カードオブテインー魔法銃と放たれたモンスターとカード化の物語ー
@herkysaro
第1章 六佳と命奈(りっかとめいな)
メインビジュアルと見どころ
https://kakuyomu.jp/users/herkysaro/news/822139840466175543
コールドリーディング
心理テクニックの一つで、相手の情報をあたかも初めから知っているかのようにふるまう技術。
占いなどで『悪用』されることが多く、それっぽく占うふりをするだけで相手の過去や性格を見抜いたかのように思わせることができる。
この技術の前では知性も人生経験も役に立たず『この人物はなぜここまで自分の事を知っているのだろう』などと思わせることができる。
また、書物で得たコールドリーディングの知識では、経験を得たコールドリーディングには太刀打ちできることは皆無で、あらゆる面で喜んで騙される結果になっていく。
有名なものとしてバーナム効果などがあるが、こんなものは初歩の初歩に過ぎず、コールドリーディングの闇は常に水面下に存在している。
1六佳と命奈
https://kakuyomu.jp/users/herkysaro/news/822139840466578382
不知火六佳(しらぬいりっか)はタロットカードをシャッフルし、本日の客の目の前に並べて見せた。
「すごーい。たくさん並べるんですね」
客の名前は記入用紙によると日田命奈(ひだめいな)と言うらしい。テーブルの向こうで目を輝かせて展開させたカードたちを眺めている。
「ええ、たくさんのカードをいっぺんに見るのは細かい意味が入り乱れて難易度が高くなりますがその分たくさんの事が見えるんですよ」
「占い師さんは、皆そうなんですか?」
「いえ、どうでしょうか。プロでも数枚だけめくる人も多いですよ。そこは個人差でしょうか」
「六佳さんて特別なカードを使うって有名ですよね」
「ええ、そちらもご披露しましょう」
六佳は後ろの棚にある別のカードデックを持ってきた。
「それが噂のカードですか」
「おや、噂になってるんですか?」
「ええ、私たちのなかでは有名ですよ」
「そうなんですか。私は古道具屋で初めて見て気に入って手に入れたんです」
六佳は今しがた展開したタロットカードのスプレッドに今持ってきたカードを加えた。
「さて、命奈さんに対して明るい性格・・・・・・などと言えばご友人がたはみんな納得がいくでしょう。命奈さんは誰が見ても活発で活動的で、物事にポジティブに対応できる才能をお持ちです。ただ、私にはそれだけには見えなくて、冷静で現実的に考える思慮深い面も同じくらい強く見えるんです。ただただ天真爛漫な人とは違って、先の先の未来をよくお考えな一面もあるのでしょうね」
「それはほめ過ぎですよ」
「そんなことありませんよ。実際の所冷静さや考えの深さのようなものはやはり感じます」
「ありがとうございます」
この反応は『正解』に該当する。基準として、否定さえされなければ当たりと判定できるのだ。
だが実際正解なのは当然のことで、これは『バーナム効果』と呼ばれるコールドリーディングでは基本的な技術だ。誰にでも当てはまる言葉を並べるだけで、あたかも相手の性格を見ぬく演出ができるというものだ。
もっと細かく言うなら……人の性格が一人につき一つのわけがない。様々な場面で様々な判断をするのが人間だ。常に優しい人間は存在しないし、常に残忍な人間も存在しない。あらゆる人間にあらゆる性格が潜んでいるのだ。
バーナム効果のコツとして一つの性格を指摘、同時に反対の性格を指摘すると言うのが有効だ。
こだわりが強いが同時に飽きっぽいところがある。
きちんと考えを整理整頓できるが、どうしても途中でいいかげんになってしまう。
細かく物事にこだわるわけでは無いが、どうしても譲れない考えに固執してしまうところがある。
これらは大抵誰にでも当てはまる。それに仮に当てはまらなくてもコールドリーディングは機能する。
六佳は続けた。
「なので、命奈さんには何かやらねばならない目標のようなものを感じてるんです。それを今でも遂行しているような」
「すごい、そのとおりです」
この『今でも遂行している』というのも典型的なコールドリーディングだ。『今』とは実に範囲の広い表現だ。『たった今』でもあるし『ここ数日』でもあるし『学校に通って専門的な知識を得ている』という捉え方もできる。
そのまま六佳はいくつかの正解を導き出していった。二、三個当てれば大抵の人物は有能な占い師と判断してくれる。
