第3話

そんな感動的な話でさえも台無しにしてしまう。


それでも少しほのぼの出来るのはティータイム


俺はこの世界でヤマネコに拾われて、住み込みで働いてる。そのくせ、任される仕事は給茶だけ


(給茶とは、もてなす為にお茶を出す仕事。

前の世界では、会社での話し合いを円滑にする為にしてたっけ…)



シャロル様もそうなのだが、俺がお茶を振る舞う事になるに至って、沢山練習を重ねた。

それもこの世界のお茶が特殊で、お茶を入れる事がこの世界の住人を悩ませてるらしい。


・まずは香り合わせに、選り好みしたものを日光に当てる。(日向ぼっこのイメージ)

・焙煎して、少し果物や香辛料を加えたりする。

・その後は、花蜜に漬けて月光に晒す

・そして、風通しの良い場所で数時間保管。

・それから熱々の湯と共にポッドへ入れてから10秒後にカップへ注ぐ


特殊というより面倒くさい。

こんな長ったらしい工程の末、ようやく飲んで貰えるのだが、これが本当に…



尾を左右にパタパタ振り、耳を伏せて低く唸る

「―――なんッだ、この不味いものは!!」



一際大きな声が店を揺らした。

店の品物である時計の振り子は大きく振れるし、

ランプの火は消えそうになる。

食器棚は扉をばたつかせるし、

勿論、仕舞われた食器もガタガタと言う。


これが俺の第一回目

少し飲んでみたけど、人間の俺には果物の味がしただけだった


そんなスタートだった給茶も、今では少し上手になった気がする。


店主も姪のお嬢様も"流石は同じ血筋"というように相変わらず俺の出す茶を不味いという


姪っ子の方は仕草が表にあまり出ないから分かりにくいけど、言葉では不味いとはっきり。


逆に叔父の方は言葉も態度も大きいので、全身で不満を表現した


(絶対認めて貰えるようになる…!)

決意を固めるも毎度こうなのだからやる気が削げてしまう


今日は久々に店の方を開けてみるらしい

この店は沢山の品物溢れかえっており、どの品物も持ち主を探している


(持ち主…見つかると良いな…)

淡い気持ちに胸を馳せてると、1人のお客様が…



「おはようございます。いらっしゃいませ!」



元気よく挨拶した。

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ヤマネコは少しお茶にうるさい 逢見 イロハ @Imi_12

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