1章 電車で隣になる彼女 1節

 僕は朝早くの街並みが好きだった。

 中学校に通う時も一番早くに学校に着いて、友達がくるまで一人で本を読むというようなことを日課にしていた。

 だが僕の親はどちらかというと朝が得意な方ではないため中学の頃から朝は自分で朝食を用意していた。母から何度も

「朝食、用意出来なくてごめんなさいね」と謝られたが、

「自分が好きでやってることだし気にしないで」、と言って親には無理に起きてもらわず寝たままでいてもらっている。

 しかし、朝親とも会わずに学校に向かっているため、必然的に朝は人と会わず学校に向かっていた。

 その習慣は高校生になっても変わることなく入学式に家族で向かった日以外はいつもこの5時40分の誰一人同じ車両にいない電車に乗っていた。

 高校に入学して2ヶ月と少し過ぎた頃、だんだん気温も上がってきてはいるがまだ涼しく長袖一枚がちょうど良い気持ちの良い季節だ。

 また、朝でも日が登っていて明るい季節になった。

 僕は電車内でスマホなどの電子機器を朝っぱらから使うのが嫌で朝の時間帯はよく本を読むのだが、いつも通り電車に乗り込んで鞄から本を取り出そうとした時あることに気づいた。

 自分以外の人がその車両に乗っていたのだ。

 少し見ただけで目が奪われるような黒い髪に整った容姿、力を入れたら折れてしまいそうなほど細く綺麗に伸びた指で本を読んでいる。

 僕はいつも座っていたロングシートの一番端の席に座って本を取り出した。

 本を取り出してページを開いたがあまり集中ができない。

 普段人がいないのに突然人がいて驚いているからだろう。

 目線の端で彼女を見る、本を綺麗に伸びた指で1ページめくった。電車のガタンゴトンという音以外にペラっという音が静かに響く。

 たまたま登校時間が被ったのだろうか?しかし、そのたまたまの1回で僕は少し彼女に興味を持ってしまったが今後は会う機会はないだろうと思っていた。

 そう、たまたまと思っていたのだ。この時までは………


 ――――――――――――――


 いつも1人きりだった車両から彼女と同じ車両に2人きりになってから1ヶ月、7月になっていた。

 学校では高校初めての定期テストや模試、体育祭がおわった。そして外は先月までまだ長袖だったのが嘘かのような暑さだ。

「まもなく〜」

 いつものアナウンスが聞こえる。横にドアが開いて電車に乗り込む。

 (毎日いるな…)

 相手は気づいているのだろうか?

 単純に疑問に思ってしまった。学校のある日は毎日のように同じ車両に2人だけだがアチラからの視線はほとんど感じない。

 なぜ分かるのか?気持ち悪いと思うが電車に乗っている約45分間たまに彼女が目に入るからである。

 毎日同じ車両に、しかも2人きりなのだ挨拶出来るくらいにはなっておきたいと思うのは当たり前だろう。

 そこで明日話かけてみようと思った。しかし、僕は少し考え、それはやらないことにした。

 なぜなら彼女にとってこの時間の電車に乗ることは日常となっているのかもしれない。

 僕もこの時間の朝の日常を大切にしている者として突然話したこともない人に話しかけられたら気が合えば良いだろうが、制服から隣の高校の同級生というのは分かるが別の学校、それに加えて異性である。

しかも彼女の容姿は整っているため、ナンパされたと思って怖がられる可能性も無くはない。

 その結果一つ時間をずらすとなると、この時間帯なら早めたら始発、遅くするとしてもどちらも生活に2〜30分の誤差が出る。 

(そうなったら悪いな…)