この命奈という客は、将来の不安の悩みというわけではなく、占いそのものの体験を楽しむつもりで来たらしい。こういう客は自然と雑談になっていく。
「でも、そのカード本当に珍しいね」
雑談が進むと、彼女の口調は次第に砕けたものになってきた。
命奈は改めて占いのカードの話を切り出した。タロットカードではなく、あとから棚から出したほうだ。物珍しい絵柄で重宝している。このカードデックの名前は未だに知らない。
「ええ、コレは古道具屋でたまたま見つけたものなんです。何か惹かれるものを感じて」
「惹かれる?」
「自分でも良くはわからないんですが‥‥‥変な表現ですが言ってみればカードに呼ばれているような。つい買ってしまいました。一部のカードしかなかったのですが、不思議なことに他の古本屋や古道具屋、リサイクルショップを尋ねると度々見つけられて」
「そっか、たしかに呼ばれてたんだろうね」
オカルトを信じる人種というのはこういった話を好む。運命だとか特別な話の流れ、ただの偶然を必然と捉えたがるのだ。
そして、占い師をそういった特別な運命の紐づけに恵まれた人物だと思い込み、そんな人物になりたいと憧れる。
典型的な例として『晴れ男』『女の勘』などが挙げられる。晴れ男だと思いたい人物はイベントごとで晴れたら大きく印象に残し、雨が降ったら『晴れ男と言えど、そう毎回晴れるわけではない』と思って自然に忘れる。
ちなみに、六佳は能動的にこのカードを集めた。
たしかに最初に古道具屋で見かけたのは偶然だ。
ここまでなら運命と表現してもいいだろう。
しかしその後ネットで検索したり、フリマアプリで探したりしてかなり必死に集めたのだ。なぜならこのカードはほとんど出回っていない様子だったからだ。
おそらく何かのキャンペーンやプロモーションカードの類だろう。
占い師はありきたりな絵柄のカードや占術を好まない。オリジナルの占いのほうが客がつくためだ。それが故にめったにお目にかかれないこのカードを集めることにしたのだ。
「でも集めるのにはなんだかんだで苦労しましたよ」
「このカード、トランプとは違うの?」
命奈の疑問はもっともなものだった。このカードデックはトランプと酷似している。
カードの総数は十三枚で、二から十の数字とJQKAのアルファベットが印字されてある。数札にも絵柄が印刷されている。空想上の生物のようだ。
「タロットカードのようにトランプを元に作られたものだとは思うんですが」
「全部ハートですけど、他のスートはもってる?」
「見つけられたのはハートだけですね。なんとかこれだけすべて集められました」
「じゃ、カードが気に入ってくれたんだ。でも、アタシ最後の一枚持ってるよ」
「?」
「これ、六佳さんにプレゼント」
唐突な申し出。命奈はバッグから一枚カードを取り出した。
確かに同じシリーズのカードだ。スートもハートである。印字されてるのはPの文字だった。絵柄から察するに………
「ペイジですか」
「はい。アタシもそのカードを探してたんだけど、六佳さんのほうが懐かれてるみたいなのであげる」
タロットカードにおいて、トランプで言うところの絵札に該当するものには一種類だけ違うものがある。
それがP(ペイジ)と呼ばれるカードだ。ほかにもタロットではJ(ジャック)は存在せず代わりにK(ナイト)があてがわれている。
「もしかして大切なものなんじゃあ」
「気にしないで。大切だから持っていてほしいの」
そういうと命奈がほとんど強引にペイジのカードを渡してきた。
「で、では遠慮なく」
「それと、トゥルスカードっていうんです。覚えておいてください」
最後にそう言って命奈は帰り支度をし始めた。
「今日は楽しかった。また来るから。その時は、六佳さんの話聞かせてくださいね」
六佳が呼び止める前に、命奈は伝票を持って受付に戻っていった。
変わった客だな。
この時はそれぐらいしか思わなかった。
♡ ◇ ♧ ♤
「不知火。君は解雇だ」
「か、解雇!?」
その次の日、店の事務室で六佳は店長にそう言い渡された。
「まってください。嫌ですよ。私は店でNo.1なのに。店長だって困るでしょう」
「困るのは確かなんだがね、もっと困ることが分かってしまったのだよ」
「この私を外すことになるほどの困ることって一体なんですか」
「コールドリーディングを使ってたらしいな」
「そっ……!!」
六佳は言葉が詰まった。
「霊的な力の自覚のないものが占いを使って金銭を得ることは詐欺罪に当たるんだよ」
