海辺の街には、猫がいる。私が昔歩いた港町でも、夕暮れになると家々の裏に大きなたらいが置かれ、そこへ魚の残りを求めて、どこからともなく猫たちが集まってきた。まるで空から降ってくるみたいに、次々と。そんな風景を思い出しながら読むと、この物語の「海と猫」の空気が胸にふわりと重なる。あの日の景色をもう一度見せてもらったような、優しい一篇でした。
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