保険外交員と水路の家
不運と悪意の影
私は霊が見えるわけではない。だが、人に対する違和感や不気味なほどのシンクロニシティには他に幾度も遭遇している。どの話を選ぶべきか、正直迷うところだ。
しかし、最近、友から似たような話を聞いたばかりなので、数十年前の、あの出来事について話そう。
最初の違和感
あれは私が大学生の頃だ。兄の義母にあたる、D生命の外交員T橋と知り合った。父と共にその人に会うことになったが、私は強い嫌な予感を覚えた。だが、私は空気を読み、その人物を受け入れた。
最初の顔合わせ。その人は一時間以上も遅刻したにもかかわらず、一切の謝罪はなかった。それどころか、終始ご満悦な様子だった。私はその態度に強い違和感を覚えた。
運命の転落
当時、父は小さな会社を経営していた。だが、その外交員が次第に経営に口を出し始めた。不幸なことに、バブル崩壊が重なった。結果、父の会社は畳むことになった。
元々、小さな会社だったため、取引先も良心的な者が多く、法務局での簡単な手続きで済むはずだった。しかし、彼女は欲を出した。大手町に事務所を構えるA宮という顧問弁護士を抱き込み、取引先から慰謝料を引き出そうと、訴訟を計画し始めたのだ。
父の工場の更新ができなくなった後、私たちは水路に囲まれた、どんよりとした場所へ移転せざるを得なかった。今思えば、その人に会ってから人生の流れは悪化の一途を辿った。
避けられぬ結末
そして、その裁判が始まる前日、父は自ら命を絶った。
それは、自宅での出来事だった。その後、その家は事故物件となり、保険屋が引き継ぎ、今は別の者の所有となっている。
残された直感
この話に、怪談めいた要素はほとんどない。あるとすれば、私がその人物に会った際に抱いたあの嫌な予感と、火葬場の光景だけだ。
実は、私は父が火葬されることになる、まさしくその火葬場を、中学生の頃に夢で見ていた。実際にその場所を見た時の驚きは忘れられない。
私は霊を見ることはないが、こうした直感だけは、なぜかよく働くのだ。
次の更新予定
2025年12月7日 06:47 隔日 06:47
Assassin’s Protocol Ksk_47 @Ksk_47
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