三途の川に佇む、切なくも温かい「最後の食堂」

第四次世界大戦後、ほとんどの命が絶えた世界。三途の川すら閑古鳥が鳴く中、元獄卒の赤鬼が営む「ヨモツヘグイ屋」に、一匹の痩せ細った猫・コタローが辿り着く。
「メシくれ!いっぱい!」
——飢えて母親すら食べて生き延びたコタローに、店主は温かいスープを振る舞う。黄泉戸喫を食べた者は二度と此岸には戻れないが、それでもコタローは夢中で食べ続ける。
日本神話の要素とディストピア的世界観が融合した、独特の舞台設定。救いようのない悲しみの中に、確かに存在する優しさと温もり。「またな」という別れの言葉が胸に沁みる。
静かに、でも確実に心を打つ、珠玉の一編です。

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