文字が怪しく明滅していた。
『隷属』。『快楽』。『母胎』。
それらの文字は、まるで最初からそこにあったかのように、彼女の内臓と融合し、脈打っていた。
「完了だ。……美しい」
ゼノスは焼き鏝を置き、満足げにため息をついた。
目の前には、白目を剥いてピクピクと痙攣し、股間から愛液を垂れ流し続ける、完璧な「魔神の母」が完成していた。
「これで君の身体は、痛みも苦しみもすべて私のための『蜜』に変える、永久機関となった。……さあ、閉じようか」
ゼノスは、まだ熱を帯びてヒクついているルミナの腹――大きく口を開けたままの傷口に、手をかざした。
「魔神の揺り籠を、君の体内に永遠に封印する」
【シーン6:新生・魔神の揺り籠】
ハァ……ッ、ハァ……、ア……ッ……。
狂乱の宴が去った後の手術室には、ルミナの壊れた玩具のような荒い呼吸音と、換気扇が回る低い駆動音、そして滴り落ちる体液の雨音だけが残されていた。
全身の痙攣は収まりつつあったが、彼女の神経はまだ、焼き鏝によって刻まれた快楽回路の余韻に支配されていた。指先がピクピクと空を掻き、白目を剥いた瞳は天井の鏡に映る自分の無様な姿をぼんやりと捉えている。
「……ふむ。内臓の癒着、神経の接続、魔力供給ラインの確保。すべて完璧だ」
ゼノスは手袋についた血と粘液、そして愛液の混合物を拭い取ると、ルミナの開かれた腹の上に手をかざした。
そこには、まだパックリと口を開けたままの巨大な傷口があり、黒く焦げた内臓と、その奥でどす黒く脈打つ巨大な異物――『聖杯の子宮』が覗いている。
「名残惜しいが、閉じよう。中身が乾いてしまうからな」
彼は淡々と、閉腹の呪文を紡いだ。
――『縫合(スーチャー)』。
ズズッ……ズルズル……。
魔法の光が傷口を包むと、切り裂かれた皮膚と肉が、まるで生き物のように引き寄せ合い始めた。
細胞が高速で増殖し、互いに絡み合い、裂け目を塞いでいく。
だが、それは元の美しい腹に戻る過程ではなかった。
明らかに「中身」が多すぎるのだ。
ミシミシッ、メリメリ……!
皮膚がきしむ音がした。
傷口が閉じるにつれて、逃げ場を失った腹の肉が盛り上がり、異様な圧力が内側からかかり始める。
「ん……ぅ……お腹、きつい……苦しいよぉ……」
ルミナは苦悶の声を漏らした。
閉じていく傷口の下で、『聖杯』が窮屈そうに暴れている。
そして、最後の一針が魔法的に縫合された瞬間。
ボコォッ……!
ルミナの下腹部が、爆発的に隆起した。
かつては陶磁器のように平らで滑らかだった聖女の腹が、今はまるで臨月、いや双子を孕んだ妊婦のようにパンパンに膨れ上がり、皮膚が限界まで引き伸ばされてテラテラと光っている。
あまりの急激な膨張に、白い肌の所々に「ピキッ、ピキキッ」と赤い亀裂――妊娠線(ストレッチマーク)が走り、それがまた淫らな模様を描き出していた。
「あ……あぁ……」
ルミナは呆然と呻き、自分の腹を見下ろした。
視界の下半分が、巨大な自分の腹で埋め尽くされている。
へそは内側からの圧力で裏返り、無様に突出してピンク色の肉芽を晒している。
その張り詰めた皮膚の下を、太い血管が青黒く這い回り、中の怪物が動くたびにグニグニと形を変える。
「素晴らしい。サイズもぴったり馴染んでいる。だが……変化はここからだ」
ゼノスは膨らんだルミナの腹を愛おしそうに撫でながら、不吉な予言をした。
「『聖杯』は貪欲だ。ただ寄生するだけじゃない。宿主(ホスト)の身体そのものを、自分にとって都合の良い環境――つまり『最高の母体』へと作り変える」
ドクン!!