 ここは俺ではなく友人に相談してみた方が良さそうだな、


 ――――――――――――――


 午前8時29分教室の生徒のほとんどは30分から40分にかけて行う朝読書の時間に備えて座っている。

 廊下からドタドタといった足音が聞こえる。ガラガラと扉が音を鳴らしてその隙間から一人の男子高校生が教室に入ってくる。

 「セーーーーーーーーフ」

大きな声が静かな教室に響いた。そう言いきったと同時にチャイムが鳴る。

「わ、ほんとにギリギリやったんかい!」

 クラスからクスクスと笑う声が聞こえる。その大きな声の主は肌が少し焼けた背の高い少年であり中学校の頃から計4年の付き合いになる友人、柏木かしわぎ 悠人ゆうとは僕に向かって歩いてくる。

「おはよ、いやーマジ危なかったわ〜目覚まし時計なったんやけどなんか単三電池抜いちゃってたわ」

 そう言って僕の隣の席に座る。どうやら目覚ましを止める際電池ごと抜いて目覚まし時計の息の根を止めたらしい。

 僕は一番後ろで窓側のいわゆる主人公席と呼ばれる席の一つ隣に座っている。遅れてきたコイツは窓から3つ目の席に座る。

「遅いし、もう読書の時間だぞ、静かにしろよな動きだけでうるさいってのに。」

「つめてーなぁ、まぁこの季節にはちょうど良いがな、本貸して。」

 遅れてきたうえ本も持ってきてないのか、まぁこいつはいつも忘れるからそれ用に1冊机に入っているのだが、いくら僕が読書趣味でも貸して貰う前提なら持ってこないようにした方がこいつのためか?とかを考えながら彼に本を渡し彼は「サンキュー」と小声で返してくる。はぁ、とため息をついて僕は本へ意識を向けた。


 ――――――――――――――


「なぁ、悠人相談があるんだけど。」

 朝読書も終わりショートホームルームを済ませて掃除の時間になった。

「なんだ?恋愛相談か?瑠衣が?」

「違う」

 疑問を重ねるなと思いながら答える。

「期待して損したわ、じゃあなんだよ。」

「勝手に期待するなよ、1ヶ月前に話したと思うがここ1ヶ月同じ車両に同じ人が乗って来るんだが気まずくて話しかけてみようと思うんだけどどう思う?」

「この前のって今日だけだと思うけど人がいたって話だろ?それに、同じって5時27分とかのやつだろ?同じ人が乗るのか?いつも1人って言ってなかったか?」

「1ヶ月前までは1人だったんだが突然同じ車両に乗るようになったんだよ。」

 悠人は1ヶ月前の思い出しながら同時に質問をしてくる。同時に質問をするのは、こいつの癖だなと僕は質問への回答を考える。

「それでその人はどんな人なんだよ」

 さらに質問が飛んできたためこの質問から解決することにした。

「とても綺麗な子だよ、いつも本を読んでる」

「同じく本という共通の趣味、しかも可愛い、つまり好きになったってことだな、恋バナじゃねーか最初からそう言えよ」

「違うって言ってるだろ」

 こいつどんだけ恋バナに飢えてるんだよ。

「で、なんで話しかけるの渋ってんの?普通に話せば良いじゃん」

「いや、この朝の車両の後って40分くらい時間開くだろ?話しかけてナンパと勘違いさせて怖がられてこの時間の電車に乗る日常を崩したくないっていうか…

あとそんな事されたら俺のメンタル的にもつらい…」

 掃除の時間が終わって2人とも席につき次の時間の教科書を机から出しながら答える。

「瑠衣は考えすぎなんだよ、別に話しかけていいと思うぜだって同じ高校生だろ?怖がられるとかないだろ。」

「そんなもんかなぁ」

「そんなもんだって」

 そう言って悠人は笑う、彼女持ちのバカ考え方はやっぱり違うな、と思ったがここは参考にしてみることにした。


 ――――――――――――――


 悠人の言葉を受けた決戦の日の朝である、コツンコツンとローファーを鳴らしながら、どう話しかけるか考えていた。

 (普通にどんな本読んでるの?とかか?)