「うちで取ってるのはあくまで相談料です。占いの報酬ではありません」
「もちろんその通りだ。しかしそれだってグレーゾーンだ。コールドリーディングだという話が出た以上法律がどのように働くかはわからない」
「だって、それを言うんだったら私だけじゃないじゃありませんか」
「ほかのメンバーは違う。霊感やら魔力をもっている」
「いいえ、持ってません!」
六佳は店長の机をたたいた。
「霊やら魔法やら超能力やら気やら! 占いやら霊媒やら祈祷やらヒーリングやら! あんなものは全部でたらめの嘘っぱちです! 私のやってることが詐欺だというなら、占い師なんて全員詐欺師です」
六佳の主張をひとしきり聞いて、店長はしばし目を瞑った。
「私だってそう思うさ」
「だったら私を店においてもいいでしょう」
「私は占い師じゃない。お前は占い師だ。だから自覚がないと困る。それと、まあこれは微妙な道をゆく大人としての説教だが」
「………」
「こういった商売はやめておけ。ただしい資格を得て、正しい手続きで胸の張れる仕事をすべきだ。お前はまだ十六歳だ。いくらでもやり直せる。たしかに若くても金が稼げる仕事ではあるが、きちんとした未来を見据えるべきだ」
店長は書類に目を落とし、無言でパソコンを打ち始めた。
六佳はただ無言で店を出るしかなかった。
♡ ◇ ♧ ♤
今は夕方だ。占い師はそもそもバイトだった。
学校が終わったらすぐに働いている。
……いや、働いていた。どうしよう。今から帰ってもな。親にクビになったとか言い辛いし。適当に時間を潰そう。
六佳は適当なカフェに入った。
吉祥寺の繁華街には仕事にしか来ていなかった。
基本的にインドア派だし、にぎやかなところ苦手だし。ナンパうざいし。
ずいぶんかわいらしい店だった。
壁紙や調度類には落ち着きよりも可愛げや高級感に包まれていて、色合いも女性向けに合わせている。
店員さんも女性ばかりで制服もパステルカラーにフリル付き。まあ、自分のような地味な女が来るのもどうかと思ったが、そこは客なんだから。
二階の座席に案内されて、ハニートーストとオムライスとミックスピザとデザートにパフェを注文した。
フードメニューは少々値がはるが、今までたっぷり稼いだんだ。しばらくは豪遊してやる。
昭和通りを見下ろしながらやけ食いを済ませ、追加注文したミルクティーを飲んでいると店員が話しかけてきた。
「もしかして六佳さん?」
「あなたは……命奈さん。あむ」
皿に残った蜂蜜を指につけていたところだった。六佳は構わず舐めとる。
「きゃー、来てくれたんだ」
「偶然ですが。ここでバイトしてるんですか?」
「社員」
「社員?」
高校生だと思っていた。なにか深い事情でもあるのだろうか。あまり追及しないことにした。
「アタシもうすぐ終わるんで、ちょっとまってて」
そういうなり命奈は奥に引っ込んだ。
時計を見たら六時ちょっと前だった。
本当にすぐ終わるらしい。
十分もせずに命奈は私服で戻ってきた。コーヒーを注文してしばらく談笑する。
命奈は明るくていい子だった。
普通にクラスの人気者のような。
良く笑う子だ。
踏み込み過ぎもせずよそよそしくもない的確な距離感。
いや、たとえ踏み込まれても不快な感じはしないだろう。
「ん? どしたの? じーっと見て」
「あ、いえ」
心の中で性格分析をする癖はもう直したほうがいいだろう。
「ええと、命奈さんは」
「命奈でいいよ」
「命奈……は」
「うん」
「いえ……なんでもないです」
「なによそれ」
「色々考えてるうちにわかんなくなっちゃって」
「なにか聞きたかったんじゃないの?」
「そうなんだけど、あんまりこういう感じの会話慣れてなくて。話すの実は苦手なんです」
「だって、占い師してるんでしょ。昨日はたくさん話したじゃない」
「種類が違うんですよ。占いって『ずっとあなたの話をします』っていう前提の元にするんですよ。だから楽っていうか」
「どゆこと?」
「全人類が間違いなく楽しめる話題ってご存知ですか?」
「さあ」
「それは自分の話題なんです。占いはずっと相手の話をしてられるからお客さんは満足するんです。特に女性は」
「あー、普段の会話は自分だけ喋ってちゃ悪い気がするもんね。つまらないのかなーとか」
「占いしてると相手は自分のことを話すのが当然だし。私も相手の話だけをすればいいから」
「うーん、そういうものなのね」