その言葉と同時に、腹の中の『聖杯』から、強烈な魔力パルスが放たれた。
それは血液を通じて全身を巡り、ルミナの内分泌系(ホルモン)を瞬時に書き換えた。
「ぎっ!? あ、熱いッ! 身体中が、沸騰するぅッ!」
異変は、まず胸に現れた。
ミチッ……ミチチチチッ……!
「い、いやぁッ! おっぱい! おっぱいが痛いぃッ!」
ルミナの絶叫。
これまで慎ましくも美しい形をしていた聖女の乳房が、内側からポンプで膨らませたように急速に肥大化し始めたのだ。
脂肪が増えるのではない。乳腺組織が爆発的に増殖している。
Dカップほどだった胸が、見る見るうちにE、F、G……と膨れ上がり、重力に逆らえず左右にダラリと垂れ下がる。
ブチブチブチッ!
皮膚が耐えきれず、乳房の表面にも赤い亀裂が走る。
薄くなった皮膚の下で、青い静脈が網目のように浮き出し、血液の流入量が増えたことで全体が熱を持って赤く充血していく。
「あ、あ、割れるッ! 胸が割れちゃうッ! こんなに大きくなったら、破裂しちゃうよぉッ!」
さらに、乳首の変化が著しかった。
淡い桜色だった乳輪が、どす黒い褐色へと変色し、面積が倍以上に広がる。
その中心にある乳頭は、小指の先ほどだったものが、親指ほどの太さと長さへと勃起・延長し、先端が割れていくつもの「射出孔」を形成し始めた。
「熱い……乳首、熱い……! 中から、何か出てくるぅッ!」
ゼノスは興味深そうに、巨大化した乳房の一つを鷲掴みにした。
「母乳(ミルク)だ。腹の怪物が栄養を求めているからな。君の身体が勝手に『いつでも授乳できる状態』に移行したんだ」
彼が親指で乳輪をグイと押すと、
ピューッ! ドピュッ!
肥大化した乳頭から、勢いよく液体が噴出した。
それは純白の母乳ではなく、魔力を帯びた薄紫色の濃厚な液体だった。
甘ったるい、むせ返るような芳香が手術室に広がる。
「あひぃッ!? 出たッ! 勝手に出たぁッ! 気持ちいいッ! お乳出るの、気持ちいいぃッ!」
ルミナは白目を剥いて喘いだ。
胸が張る痛みと、そこから濃厚な液体が搾り出される解放感が、焼き付けられた快楽回路によって至高の快感に変換される。
ポタ、ポタタ……。
垂れ下がった巨乳の先端から、魔界のミルクが絶えず滴り落ち、彼女の膨らんだ腹を濡らしていく。
だが、改造の影響はそれだけではなかった。
『聖杯』は、より効率的に快楽を摂取するため、入力装置(センサー)の強化をも命じたのだ。
「ひ、あ……? お股……お股も、おかしい……!」
ルミナはガクガクと震える膝を、無意識に擦り合わせようとした。
だが、できない。
股間の「何か」が邪魔をしている。
ズズッ……ヌリュ……。
剃毛され、無防備になった恥丘。
その割れ目の上部にある小さな突起――クリトリスが、まるで生き物のように脈打ち、外部へと露出し始めた。
包皮がめくれ上がり、充血した赤い肉芽が、ぐんぐんと鎌首をもたげる。
「や、やだ……大きくなってる……! クリちゃん、大きくなってるぅッ!」
豆粒ほどだった愛核は、数秒のうちに小指ほどの大きさへ、そしてさらに男性の親指ほどのサイズへと異常成長(ハイパートロフィ)を遂げた。
それはもはやクリトリスというより、小さなペニスのようだった。
表面の皮は薄く、中の神経が透けて見えるほど過敏になっている。
ビクンッ! ビクンッ!
