第5話 軌道投入と“在庫”

それから三ヶ月後。

そのベンチャー企業のロケットは見事に軌道投入に成功し、ニュースは大々的に報じられた。

ちょうどその日、智子さんはいつものようにコンビニのレジに立っていた。店内放送で流れるニュースのコメントには、社長の言葉が入っていた。


──「地球環境を“補充”する技術を目指します」。


智子さんは思わず微笑む。

自動ドア越しに見える空へ、静かに心の中で語りかけた。


「地球の在庫、減らさないでくださいね、若い社長さん」


その瞬間、ニュースを聞いていた子どもがふざけて声をかけた。


「ねえおばちゃん、地球あります?」


智子さんはにこやかに答える。


「地球、ございますよ~。在庫一個だけです。みんなで大切にしてくださいね」



【完】


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地球あります キャルシー @krsy

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