 そんなことを考えながら歩いていたからか今日は駅に着くと同時に電車が着いた。

 いつものアナウンスが聞けなかったなと思いながら端の車両に乗り込む、彼女が珍しく本ではないところに視線を向けていたと思ったが気のせいだろうか。

 そんな事を考えながら僕はいつもとは違い彼女の目の前の席に座る。

「あ、あの」

 話し出したは良いが何を話そうとしていたか頭が真っ白になった。どうしよう…どうしよう…

 (あーもうどうにでもなれ)

「おはようございます。朝好きなんですか?」

 (突然何を聞いているいるんだ?)と自分に対して疑問に思う。

 彼女は本から目線を外してこっちを見た。彼女の目をマジマジと見るのは初めてだった、とても綺麗な少し茶色がかった目だった。

「は、はい好きですよ。」

 彼女はポカンとした顔をしながら答えてくれた。

「そ、そうなんですね?」

 最後何故か疑問形になってしまったが会話することができて少し達成感があったうえその後の会話を考えていなかったというのもあり数秒の沈黙があった。

 が、その沈黙を破ったのは彼女のクスクスとした笑い声だった。他の人のクスクスと笑う声は他人を煽るような嘲笑だが彼女の笑い声は不思議と悪い気は全く起きなかった

「なんで疑問形なんですか」

 フフ、っと笑いながら彼女から聞いてきてくれた。

「こんな質問で返してくれると思わなくて頭真っ白になっちゃって。」

「私のことそんな薄情に見えてたんですか?ちょっと悲しいですね。」

 彼女は下を向いてため息をつきながら言う。

 正直人と話すのが得意な方ではない僕には初対面の会話のリズムとは難しいなと思いながら頑張って会話を考える。

「えっと、自己紹介になるんですが、僕は清水 瑠衣って言います。西城高校の1年です。」

「私は冴木 玲香同じく九西高校の1年です。6月まで色々あって登校していなかったんですけどね。」

「へぇ、九西ってことは2つ先が最寄りだっけ?こんなに早いのは部活の朝練とか?」

「いえ、部活は入ってません。早い電車なのはただ気温が暑くて朝はまだ涼しいからですね。」

「同い年なんだしタメ口でいいのに、そういえば勝手にちょっとタメ口で話しちゃってたけど大丈夫?」

「はい、でもこの話かたは癖みたいなものだから気にしないでください」

 彼女はまたフフっと口元を綺麗な手で隠しながら微笑む。そんな仕草を見てもしかしたら良い家のお嬢さんとかかな?などと変なことを考えてしまった。

「俺もだけどいつも電車に乗ってる時本を読んでるよね?どんな本を読んでるの?」

 そう聞くと彼女は皮でできたブックカバー越しに本の表紙を撫でながら答える。

「私はファンタジーが題材の本をよく読みますね。今はトールキンの書いた指輪物語を読んでるんですが有名な本なだけあってとても面白いです。」

 指輪物語といえば近年映画化もされた作品でもあるため僕でも名前くらいは聞いたことがある。

「ファンタジー小説のどういったところが好きなの?」

 彼女は顎に手をあてて数秒考えて答えた。

「難しい質問ですね、強いて言えば空想上の現実ではない世界で行われる冒険などの苦難を主人公達が苦戦しながらも達成するところを見ていると自分も出来るんじゃないかって思えるところですかね。」