「だから本当は会話自体が苦手で、相手の話を聞けばいいのはわかってるんですが、自分から話題を増やすのに何を聞けばいいのかとか、わからなくて」
「それこそ占えばいいんじゃないの?」
「占いは……もうやめようかなと」
「え、なんで」
「いや……」
「そういえば今の時間お店じゃないの?」
店にいる時間は店頭やホームページに公開してある。昨日にでも見たんだろう。
「その、まあクビになって」
「えー、即日とかありえないでしょ。ちょっと、だめだよそういうの黙ってちゃ! アタシが文句言ってあげる。だめなら労働局」
「いえ、いいんです。大丈夫ですから。ちゃんと合意したし、書類も書いたし」
「んー。なにかあったの?」
命奈がそう言ったのは愚痴でも聞いてくれようとしたのだろう。
だが、コールドリーディングのことは話せまい。
嫌われる。
騙された。馬鹿にされたなどと思われるだろう。
「ね、じゃあさ、これからは時間あるんだよね。アタシと遊びに行かない?」
「それは……」
「いや?」
「いえそんなことは。でも普段遊び歩かないから街のことはよく分からなくて」
「じゃアタシがリードしたげるよ。さっそく明日遊ぼうぜー」
「そう……ですね。わかりました」
それから店を出て、別れ際にLINEを交換した。
その日の帰り、暗がりの中でバッグから光が漏れた気がした。
探ってみると、トゥルスカードのデックのあたりからだったが……たぶん気のせいだろう。
遊びと言っても特別なことをしたわけではなかった。
午前中に待ち合わせて街をぶらぶらして、昼食を食べてまた気になる店に行って。
まあ、特別なところと言ったら普通の高校生と違って多少お金に余裕があることぐらいか。
自分は高一からまる一年ぐらいで一財産稼いでいるし、命奈は社会人だしということで、結構お高めな店を歩けている。
アミューズメントパークでカラオケやバッティングセンターやビリヤード。とにかく目につく物には飛びついた。
「これはなかなかストレス解消になりますね」
一通り回って、また別のカフェで休憩して、六佳はそういった。
「そうでしょそうでしょ」
衣服やらコスメやら電子機器やら随分買い込んでしまった。UFOキャッチャーの景品でいっぱいになったあたりで宅配便を使うことにした。
「占い師って給料高いんだ」
「高いですよ。私一応あの店でNo.1だったので。命奈と話したのも一時間ぐらいでしたけど、ずいぶんお金かかったでしょう」
「まあね。しかし……六佳はもっと大人しいタイプだと思ってたけど、そんなことなかったね。ロックとか歌いまくってたもんね」
「いや、普段はそうなんですけど……私暗いし、今日は普段の知り合いいないから、多少はっちゃけられるかなと」
「みんなの前でもやればいいじゃん」
「だ、だめですよ!」
「素を出してくれたなんて。ふっ、気に入られたもんだぜ」
「おかげで散財の予定日がだいぶ短くなりました」
二人は笑って、何気ないことを話し続けた。
「六佳さ、これからどうするの?」
「それは、仕事をやめて……と言う意味ですか?」
「うん」
「学校の勉強ですかね。でも放課後は退屈になります。元々退屈しのぎに始めたバイトでしたし」
「そっか……あのさ、思ってたんだけど。うちでバイトしない?」
「え、んー」
六佳はしばし考えた。
やめたらやめたで自由な時間が増えたわけだし。学生にとってこの自由さこそが本来の物のはずだ。
「じゃあさ、見学とかどうかな? お店の雰囲気とか。もちろん今日すぐに決めなくてもいいし。その、見せたいものがあるの」
「? いいですけど。何かあるんですか?」
「う、ぐぅ……さすが占い師」
「事情があるならお聞きしますけど」
「そうね……こないだ渡したカード持ってる?」
「持ってきてますよ」
「ハートのデックごと全部持ってきてるでしょ」
「そうですね」
「なんで持ってきたの? 占いはしないって言ってたのに」
「それは……なんでだろう。いつもの癖? いや、いつもは店においてたし」
「運命って信じる?」
「それは……」
もちろん口説き文句ではないことはわかった。
実際のところ信じていない。
我々の世界では過去も未来も存在しない。
存在しているのは現在だけだ。だから決まりきった未来……運命なんてない。
「六佳はすごい魔力の持ち主なんだ。多分自分で気づいてないと思うけど、こっちの世界では魔術の技術はとっくに捨てられてるし。だからトゥルスカードがこの世界の住人を選んだことにアタシは強い運命を感じるの」
命奈はそらしていた目をこちらに真っ直ぐと向けた。
