龍神英雄譚 靈皇 世界用語・百科

上古七魔

上古七魔（じょうこしちま）

魔族を統べる七柱の邪なる存在。

彼らは幾度となく神州大陸へと侵攻し、

その悪意は今なお世界を蝕み続ける。

七魔の頂点に立つのは上古魔神·劫（コウ）。

その下に四邪神、さらに二柱の邪王が続く。

上古魔神——劫（コウ）

劫は、本来は龍神·辉（キ）であった。

古神無溯（ムソ）の腐蝕を受け、

最初の悪魔へと堕ちた存在である。

さらに、辱浊（ジョクジョク）と虫族の一部を除き、

ほぼすべての悪魔は劫によって創造された。

龍の姿を失った劫は、

天を衝くほどの巨躯に変じ、

全身を地獄の業火に包まれている。

彼の体内には古神の“始原の意思”が巡り続け、

肉体と神経を絶えず苛む。

それをわずかでも紛らわせる手段は、

破壊し続けることのみ。

劫は憎悪の化身であり、

自らすら憎む。

恋敵であった兄弟烬（ジン）への憎悪はとりわけ深く、

古神戦争のさなか、烬が何も為さなかったこともあって、

劫は誓った。

──世界そのものを贄として、

烬へ数倍の苦痛を返す、と。

四邪神の一柱　背信を司る——熬殇（ゴウショウ）

熬殇は、劫の“脳”から分離して生まれた邪神である。

裏切り・虚偽・不忠の象徴であり、

肉体の破壊よりも精神の腐蝕を好む。

彼は忠義ある者を迫害し、

裏切り者には祝福を与える。

他者への憎悪を刺激し、

人と人を争わせ、

戦争を生み出す闇の源でもある。

その姿は、

獣王の獅子と鳥王の鳳凰が融合した異形。

額には曲がりくねった邪角、

背には暗翼を広げる。

かつて人間の王朝に潜入し、内乱を誘発。

その後、司馬家の先祖に封印された。

しかし熬殇の霊体は消えず、

灵帝（レイテイ）の内部に潜み続け、

その意志を蝕み続けている。

意志の弱い者は、

彼の囁きに触れた瞬間、

器に堕ちる。

四邪神の一柱　貪欲と渇望の巨口——孽馋（ゲツタン）

孽馋は、劫の“口”が変じて生まれた邪神である。

貪欲・嫉妬・飢餓の象徴。

彼は欲望を煽り、

満たされぬ渇望で心身を荒廃させる。

姿は巨大な猿型の怪神で、

目鼻耳すべてが“口”と化している。

上半身の大口は笑い声を、

下半身の口は地獄の咆哮を上げる。

夏侯家により封印されたが、

飢餓は止まることなく蓄積し続け、

もし復活すれば

過去の数倍の害悪となるとされる。

四邪神の一柱　暗黒深淵の母胎——辱浊（ジョクジョク）

辱浊は、生まれながらの古神である。

暗黒物質と負のエネルギーが凝り固まり、

“深淵の母胎”として形を得た。

古神戦争では虫族の母体を担い、

戦後は魔族に組み込まれた。

七魔唯一の“女性的構造”を持ち、

乳房のような器官と粘液の触手が全身を覆う。

辱浊が存在するだけで、

周囲は暗黒と混沌に呑まれ、

世界の闇そのものが彼女の影響と言われる。

南宮家に封印された後も、

南海一帯は混濁し、

汚濁は今も広がり続けている。

四邪神の一柱　痛苦と虐殺の暴君——霄戮（ショウリク）

霄戮は、劫の“角”が変じた邪神である。

痛苦・怒り・殺戮の具現。

敵が尽きれば仲間の魔族すら殺す、

純粋な暴虐の化身。

三つの頭蓋と二対の腕を持つが、

下半身は存在しない。

右腕は“切断の鎌”、

左腕は“破壊の鉤爪”。

その呪いは人間にも影響し、

他者を傷つけることで快楽を得る心、

暴力に依存する心は

霄戮の残した闇とされる。

魔族戦神——疤蛮（ハバン）

疤蛮は、かつて神龍族最強の戦士であり、

辉（キ）の忠実な腹心であった。

古神戦争で首を断たれながらなお戦い続け、

劫が蘇ると同時に“邪王”として蘇生した。

策略を嫌い、

純粋な武力のみで敵を粉砕する。

巨斧“地裂戦斧”を振るい、

倒した強者の首を飾る。

四邪神より格は下だが、

戦闘力は七魔でも屈指。

死者の王——孤弧（ココ）

孤弧は原始龍神·煌（コウ）に育てられた神龍族の勇士であり、

問天尊（モンテンズン）の実兄。

神器·玄心剣（ゲンシンケン）を授かり、

生命創造の力を宿していた。

だが傲慢ゆえに熬殇の策に陥り、

魂は玄心剣ごと腐蝕された。

肉体を失った孤弧は亡霊となり、

死者の軍勢を操る邪王へと変じた。

その亡霊の数は、

他の六魔軍勢の総数をも超える。

冥界とは、

孤弧が統べる亡者の王国そのものである。