 彼女は何かを思い出すように窓の外をじっと見ながら答えてくれる。橙色よりも少し白っぽい朝日が少しだけ車内に差し込むんで彼女の横顔を照らす。

「そういう清水君はどういった本が好きなんですか?」

 僕は少し考える、主に本が無いと言われてそうな某古本屋などで安売りされていたりする哲学系の本や古い小説読むのも好きだが正直どんな本でもすきだ。

「俺は小説はどんなジャンルも好きかな。」

 これまたよく分からない返しをしてしまったかもしれない。が、彼女はまたフフっと口元を隠しながら微笑んだ。

「つまりどんな小説が好きというより本が好きなんですね。」

「そうだね、俺は色んな本を読むんだよね、ラノベから自己啓発本やらそれこそファンタジーとかね。」

 彼女はまた微笑んだ。話しかける前はずっと無表情で本を読んでいて感情をあまり面に出さなそうな子だと思っていたけれど結構笑う子だなと思った。

 本を読んでいた時の顔も綺麗だったが笑った顔の方が圧倒的に可愛いとも思った。

「おすすめのファンタジー作品があれば教えてくれないか、この本を読み終わったら読んでみるよ」

 僕は鞄から取り出した本を持ちながら聞いてみる。

 すると、彼女はパッと笑顔で話しはじめた。

「おすすめは「魔術士オーフェン」や「守り人」シリーズなんかや「ベルセルク」あれは名作ですね。あとは…」

 楽しそうに彼女はやや早口で十数分の間にいくつもの作品とあらすじを教えてくれる。

 そんな、彼女の話を聞いていると突然彼女はハッとしたように止まった。

 それと同時に顔を熟したトマトのように真っ赤にして顔を伏せる。

 朝日の橙色の光もあるからもっと赤かったかもしれない。

「す、すみません。ファンタジー小説についてだとつい、自分を忘れて話してしまって。」

 彼女は顔を伏せながら話してくれた。

「好きなんだね、ファンタジー小説」

 何気ない応答だっただろう。しかし彼女はバッと顔を上げた。まだ頬は少しだけ赤みがかっている。

「はい!」

 彼女は真剣な目で僕の目を見て答えてくれた。

 それと同時に何気ない会話が妙に真剣な会話に思えて僕はそれが変に面白くて笑い出した。

 それに釣られて彼女も口元を隠しながら笑い出した。

「次はー福工大前、下り口は〜」

 朝は聞けなかったアナウンスが聞こえた。最寄り駅に着いたようだ。

「明日もこの時間ですか?」

「うん、そうだけど」

「なら明日おすすめのファンタジー小説持って来ますね♪」

 そう彼女が言ってくれるのと同時に僕は立ち上がる。

「ありがとう。明日までにこの本読み切っておくよ…また明日」

 そう言うと同時に電車のドアが開く。

「ええ、また明日」

 彼女はやけに嬉しそうにそう返してくれて手を振ってくれた。


――――――――――――――


「で、声かけれたのか?」

 掃除中に悠人が箒の棒の先端においた手に顎を乗せて話かけてきた。

 ちょうど僕がちりとりを持ってしゃがんでいた体勢から立ち上がった時だった。

「まぁな…」

「どんな話したんだよ」

 肘で脇腹を突いてくる。こいつはどうせ「恋仲になるのか」とかを期待してるんだろうがそういう無駄なところが中学校の頃から変わらないなと思いが心の中で(うざい……)という感情になる。

「普通に自己紹介とかどこの高校かとか、何年生とかだよ」

 これで食い下がってくれればいいんだがなと思っているがそんなわけないと内心諦めながら次の言葉を待つ

「それだけじゃないだろ、だって俺らの最寄り駅からこの高校って40分以上かかるじゃんその内容じゃ尺もたねーだろ」

 悠人は普段はバカなのにこういう話の時だけ探偵のように察しが良くて困るな。

「あとは、好きな本のジャンルとか明日の朝本を貸して貰う約束をした」

 悠人はニヤニヤとしながら見つめてくる。僕はやってしまったと思ったが遅かった。

「その子のこと狙ってるだろ」

「狙ってないわ」

 「ほんとかねぇー」と信じてないように悠人は返してくる。僕は今後は情報は詰められたら小出しにしていこうと心に決めたのであった。


 ――――――――――――――


 次の日の朝になった。僕は今日彼女から本を借りるために昨日まで読んでいた本を夜更かしして読み切った影響で眠い目を擦りながら起き上がる。

 自分の部屋の隣にある洗面台で顔を洗って歯磨きをしてから部屋に戻って制服を着てシワや汚れがないか確認する。

 部屋から学校の鞄を持って朝の誰もいないリビングへ行き食パンをトースターに入れる。

 僕はこのトースターの少し思いネジ?とは少し違うダイヤルが好きだ。トーストがサクサクに焼き上がるまでの間に日本の素晴らしい水道水をコップに一杯注いで一気に飲み干す。トースターの前で鞄を持ってあとはトーストを持って出るだけの状態で待ちながら今日彼女と何を話すか考えていた。

