見る人によって、姿を変える怪異
ある人からは小さな女の子に見え、ある人からは鎧の騎士やエイリアンに見える
なぜ姿が変わるのか?
連作短編により、怪異の謎が少しずつ解き明かされていくお話です!
更にこの話の特徴としてすごいのが、怪異側の視点も混ざってるところ!
普通のホラーであれば、怪異は観察側の視点からしか語られず、その内面や行動理念は推測するしかありません
しかし、本作では怪異セツナの視点が時折混ざるために、その狂気的な思考がダイレクトに表現されていて、読むだけでぞっとします!
ナギサという少女に、異常に執着してるセツナ
その想いは純愛なのか、それとも猟奇的な執着なのか
セツナの視点に触れたとき、あなたは自分が彼の恐ろしくも純粋な食卓に並べられているような錯覚に陥るかもしれません
怪異の謎に迫るミステリー的なホラーが好きな方、狂気がじっくりと描写されるサイコホラーが好きな方、両方にオススメです!
本作に登場するあやかしは、「見る者によって姿を変える」存在です。
ある者には怪物に、ある者には死神に。
そして主人公・凪咲の目にだけは、それが優しく微笑むサンタクロースとして映ってしまいます。
受験の重圧、冷え切った家庭環境。逃げ場を失い、ただ「解放」を祈り続けていた彼女にとって、その存在は確かに救いでした。
そして、その祈りが、本当に叶ってしまう。
あやかし・セツナの行動は、一貫して凪咲への「愛」に基づいています。
風邪を治すためのスープ、彼女を苦しめる存在の排除。すべてが、彼女の幸せを願っての行為。
しかしそれは、人間の倫理や価値観とは完全に断絶した、人外の純粋さが生む狂気でもあります。
凪咲の視点では奇跡ですが、周囲の視点では惨劇。
このズレが、非常に巧みで、読んでいて凄く怖いですが、思わず読み進めてしまう作品です!
その都市には古くから、『見る者によって姿を変えるあやかし』の存在が言い伝えられていた。
ヒロイン、凪咲は、季節外れの「サンタさん」を発見する。
でもそれは、あやかし。
あやかしは、自分をサンタクロースに見立ててくれた凪咲を気に入り、恋をする。
でもそれは、人ならざる恋。
相手を喰らいたくなってしまうほどの、狂気の愛であり、血にまみれた純愛である。
その愛の純度がすごすぎて……。ホラーです。
凪咲さんがとにかく可愛いヒロインです。あやかしだけじゃなくって、誰でも惚れてしまいそうな可愛さ。
物語は、いろんな人が『見る者によって姿を変えるあやかし』に関わってゆく、オムニバスのような話の集まりです。
でも最後には、その話たちも一本に収束しそうな気配がしています。
『鏡写しのサンタクロース』は、現実と幻想が絶妙に溶け合ったダークファンタジーです。なぎさや美沙、穂乃果といった登場人物たちが、それぞれの「家族」や「自分自身」と向き合う姿は、とてもリアルで胸に迫ります。
物語の中心には、「鏡」や「サンタクロース」という日常にも馴染み深いモチーフが据えられていて、そのどちらも、夢や願い、そして本当の自分とは何かを静かに問いかけてきます。都市伝説や怪異に振り回されながらも、自分だけの選択や成長を見つけ出そうとする少女たちの心の葛藤や、痛み、そして時折差し込む温かさが心に残ります。
現代社会ならではの孤独や承認欲求の描写もとてもリアルで、誰かと比べてしまったり、自分を見失いそうになる読者にもきっと響くはず。家族や自分の居場所について悩んだことがある人、ダークな雰囲気や人間ドラマが好きな人におすすめしたい一作です。
受験や家庭の息苦しさが「サンタ」といういかにも明るいテーマを軸にして、ぞっとするほど鮮やかに反転させています。
雪、椿、鏡、そして“プレゼント”――日常の小物が少しずつ歪み、読者の足元を静かに崩していきます。見る人で姿が変わる存在や、願いが別の形で届く仕掛けが巧く、章ごとの視点の変化も飽きさせません。
重さのあるテーマですが、物語としての引きが強いので、心理ホラー・都市伝説好きはもちろん「短編連作で世界観に浸りたい」人にもおすすめです。
特に、優しさが裏目に出る瞬間の描写が的確で、誰かを守りたい気持ちが恐怖に変わる過程に説得力があります。
怖さがじわじわ来るタイプが好きな方にお薦めしたいと思います。
冬の宵闇。
受験と家庭の重圧に押し潰されそうになりながら、
少女は道角で 「サンタクロース」に出会う。
「春はじきに来る。君の願いも、じきに叶うよ」
曖昧に微笑む男。
その言葉から、奇妙な現実が始まってしまった。
進学、家族、恋心。
平凡な日常のはずが、ふとした瞬間に軋み始める。
鏡の端に映った少女の横顔。
弁当箱に紛れ込んだ真紅のリボン。
消えた気配。見つめる視線。
誰にも説明できない違和感だけが増えていく。
少女は徐々に知る。
「愛」と 「願い」と 「祈り」は、ときに残酷な形を取ることを。
あの日、道角で出会ったサンタクロースが語った
「プレゼント」が、何を意味していたのか。
現実と幻想の境界をそっと撫でるように歪めながら、
美しく、静かで、ぞっとする物語が幕を開ける。