『赤ちゃんが総理ってまじかよ!べす神(0歳)政権、始動。』

べすこ

第1話 「泣き声で国が動く日」

日本は限界だった。


物価はうなぎのぼり、

政治家の不祥事は毎週のように話題になり、

国民は「またかよ…」とため息をつきながら、

カップ麺の値段を見て天を仰いでいた。


そこに、空気の裂け目が開いた。


――ぴかっ。


議事堂の天井が白子雲みたいに光り、

ふわふわした“何か”がスローモーションで降りてくる。


それは、

ぷにぷにほっぺにミルクの香りをまとい、

世界の重心がそこへ集まっているかのような存在。


赤ちゃん総理、べす神。


落下というより、

“着床”するように総理席へぽふっと着座した。


「今日からワタチが総理やるのね〜〜〜」


議員席、全員固まる。




一番に反応したのは、

スーツの肩パッドが怒りで膨らむ男。


そう、

“不倫で炎上 → 改心アピール → 再炎上 → 涙の謝罪会見 → クリーン化運動中”が人生になってしまった

村岡リュウジ議員(37)。


「ふ、ふざけるな!国政のトップに、赤ちゃん……!?」


目をひんむきながら机を叩いた瞬間、

べす神が「ふぇっ」と口をへの字にした。


その0.2秒後。


「す、すみませんでした!!!」

村岡くん、土下座。

国会史上最速のひれ伏し。


(べす神の泣き声は“議員のブチ切れエネルギー”を全部吸い取る効果がある)



議場後方から、

スーツを着た巨大な“吸引力の化身”が現れた。


バキューム光一(43)

通称「汚職もゴミも吸える最強の掃除屋」。


「へへへ、総理が来ちまったか……!

 よし、まずはこの空気……吸っとくぜ」


ゴッ!


光一が議場全体のネガティブ空気(と、村岡の黒歴史)を

強力な掃除機で全部吸引した。


「おい!俺の“イメージ低下の空気”を勝手に吸うな!」

村岡くんがキレる。


「吸っとかねえと、また炎上すんぞ〜?」

「余計なお世話だ!!!」


議場に謎の漫才が生まれる。


べす神はぽよんと笑う。

その瞬間、光一の掃除機のランプがピカピカに光り、

議場全体の空気が爽やかなシトラス系に変わった。





場違いなほど派手な着物で、

議場の隅に降り立つ怪しげな男。


政治占い・霊視コンサルタント

葛原 美麗


実はどの政党にも非公式に出入りしている怪人物。

総理に赤子が来たと聞き、即参上した。


「ふむ……この赤子……八百万の魂を背負っておりまする……!」


美麗が“見える”発言をした瞬間、

議員たちの背筋がピーンと伸びる。


「国の未来、見えますか?」

村岡がすがるように聞く。


「見えます。

 あなたの未来も……ね」


「やめてくれぇぇぇ!!!」


村岡が震えだすと、

べす神が指をちゅぱっと吸った。


その動作を見た美麗は震えながら宣言した。


「この子……国家再生の鍵……!

 “泣き声ひとつで日本の運気が跳ね上がる赤子”です!!!」




「広報室のギャル」ミナミちゃん登場。


「ちょ、赤ちゃん総理ガチかわなんだけど!?

 国会映えするじゃん!カメラ回すね!」


広報部の新人ギャル、ミナミちゃん(23)が

スマホを構えながら走ってくる。


「ミナミ、今撮るな!」

「だってこの赤ちゃんバズるって〜。

 “#総理ベビー”で1000万再生狙えるよ?」


政治をTikTok化しようとする野心がギラギラ。


べす神はミナミのイヤホンコードをむにむに触りながら

笑っている。


猫さんはその様子を一瞥したあと、

静かにスッと総理の横に立った。





官房長官・猫さん、宣言する。


議場は混乱、怒号、笑い声、霊気、吸引音が混ざるカオス。


だが猫さんは一歩前へ進み、

静かに言った。


「本日より、べす神総理のもと、

 新内閣を発足する」


その声が波紋のように議場へ広がり――


全員、黙る。


赤ちゃん総理は、

ぽよんと両手をあげて、こう言った。


「まんまのまえに、このくに、なおすのね〜」


日本の命運は、

この日の“赤子の宣言”から大きく動きだす。


議場の外では、

国民のスマホに“速報”が流れ始めていた。


【速報】新総理は赤ちゃん。

政権、泣くか笑うかの瀬戸際。






つづく

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『赤ちゃんが総理ってまじかよ!べす神(0歳)政権、始動。』 べすこ @minota0212

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