第6話 蛇足の由来2

 それぞれが木の枝を持ち、地面に蛇の絵を描き始めます。


 やがて、一郎が最初に蛇の絵を完成させました。

「へへーん、どんなもんだい、結構上手く描けただろう? コレで酒はオレの物だ」


 ほかの九人は一応は絵を完成させようとして、手を止めずに続きを描いて居ます。


「お前ら、絵を描くのが遅いな。俺なんか、蛇に手足も描いちゃうもんね」 

 調子に乗った一郎は自身の描いた蛇の絵に手足を付け加えました。


「一郎の描いた絵は蛇じゃない。だから酒を飲む権利があるのは俺だ」

 蛇の絵を描き終えた二郎が宣告しました。 


 一郎が描いた絵を見た四郎が真っ青な顔で震えています。

「今、思い出したんだが、数ヶ月前にそこのスグソコ山に山菜を採りに行った時に、そんな蛇を見たんだよ。体長は五メートル以上、胴回りは俺の胴体よりも太かったから少なくとも一メートルはあったと思う。それでトカゲみたいな手足が生えてたんだ」


 「仮にそんな化け物が本当にいたとしても、ソイツは蛇じゃないよな。だから、今回の勝負の結果には何の影響もない」

六郎の発言。


「影響は無いけど、そんな化け物放置しておいて良いのか? 村に降りてきたら、大変な事になるぞ」

七郎の発言。


「俺達がその化け物を退治したら、皆で酒が飲める位の金一封が貰えるんじゃないのか」

八郎の発言。


「金一封どころか、値千金、金百封位貰えるだろうよ」

九郎の発言。


「そんじゃ、早速皆で化け物退治に行くぞ」

 十郎の発言。



 突然、一郎が描いた手足蛇の絵が緑色の光を放ち、実体化しました。

 

 驚く一同。

 

 手足蛇は体長六メートル程の大きさになり、一同を一瞥してから、東の方角に移動しました。


「なにがなんだか分からん、一体どうなってんだ?」

一郎の質問に誰も返事が出来ません。


「あんなのが村人を襲ったら、どんだけの被害が出る事か分からないぞ」

四郎の発言。


「俺達でやっつけるしかないだろう」

五郎の発言。


「そうだな、やるしかないな」

六郎の発言。


「それはそれはとして、俺の酒は何処だ?」

二郎が酒を探しています。




三郎がゲップをしながら言います。

「いやー、皆が話してる間に俺がいただいたよ。ゴッソさんでした」



「ふざけやがって、蛇の化け物の前に馬鹿者を退治する必要があるな」


「そうだ、皆でやっちまえ」


 集団リンチが始まりました。


「殴れ、殴れ」


「ボコせ、ボコせ」


「やっちゃえ、やっちゃえ」


「赤ん坊からやり直せ」


「おりゃー、うりゃー、どりゃー」


「味噌汁で顔を洗ってこい」


「道徳を学び直せ」


「おりゃおりゃおりゃおりゃ」


「一昨日来やがれ」





集団リンチが終わりました。


「どうだ、反省したか? 何か言う事があるだろう」

二郎が促します。


「今は一杯のお茶が怖い」

三郎は悪びれもせずに言い放ちました。



「この野郎、全然反省してやがらねぇ。もう一回懲らしめてやる」


「落語だろ」


「又、皆でやっちまえ」


「オー」


集団リンチの第二弾が始まった。




 十分程のリンチが続き、一同に違和感が発生した。


「なぁ、なんで、コイツ、無事なんだ? 無抵抗で十分以上攻撃されてるのに、傷跡一つ無いって可笑しいだろう」


 攻撃は止まっている。


「オヤオヤ、気づいちゃったか。生兵法は大怪我のもと、馬鹿なままなら長生き出来たのに」

 三郎は立ち上がり、右手を額に当てて気を溜めて、解き放つ。

「風刃斬」


 三郎の術に拠り、九人の召使いは絶命した。


「本気になったら、暴力で国取り位簡単だけど、それじゃあ面白くも何ともないね。手足蛇は放置しといた方が面白そうだ。この後、どうしよっかな? 商才で国取りに挑んでみようか」


 この男が、後に最強の矛と最強の盾を開発するのだが、ソレは又べ別のお話です。


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「皆、分かってると思うけど、考察の部分からは完全に蛇足だから。その意味では今回は蛇足の使い方は正しいな。皆針釘崎に拍手を。針釘崎は先生の横で立ってなさい。今後はこの手の話は授業中にするんじゃなく、カクヨムに投稿しなさい」

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針釘崎光流の行動 桃月兎 @momotukiusagi

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