劣等

@rereGhin1234

第1話

 朝歩いていると、老夫婦の散歩に涙ぐむ。

 電車を2回乗り換え、爪に溜まったゴミのような人混みを潜り抜け、仕事場につく。名前も知られていない、特段目立たない、至って普通の会社の、至って普通の会社員として、至って普通の仕事をこなす。

 会社を出る。道端に落ちた吐瀉物に憎悪し、家に着く。家の匂いを嗅ぐ。込み上げる気持ちを一旦クリップで留めておく。

 1日の終わりに、自分が何を残したのかを考える。何を成し遂げて、何を自慢できるか考える。

虚無感に襲われる。何か人にいいことがあった時、なぜか悲しくなる自分に、悲しくなる。留めておいた気持ちが、弾け出す。



 僕の人生は、この連続だ。何度変わろうと思っても、寝て起きたら気持ちよく忘れる。毎晩寝る前、惨めさを感じて辛くなる。そうした日々に終止符を打ちたい。特別じゃなくていいから、僕は保湿機の、給水ポットみたいな存在になりたい。

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