 だけど僕は彼女はどんな会話を振ってもよく笑ってくれるし昨日みたくアドリブで会話した方がいいだろうなと考えるのを放棄した。

 その時チン、と心地よい音が1人の部屋に響く。僕は少し熱いためトーストにキッチンペーパーを手持ちがわりにして持って家の扉を開ける。朝日はすでに綺麗な橙色に染まっていた。

 トーストを食べ終えて駅に着く。人気の無い改札に軽快な電子音が響くと同時にいつものアナウンスが聞こえた。

 一番端っこの車両に向かって歩き出す。そして僕が着くと同時に扉が開いた。今日もその車両には(一人)だけ乗っていた。

「おはよう。冴木さん。」

「おはようございます。清水君。」

 彼女は本を読んでいたが顔を上げて微笑んでから返してくれた。僕は昨日と同じように彼女の向かい側の席に座った。

「クマが出来てますね。よく寝れなかったんですか?」

「昨日読んでた本を読み切ろうと思ったら想像より時間かかっちゃってさ、まぁ朝が早かっただけで0時30分には寝てたけどね」

 鋭いなぁと思いうなじを掻きながらながら答える。そこで僕も一つ気づいたことがあった。

「あれ?冴木さんの方こそクマができてるけど大丈夫?寝れなかったの?」

 すると、彼女は頬を少しだけ赤くして目線を逸らしながら答えてくれた。

「今日、清水くんに渡そうと本を選んでいたら日を跨いでしまっていたんです。久しぶりに夜更かしをしてしまいました。」

 そう言って彼女は鞄から1冊の四六判サイズの本を取り出してから横にある仕切り棒?のようなものに捕まって立ち上がった。その時だった。電車が少し揺れたのだ。

「キャッ!?」

 彼女は僕の方に倒れてきた所を肩を持って受け止める。

 とても軽かった。ほんの少し揺れただけだったが足が絡まったのかなとかを数秒考えていたら目の前の彼女の頬がだんだん赤くなっているのが分かって素早く手を離す。

「ご、ごめん。大丈夫?」

「い、いえこちらこそすみません。あ、これ本です。」

 彼女の手に持っていた本を受け取る。彼女は今度は転ばないように平均台の上を渡るように手を広げて慎重に戻っていくのが面白くてつい笑ってしまった。

 それに気づいて彼女は頬を膨らませて。

 何笑ってるんですか!と少し怒られてしまった。

「ごめんって。この本なんって本なの?」

「もうっ」

 彼女はまだ少し不満そうに話し始める。

「その本はJ.R.R.トールキンによって書かれた『ホビットの冒険』という本です。私が今読んでいる指輪物語の前日譚なんです。」

 彼女は僕が乗ってくるまで読んでいた本を見て話す。

「この物語は主人公の成長や違う種族の仲間のドワーフ達との絆や迫力のある戦闘シーンが魅力なんです!」

 彼女は楽しそうに笑いながら話す。僕もそんな彼女を見て自然に笑顔になった。

「今から読んでみるよ」

 僕がそう言うと彼女は満面の笑みになり

「ええ、ぜひ」

 そこから僕の学校の最寄りに着くまで僕達はそれぞれの本読んでいた。僕は時々電車の外の景色を見るため本から眼線を逸らすのだがその時彼女を見ると本当に本を真剣に読んでいて本が好きなのが伝わってくる。

「まもなく〜」

 最寄りに着くとアナウンスが流れる。僕は鞄に本を傷つかない所に慎重に入れてから立ち上がる。

「じゃあまた明日」

 その時だけ彼女は顔を本から逸らして笑顔で答えてくれる。

「ええ、また明日」

 彼女はとても嬉しそうにそういった。

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隣に座る彼女と僕 @youkann29

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