第6話偽善の英雄
朝起きて、宿の外に出たら、何故か大勢の人に囲われていた。
「あんたは、俺たちの英雄だ!」
「え、いやちょっと、、、」
「いやぁまさか1人で怨霊を倒してしまうとはね。」
「あんたが倒してくれなかったら、この街はもうなかったもしれないしね。」
私は大声で叫んだ。
「ちょっと待ってください、なんでこんな大勢の人がここに集まっているんですか!」
本当に偶然戦ったならまだしも、本当は自分から周りを巻き込みに行ったので、英雄ではなく偽善者嘘つきの方が正しいかもしれない。
「そりゃぁみんな新しい英雄様の顔を拝みたかったからだろ。」
(本当になんでこうなったの…‥)
周りは新しい英雄の誕生にとても嬉しい様子だ。
「はぁ、迷惑なのでやめてもらっていいですか?」
そう言って私はその場を離れた。
私は久しぶりにミルスさんのバーを訪れていた。
「ミルスさーん、どうしたらいいですかぁ。どこに行っても英雄という風に扱われるんですけど。」
「仕方ないですねぇ、街が怨霊に襲われかけた時に助けてくれたのがあなたですから。ほとんどの人が英雄と思ってしまうのも不思議ではないですよねぇ。はい、頼まれていたエールですよ。」
「ありがとうございます。やっぱりエールは美味しいですねぇ。」
「気になっていたんですがそのお面でどうやって飲み食いしているんでしょうか?それ外せないんですよね?」
「これは、外せないけど抵抗はできるんですよね。こうやって引っ張ると戻ろうとするけど食べ物はこの隙に入れてます。」
「これから先どうするんですか?この街じゃ不自由が多すぎて自由に動けないでしょうに。」
「とりあえず明日ここを経って、王都を目指すつもりですよ。前も言ったかもしれませんが。」
「それじゃあおまじないをさせていただきますね。汝が選ぶ道が後悔のないものであることを。」
「ご来店ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」
「またこの街に訪れたら利用させてもらいます。」そう言って私はルヴァンシュの待つ宿屋に向かった。
私はルヴァンシュの手入れをしながら、ルヴァンシュに尋ねた。「戦っている最中に1年ごになったら再生能力が使えるようになるってどういうこと?」
「そんなことよく覚えてるね。いいよ君の強さにも繋がるし少し怨霊について話をしようか。
怨霊とはほぼ憎しみの塊しかし、憎しみで仮初の肉体を作っているが、1年後ぐらいに自分の憎しみと同調していく。自分の体とリンクさせることで、憎しみを使って、体を修復できる。またルヴァンシュのように憎しみを攻撃力に変えることもできるし、爆発的な身体能力も手に入れる事ができる。
けれど、勿論リスクもある自分を強化するはずなのに低確率で自分の体を傷つけてしまう。
「ってところだねメリットも多いけどデメリットも大きい、だからほとんどの怨霊との戦い方は、相手を消耗させて、自傷を待つ、自傷したところで、一気に畳み掛けるんだ。」
「使うタイミングが難しそうだね。まぁ極力使わない方針で行きたいけど。」
「それが賢明だと思うよ。それで、怨霊化してるのがバレたり、戦闘不能に陥った場合本当にまずいからね。」
(本当にバレる事自体がまずいから、極力使わないようにしよう。)そう言って私は心に誓った。
「そういや、君はいつこの街を出発するんだ?」
「明日には次の街に向けて歩き出すつもり。この街は不便になっちゃったからね。」
「そういや新聞を見たけど、君のそのお面の姿が描かれた新聞が色々な人に売られてたよ。見出しはえーと、そうだ!『新しい英雄様の誕生』って書いてあったと思う。」
「ちょっとやりすぎたかなぁ、、、もっと自重するべきだね。よしちょっと下に行ってご飯食べてくる。」
「行ってらっしゃい。あー僕もご飯とやらを食べてみたいな〜。」
「イシュディア殿、イシュディア殿はおられるか?」
私が美味しいご飯を食べていると店の中にとても偉そうな御仁が入ってきた。
「私がイシュディアですが、どうかされましたか?」