「バイトっていうのはちょっと、言い方に迷っただけなんだけど。とにかく特別なの。コレを見て」
命奈が取り出したのは一枚のカードだった。
トゥルスカードだ。
ダイヤのペイジである。
淡く光っている。いや、それだけじゃなくて……
「なんで、浮いてるんですか?」
「お互いに反応してるみたいなの。アタシにも詳しいことはわからないわ」
六佳はバッグから自分のカードを取り出した。
「熱っ」
輝き、熱を発するハートのペイジが、ダイヤのペイジとなにか共鳴しているようだった。
「色々複雑で、うまく説明できないんだけど。たぶん見てもらったほうが早いわ。<アレス>までついてきてくれない?」
♡ ◇ ♧ ♤
店をあとにして、吉祥寺で降りた。
昭和通りに向かって間もなく見えた、カフェ〈アレス〉。
昨日、クビになった後に利用した命奈の勤め先のあのカフェだ。
正面の入り口からは入らずに裏の従業員入り口に回った。命奈は建物の入り口まで行かず。裏庭のど真ん中に備え付けてある扉の方に向かった。
両開きの扉である。どこかに繋がっているものではなくただそこに扉が単品で設えてあった。
扉はテーマパークにでもあるようなパステルカラーでデザインされており、装飾もヨーロッパ調だ。
一応扉の反対側を確認してみたが、何もなかった。完全に独立した扉が一枚、庭の真ん中に突っ立っている。
命奈の方に目線をやると、彼女は待ってましたとばかりに。ポケットから鍵を取り出した。
結構大きい。
扉に準じたデザインで指の先から手首ぐらいまでの長さがある。
ドアの錠前に差し込むみ、命奈はゆっくりと開けた。向こうに現れたのは先にあるはずのお店の壁ではない。
どういうわけか、扉のフレームの先に石畳の明るい広場が現れた。
「ほら、おいてくよ」
目の前の現象に見とれている六佳に命奈は手招きした。
六佳は迷いながらも命奈の後を追った。
くぐった瞬間嗅いだことのない、なんとも言いしれぬ香りを感じた。
「ようこそ異世界フォボスへ」
命奈が大げさに両腕を広げてその景色を見せた。
彼女を包んでいる景色は。
見慣れぬ街の広場だった。石畳が張り巡らされた人の往来の多い広場だ。
石の階段に木製の手すり。柵の向こうには町並みと広い草原地帯。建物はレンガで作られたものが目立ち、屋根が尖った構造の家々がズラッと居並んでいた。
しかしこれは異世界というより……
「ヨーロッパですね」
しばらく歩いて六佳が思ったのはそういう感想だった。
「ちが、ファンタジー世界と言ってほしいね」
「ああ、たしかに人々の格好はそうかもしれません」
少し見回すと、杖を持っていたり帯剣している人もいるようだった。
格好だってTシャツやらチノパンやらの人はいない。
たぶんウールや毛皮を使ったものだ。鎧を着ている者もいる。
実際のところ新鮮で興味心がそそられる体験だった。
見たこともない植物、鳥、家畜やペット。
サンサンと照りつける日差しは強いが不快な暑さではなく、世界全体が彩らせていた。
海は透き通り、布を広げただけの露天には活気があり、創作のファンタジー世界そのものが目の前にあった。
露天の一つでよくわからない菓子を買い、知らない茶を飲んだ。しかし娯楽は飲食ぐらいしかないようだった。
「それで、私達はどこに向かってるんですか?」
命奈は先程から紙切れを片手に進んでいる。地図を見ているようだった。
「それなんだけど六佳。ちょっと討伐クエストやってみない?」
「は?」
その後たどり着いた家は、周りに比べて随分大きかった。
賑やかな露店街を少し裏手に入った場所で、庭も相当なものだ。
その真中に学校ほどの大きさの住宅が『でん!』と佇んでいた。
門の前には兵士が二人。鎧と兜に身を包み、身長ほどの槍を携えている。
命奈が二、三会話をすると、邸宅の方から恰幅のいい男が駆け寄ってきた。他の人々に比べて身なりが良かった。街の人の服装はほとんどくたびれていたし。
「命奈殿! よくぞ来てくれた」
男は躓きそうになりながらもこちらまでたどり着いた。
「お早いご対応ありがとうございますぞ」
「今日はたまたま来る用事があったので。ついでにお話を聞ききますよ」
「とにかく、詳しくは中でお話しましょう」
「いえいえ、軽く説明だけしてくれればいいですよ。あんまり時間もないし」
「ううむ、そうだね。すまない」
男は何か察した様子だった。たぶん『年端も行かない女性が男の邸宅になど……』といった感じだろうか。
「あ、六佳。この人はね。この辺の商人ギルドの理事なの。フォロクさん」
