第4話 事の顛末

 うわっ、マジ最悪。よりにもよってここで、うにとあきこの目の前で私の父親に会うなんて。

 ただここはうまく立ち回るしかない。そうしないと……私がうにたちのターゲットにされるかもしれない。つまりは一軍陥落だ。考えろ、考えろ……うまく切り抜ける方法を。

「いろは、ここにいるみなさんは友達か?」

そう思っていると父親が口を挟んでくる。

「……うん」

「そうか。じゃあお父さん行くからな」

「どこに!?」

 多分端から見れば、私の感情は分かりやすかっただろう。その言葉を発した時のもか、ゆな、いやそれだけでなくうに、あきこのリアクションがそれを物語っている。私は怒っていた。今にも噴火しそうであった。

 もちろん私は父親と仲良くはない。はっきり言って顔も見たくない。でも、「行くからな」は無くない!?仮にも私はあなたの娘。友達もここにいることだし、挨拶ぐらいしても良くない?家の外で出会ってすぐ去っていくなんて、無視するより人間ができてない!私はそんなことを考える。

「いや父さんな、スキマバイトをしてるんだ。今から行かないと遅刻する。あと帰ったら話をするから、今は友達と楽しんでな」

……えっ!?

 父親から、ちょっと意外な返答があった。


 その日の晩。父親、お母さん、私の三人は久しぶりに同じ食卓を囲んでいた。これは我が家では「事件」と呼んで良いことかもしれない。

 そして色々なことが分かった。スキマバイトの件についてはお母さんも知らなかったこと。お母さんも、お父さんがどこか遊びに出かけていると思っていたこと。あと、お父さんがスキマバイトを始めていた目的。

「母さん、いろは、うちはちょっと家計が苦しいだろ?だから少しでも足しになると思って始めたんだ。今は便利な時代で、実際ある程度の金額が貯まっている。ただ……ちょっと恥ずかしくて、二人には黙っていたんだ。ごめんな」

 そう照れるお父さんの顔は、何だか可愛らしい。

 あと、お酒に関してはお母さんと私に謝ってもらった。お父さんは、さすがに酒癖が悪い。だから禁酒とまではいかないけれど、節制はして欲しい……お母さんがそうお父さんに伝えると、「分かった」とのこと。

 あと、私もお父さんに謝った。そう、それは尾行の計画についてだ。ただお父さんは、

「気にしてないよ。むしろいろはの友達に会えて嬉しかった」

とのこと。

 私はちょっと勘違いをしていたようだ。お父さんはとっても家族思い。ただ、不器用なだけ。

 これからはもっと何でも話せると良いな、私はそう思った。

「あと……、もかとゆなにもこのこと、伝えておかなきゃ!」

夕食の後、三人でグループ通話をした。もちろん楽しかった夕食の話を二人には伝えた。


※ ※ ※ ※

 「いろは、もか、ゆな、おはよう!」

「おはよう!」

 翌日。うにとあきこが教室に入るなり私たちに挨拶してきた。

今日のうにはいつにもなく機嫌が良いらしい。なんと新しい彼氏候補ができたそうだ。……昨日のグループ通話で、ゆなから報告があった。

「そう言えばさいろは、昨日いろはのお父さんと会ったよね?お父さんとは仲良いの?」

その質問に、私は自信を持って答える。

「うん、仲良いよ!」

 (終)

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花火 水谷一志 @baker_km

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