「ビニール傘1本でここまで心えぐられるなんて思わなかった」
- ★★★ Excellent!!!
将来の夢も決められない、「置泥になりそこねた」主人公の一人称が、とにかくうまいです。
軽口まじりの自虐なのに、ところどころでグサッと刺さる一文があって、読んでいるうちに気づけば自分の黒歴史まで勝手に思い出させられます。
交通事故も、古本屋バイトも、雨の日の記憶も、どれも「大事件」じゃないのに、描き方ひとつでここまで愛おしくて、苦くて、可笑しい出来事になるんだ…と感心しました。
ビニール傘という“どうでもいい消耗品”を通して、
「人生なんてこんなもんかもしれない」という諦めと、
「それでも誰かと笑いたい」という小さな希望がちゃんと残る。
派手な展開はないのに、読後感はびっくりするほど豊かです。
雨の日に、静かに一気読みしたくなる一冊でした。