「ギルド?」
「まあ、そういう会社ね」
「命奈殿のお友達ですか」
「あ、よろしくお願いします」
「命奈殿の実力は折り紙付きなのですが、一人でこなしておられるようなので我がギルドでも心配しておるのです。力になって差し上げてください」
「え? ああ。わかりました」
言ってることはよく分からなかったがとりあえず返事をしておいた。
「さて、では手短にお話しますが……」
フォロクは説明を始めた。
先程命奈は討伐クエストなどと言っていたが。
それでは完全にゲームの世界だ。
フォロク氏の話を聞いていると、北にある街への街道にモンスターが出るらしい。
正体は謎で、人ほどの大きさのモンスターが数十体とうごめいているようだ。姿は見せてこないが、怖がって誰も通れない。
商人のキャラバンが通れないのが痛手のようで、物流がストップしているとのことだ。
話を聞き終え、二人は北へ向かう事になった。
「一体どういうことなんですか?」
二人きりになったところで、六佳が改まって聞いた。
「ペイジのカード同士が、共鳴? していたのも不思議でしたが、この世界だって……その、わけがわからないというか」
「うう、そうだよね。ごめん。連れてきたほうがわかりやすいかなって思ったんだけど、結局ややこしくなっちゃった。アタシ計画とか立てるの苦手なのよ」
「んー。まあ異世界見学という意味ではすごく面白いんですが……ここテーマパークとかじゃないですよね? リアルな異世界? モンスターを討伐するなら危険があるのですか?」
「あ、大丈夫それは安心して。六佳のことはアタシが守る!」
「かっこいいセリフではありますが……」
「ほら、ちゃんと武器もある」
命奈が懐から取り出したのは。
拳銃だった。
銃の知識についてはゲームで見たことがあるくらいで、命奈の持っている銃の種類についてはよく分からなかった。ゾンビゲームとかで主人公が初期装備として持ってるような。そういうハンドガンだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。そういう護身具がないといけないレベルってことですか?」
「まあまあ安心して。ちゃんと六佳には危険がないように戦うから」
「ううん……」
「今回戦うのは定番だけどゴブリンかコボルドね。ぶっちゃけハズレだけどお金がもらえるから良しとしよう。アタシあいつらに負けたことないし、バリアが破られるような相手じゃないから」
「もう意味不明な言葉だらけなので突っ込みきれませんが……とにかく危険があっても危害がないぐらいの考えでいいですか?」
「VR映画を楽しむくらいのつもりでいいよ。アタシのかっこいいところを見せてあげよう」
「ははあ」
話の内容はなんだか不安ではあるが、命奈の態度は手慣れた人間のそれだった。
きちんと把握はできないが……たぶん大丈夫だよね?
そんな話をしていると森の入口に差し掛かった。
でこぼこした傾斜のなだらかな登り坂。馬車の往来があるだけあって道は広かったが、なるほどしばらく人が通った形跡がない。
「さ、こっからは危ないから、ちょっと止まって」
言われたとおりに六佳は足を止めた。
命奈はごくごく真剣な表情で、拳銃とカードを取り出した。
カードはトゥルスカードの一枚である。
命奈の拳銃は黄色く装飾されていた。
実用性一辺倒なデザインではなく、可愛らしくデザインされている。銃の右側面にあるスリットの入ったダイヤ型の機構が特徴的だった。
命奈はトゥルスカードをスリットにスライドさせた。
カードリーダーのようなもののように見える。
「♢《ドリュール》♢」
そう唱えるとカードを六佳に放った。カードがこちらに届く前に光となって散り、六佳の周囲に見えない何かが張り巡らされた。
「ええと??」
「ほら、この石ちょっと投げるよ」
命奈は指先ほどの小石を六佳に放った。しかし当たる前に見えない壁に阻まれ弾かれる。
「バリアをはる魔法なんだ。ゴブリンぐらいなんでもないわ」
こんどは手のひらで突き飛ばしてきたが、やはり届く前に弾かれた。
「魔法!?」
「ファンタジー世界なんだからあって当たり前でしょ。いくよー……っと?」
命奈が足を止めてあたりを警戒した。
今は少し登って平地に差し掛かったあたりだ。
動きやすい広場のような場所に到達している。
目立ったものは特にないが、朽ちた馬車が一台転がっているのが見える。被害にあったキャラバンのものだろうか。