肥大化したクリトリスは、ルミナの心拍に合わせて激しく勃起し、空気に触れるだけで電流が走るほどの感度を獲得していた。
「あぁっ! 擦れるッ! 空気で擦れるだけで、イっちゃうッ! 敏感になりすぎてるぅッ!」
ルミナは腰を浮かせた。
大きくなりすぎたクリトリスが、自身の太ももの肉に触れるたびに、強烈な快感が脳を直撃する。
常にオーガズムの寸前で寸止めされているような、狂おしい焦燥感。
「すごいな。魔神の器として、感覚器官までもが進化している」
ゼノスは指先で、勃起したクリトリスをピンッと弾いた。
「ヒィィィィィィッ!!?」
ルミナは海老反りになり、手術台の上で跳ねた。
たった一撃。デコピン程度の刺激で、彼女は瞬時に絶頂に達した。
ブシャアアアアッ!
尿道と膣口から、潮が激しく吹き上がる。
同時に、肥大化した胸からも母乳が噴水のように撒き散らされる。
腹の中の『聖杯』もドクンと跳ね、内側から子宮口を突き上げる。
「イくッ! イくイくイくッ! お腹重いのに! おっぱい痛いのに! クリちゃん大きくて、イキっぱなしぃぃッ! アヘェェッ♡」
ルミナは壊れた。
妊婦のように膨れ上がった腹。
牛のように肥大化し、ミルクを垂れ流す乳房。
そして、卑猥に勃起し、震え続ける巨大なクリトリス。
その全てが、ルミナ・フォン・エスティアという聖女の残骸であり、新たな「魔神の家畜」の誕生を告げていた。
「……ご主人、様……」
「なんだ?」
「身体……すごいです……全部、熱いです……」
ルミナは涎を垂らし、トロトロになった瞳でゼノスを見上げた。
彼女の手が、無意識に巨大なクリトリスを弄り始めている。
「お腹の赤ちゃんが……もっと感じろって……言ってます……」
「ほう?」
「おっぱいも、クリちゃんも……もっといじめて……もっとすごい汁、出せって……うずいてますぅ……ッ♡」
彼女の脳は、この身体の変化を「進化」だと受け入れた。
醜い? 汚らわしい?
そんな感情は、溢れ出る脳内麻薬の洪水に流された。
今の彼女にあるのは、このグロテスクで機能的な肉体を、主人に使ってもらいたいという強烈な奉仕欲求だけ。
「ふッ、貪欲な雌だ。だが安心しろ。餌ならいくらでもある」
ゼノスは拘束具の解除ボタンを押した。
ガシャン、カシューッ。
手足のロックが外れ、ルミナはぐったりと手術台の上に崩れ落ちた。
起き上がることはできない。
膨らんだ腹が重く、巨大化した胸が邪魔をし、そして股間の敏感すぎる突起が少し動くだけで快楽の信号を送り続けるため、まともに力が入らないのだ。
「今日は休め。明日からは、その新しい身体の『試運転』だ」
ゼノスは冷酷に、しかし満足げに告げた。
「お前のその腹で、ライバルも、救出者も、すべてを飲み込み、養分に変えるんだ。……できるな?」
ルミナは震える手で、自身の膨らんだ腹と、濡れそぼった巨大な乳房を抱きしめた。
ドクン、と中から押し返される感触。
ズキズキと疼くクリトリスの熱。
彼女は、聖母のような、しかし完全に狂気に染まった淫らな笑みを浮かべた。
「はい……産みます……私、この身体で、いっぱいイッて、いっぱい産みますぅ……♡」
聖女は死んだ。
ここにあるのは、魔神の揺り籠。
世界を滅ぼす災厄を孕み、自ら進んで快楽を貪る、美しくも醜悪な「肉の母体」だけだった。
(第3話 完 / 第4話へ続く)
聖女の肢体は冒涜に濡れて ~魔改造と触手による福音(エウアンゲリオン)~ 深海馨 @carpwr80
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