「いや、この街の領主様が貴方様のことを呼んできて欲しいと頼まれておりまして。領主様のもとに来ていただくことって可能ですかね?」
(いやー面倒なことになりそうだけど、後ろ盾とは言わないけど、今は信用が欲しいんだよね〜。)
「わかりました。ただし条件付きの面会でいいでしょうか?」
「条件付きとは?」
「私の持っている武器、ルヴァンシュを領主邸で携帯することの許可が降りれば、私は面会に応じますよ。」
「そんな事が通ると思っているんですか!?領主邸で暴れられるかもしれないのに!」
「それではこの話はなかったということに。」
「くっ、わかりました。領主様が何があっても連れてこいとおっしゃっていたので、その条件付きで、面会を設定させていただきます。ご希望の日程とかはありますか?」
「できれば今日がいいです。明日にはこの街を経って、王都へ行くつもりなので。」
「わかりました。今日の夕方は大丈夫でしょうか?」
「わかりました夕方、領主邸に向かわせてもらいます。あと1つ聞いてもいいでしょうか?」
「はい。なんでしょう?」
「領主邸ってどこにありますか?この街の事がまだよく分かってなくて。」
「この宿屋を出て、まっすぐ進むと、大きな館が見えます。そこが領主邸です。門番がいると思うので、この招待状を見せると、通れると思いますので。」
「わかりました。両者にとって良い対談であることを願っています。」
そう言って私は部屋へ、使いの者は領主邸へ帰って行った。
私は部屋に帰ってから下であったことを話した。
「思い切ったことをするね〜。普通、武器を持って領主邸に入れてくれとはなかなか言えないんだけどね。」
「まあ、今この街の英雄だけど、相手からしたらとんでもない力を持っている、恐怖対象だからね。怖がるのは当然じゃない?」
「そういやさー戦いのことなんだけど、戦ってみてどうだった?」
ルヴァンシュが突然話を変えてきた。
「いやぁ、初めてだったから、戦ってみて、勝てる!とは思えなかったし、自分が強いとも思えなかった。あと、ルヴァンシュの戦い方をみて気づいたけど、私の攻撃は無駄が多すぎる。特に攻撃する前とか、無駄のせいで攻撃までの時間が長くなっていることに気づいたから、そこの改善かなぁ。あと、怨霊の特性は知ったけど、戦いのことは何も聞いてなかったしね。」
結局怨霊の特性とか話を森でしてくれてもよかったんじゃないの?
「まぁ、あれは見ていてとても面白かったね。教えてくれてもよかったていうけど、普通はあんなことを教えてくれる人なんていないしね。いい経験になったんじゃない?自分の強さも分かったと思うし。」
けれどルヴァンシュは内面少し驚いていた。
本当は君は勝てないと思っていたんだけどね。街の人の助けを少し、借りて怨霊を倒そうとしていたんだけど。本当はここで、勝てないことをバネにもっと強くなってもらおうと思ってたんだけどね。嬉しい誤算なのかわからないな。まあ僕は楽しめたり、美味しい憎しみゴハンを食べられたらいいけど。
そう思いながらルヴァンシュはイシュディアと領主邸に何を着ていくかを相談していた。
夕方
「招待されたイシュディアと申します。こちらが招待状です。」
私はそう言って招待状を渡した。
ちゃんとしたスーツ姿を着てイシュディアは領主邸にきていた。仮面をつけているので周りから表情は見られないがイシュディアは内面とても緊張していた。
(服装とかって大丈夫だよね。身だしなみはきっちりできてるよね。)
イシュディアは本当に心の中でずっと自問自答していた。
「では、門を開けますので少々お待ちください。」
そう言って門番は門を開けた。数分歩くと
気配を殺していたので気づかなかったが、どこからかメイドさんが現れた。
「それでは、案内しますのでついて来て下さい。」
(さて、鬼が出るか蛇が出るか。)
私はそう思いながらも、案内されるがままに領主邸に入って行った。
「ようこそおいでなさりました。イシュディア様。」そう言って領主は私を出迎えてくれた……
復讐に生きる〜憎しみに包まれた少女〜 @-NOCHES-
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