六佳が命奈に習ってあたりを見渡すと、数体の影ががさがさとこちらに近づいてくる。草むらから現れたのは……
「ゴーレム?」
「なんなんですそれ」
「魔法で動く、石でできたロボットよ。でもどっちかって言ったら泥人形かな?」
たしかに。現れたのはかろうじて人の形をしているが、体からボタボタと泥を落としながら近づいてくるいまいち不安定な形の泥人形だ。
どちらかというとゾンビっぽく見える。
「もしかしたら当たりかも。♢《ペイン》♢」
命奈はカードをスキャンし発砲した。
弾丸を受けた泥人形はあっさり四散した。
他にも森の中から迫りくる泥人形たちを次々と命奈は屠っていった。
「六佳は離れててね」
「大丈夫です」
六佳は危険を察知して素早く朽ちた馬車の影に隠れた。
「おー、動けるねぇ」
命奈は感心した様子で戦闘に戻った。
どうもあの泥人形たちには意志を感じない。あやつり人形のようだ。
ただただ近くにいる命奈に迫っていく以外に行動らしい行動を行っていない。
馬車に空いた穴から覗いて様子を見る。
暫く経つと命奈は苦戦し始めた。
泥人形の数が際限なく増えているのだ。さっきまで余裕綽々だったというのに。
まあ、あの数では無理もないだろうが。
「命奈、後ろにもいる! こっちに走って!」
「おっけ! ♢《ラピッド》♢」
次の魔法。
命奈の拳銃がフルオートに切り替わり無数の弾丸が連射された。
「く、多すぎでしょ」
気がついたら四方を囲まれている。たった今来た道も塞がれて戻れない。
「六佳、アタシが道を開けるから走って」
「命奈はどうするんですか」
「はやく!」
戻る道の方に向かって、命奈は集中攻撃した。
六佳は頃合いを見て走り何とか泥人形の群れを回避し、攻撃は魔法の壁が守り、山道に戻ることができたが、命奈はまだ敵のただ中だ。
泥人形たちはこちらには興味を持たないようだった。
「さっきまで私のことも狙ってたのに」
六佳はそれにどうも違和感を覚えた。
もしこの世界にも自分の世界の理屈が通じるのだったら、行動のプログラミングにはルールが必要だ。
この際魔法がどういうものかは分からないが、それでも行動を制御するなにかがあるのだとしたら……例えば攻撃する敵を優先しろ。とか。
その時、視界の端で何かが飛び立った。
フクロウだった。
さっきからこちらを見ているように感じた。自分の接近に驚いたにしては変なタイミングだ。
いや、何にせよ命奈が危ない。
どうにか戻って助けられないかと前に進もうとしたとき、一枚のカードが六佳の前に飛び出した。
「ハートのペイジ……」
力強い光。声が聞こえた。
『聞こえますか? あなたがハートのカードを揃えてくれて本当に良かった』
「……あなたは?」
『あなたにあの子とこの子たちの事をお願いしたいの。カードたちが認めたあなたにしかできないから。あの子を助けてあげて』
「助けます。早くしないと危ない。何か方法を!」
向こうでは未だに命奈が戦闘を続けている。
泥人形たちはわらわらと無限に湧いてきている。
『ありがとう。さ、手を出して私に触れて』
躊躇はしたが、時間もない。六佳がペイジに触れると手の中になにか現れた感触があった。
銃だ。白と黒に装飾された拳銃。
銃の側面にはスリットの入ったピンク色のハート型の機構がある。
『あとはカードたちに聞いて。命奈のことをお願いね』
ペイジは六佳のポケットに戻った。
「ええええ、ちょっと、どうすれば……あ」
また声が聞こえた気がした。今度は言語ではないが、自分を使えとばかりにポケットの中のハートのデックからカードが一枚飛び出した。素早く受け止める。
「♡《スピリット》♡」
ハート型の機構にカードをスキャンし、六佳は呪文を唱える。拳銃からなにか得体のしれない力が湧いてくる。
六佳にはその力がなにか理解できた。
照準、発砲。
泥人形たちの背後に次々と弾が命中する。
それだけで崩れ落ち、ただの泥の塊に戻った。
何体いるかわからないがこれなら楽勝だ。
六佳は背後を取られないように留意しながら慎重かつ迅速に泥人形を撃破しつつ距離を詰めた。
https://kakuyomu.jp/users/herkysaro/news/822139840466652406
こういうときにピンチの仲間の場所に急いではいけない。
遠距離攻撃ができる場合は遠くから援護に入ったほうがいいのだ。
「命奈! こっち!」
命奈の周囲までの泥人形をあらかた片付けて呼び寄せた。
さっきまで身を隠していた朽ち馬車に登り更に発泡。さらに数を減らす。
「上に逃げるんです!」
