第7話 告白の結末
「どういうこと……?」
トシキくんが私を好き?
「そんなの嘘よ、ありえないわ」
その可能性はとっくに潰れたはず。
なのに——
「嘘なんかじゃありません。僕は本気です」
トシキくんのまっすぐな瞳が私を射抜く。
なにその真剣な表情……ズルすぎる。
「……トシキくんの言う「好き」って、どういう意味なの? 人として? それとも上司として?」
「…………」
しばしの沈黙。
しかし、トシキくんは一瞬視線を逸らしたかと思うと、意を結したように私を見つめ——
「れ、恋愛的な意味です。出会った時から好きでした!」
と言い切った。
「はうっ!?」
頬を真っ赤に染めながら、おずおずと答えるトシキくん。可愛すぎてどうにかなりそうだ。
しかし、これでわかった。
恋の魔法は効かなかったんじゃない。すでに私を好きだからパラメーターに変化がなかったのだ。
だとしたら、私が言うべきことは一つ。
「……私もなの」
「え?」
「私も、トシキくんが好き。恋愛的な意味で大好きなの!」
〇
——1ヶ月後。
「あのちょっといいですか? 道を尋ねたいんですけど」
いつものように仕入れでウィザードリーモールへやって来ると、見習い魔女らしき女の子から声をかけられた。
地方から出てきたのかオロオロとしており、ここに慣れてないのが伺える。
助けてあげたいと僕は素直に思った。
だが同時に「なんで僕なんかに声をかけてしまったんだ!」と言いたかった。
何故なら——
「貴女、死にたいの? 私のトシキくんをナンパするなんて、どういうつもり?」
ワープ魔法で現れたティナさんは、現れるのと同時に杖を向けていた。
「ひぃっ!?」
驚く見習い魔女。
僕はティナさんと見習い魔女の間に慌てて立った。
「ナンパじゃありませんっ! 落ち着いてください、ティナさん!!」
ティナさんと付き合い始めてから1ヶ月。彼女のストーカー気質はますます激しくなっていた。
昔のようなクールな姿はどこへやら、今では嫉妬を隠しもしない。
「どうして庇うの!? もしかしてトシキくん、その子のこと好きなの!?」
「違います! 好きなのはティナさんだけです!!」
「はうっ……!」
素直な思いを口にすると、ティナさんが胸のあたりをギュッと押さえてよろめく。
「とにかく、ティナさんの心配するようなことは起こりませんから安心してください」
「本当? 本当にこの子のこと好きになったりしない!?」
「大丈夫です」
「わかった、信じる……」
ティナさんは頬を赤らめつつコクリと頷いた。
しかし。
「でもやっぱり心配だから一緒に行くっ!」
そう言うとティナさんは僕と手を繋いだ。
僕は「まったく……」と呆れながらも彼女の手を握り返した。
時刻は午前0時。魔法使い、そして僕とティナさんの時間が始まる。
クール系ストーカー魔女×アルバイトの僕〜札幌ウィザードリィナイト〜【カクヨムコン11短編小説部門】 長谷川ひぐま @hasegawa_higuma
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