道の脇の見晴らしのいい丘の上へ走り、登ってくる泥人形を次々と片付けた。
「やるじゃん六佳」
「まだまだきますよ」
「ていうかさ六佳」
「なんです?」
「なんか……手慣れてない?」
「うっ」
「あれ、なんかそういう訓練を受けてた的な、そういう感じ?? 高台をとるとか素人の考えじゃないよね?」
「いや、その、ちょっとこういうの得意で」
「こういうの得意??」
「とにかく撃ってください」
「はいよ」
気を取り直して二人は射撃を続けた。
しかし泥人形たちの数が減る様子はない。接近される前に対処はしているが、数が増えるばかりだ。
周囲は森。
逃げ道はない。失敗だったか。
「……?」
また感じる視線。
いや、うっすら泥人形からなにか力の流れを感じる。
六佳は茂みの方向を振り返った。
力の流れの方向はたぶんこの森の奥だと思う。
見られている。
さっきと同じ違和感を感じた。
「どうしたの?」
「なにかこの先にある気がします」
「ならもしかして」
命奈は泥人形に背を向けて六佳の指差すあたりにありったけの弾丸を打ち込んだ。
木々の影から飛び出したのはさっきのフクロウだった。
「やったビンゴ! 六佳ハートの六を使って」
「え、あ、はい」
六佳の意思とともにポケットの中のデックからカードが飛び出した。
「♡《ブレイク》♡」
スキャンして呪文を唱える。六佳が弾丸を放つと、散弾のように四散しフクロウを襲う。
命中。
フクロウはよろけながらも上空へ逃げた。
その様子を見ながら心のなかで『ごめん……』と思ったがおそらくこいつが原因なので仕方ない。
それにこの《スピリット》の弾丸は魔力のみにダメージを与えるのだ。身体の苦痛はない。
「サンキュ! あとは任せて♢《リープ》♢」
命奈の呪文。凄まじい跳躍力で一瞬にしてフクロウのもとまで飛翔した。
「《オブテイン》」
そのまま新たにカードをスキャンし宙に放った。フクロウの体が光の粒子になりカードに吸い込まれる。
たぶんこれで撃破に成功したのだろう。
その瞬間、泥人形たちも全て土に還った。
「いやー、ゴブリン退治かと思ったら今日はラッキーだったよ」
六佳が朽ちた泥の塊を観察していると命奈が戻って来た。
手にもったトゥルスカードをひらひらとさせて。
「クローバーの六ですか。ミネルヴァ?」
「あのフクロウの名前だね」
「あのフクロウがカードなんですか」
「そう。トゥルカードたちは実体化して事件を起こしてるんだ。だからアタシは依頼を募集して情報収集して、こうして集めてるの」
「じゃあバイトっていうのは……」
「この仕事を手伝ってほしいんだ。ね、やってくれないかな」
「ううん……」
「大丈夫よ。六佳強かったし」
「いやあれはたまたまというか」
「そうは見えなかったけど。戦うのに慣れてるって感じだったよ。サバゲーとかしてたんじゃないの?」
「いえ、FPSです」
「えふぴー?」
「ゲームのジャンルの一つです。敵と銃撃戦をするゲームなんですが、特に私がやってるのはネット対戦専用のゲームで……私は世界で百位以内のプレイヤーなんです」
「よくわからないけどすごいじゃん。へー、それで強くなるんだ」
近年はゲームをすることのメリットも発見されている。
例えばアクションゲームでは反射神経が培われる。
体を動かすスポーツでも無論鍛えられるが、あちらは体力の関係で休憩を挟む必要があるが、ゲームは体力をほぼ使わないので延々とその恩恵を受けられる。
さらに近年のリアルなゲームは現実のシミュレータとしても高い機能を有しており、一部の発表ではあるが軍の訓練にFPSゲームを行わせ、ゲームの成績の高い人物が実際の演習で高い能力を発揮したという研究結果もある。
「ねえ、お願い。カードたちも六佳のこと気に入ってるんだよ。みんなお別れしたくないって言ってるの、わかるでしょ?」
「そうですが……しかし、このトゥルスカードには意志があるんですか?」
「そだよ。みんな六佳のこと大好きだよ」
すると六佳のカードたちがそれを肯定するかのようにポケットから出てきて六佳を囲った。
「みんなのこと嫌い?」
「いえ、そんなことは。仕事で使わせてもらってたし」
「じゃあ、ね。いいでしょ」
ずずい……と命奈とカードたちが詰め寄ってきた。
「ちなみに……。なんで私なんです? カードを使うだけなら他の人でもよさそうな」
「そんなことないよ。カードに選ばれるっていうのは偶然なんかじゃないんだ。六佳がカードの声を聞いて出会ったのよ。魔力の少ない向こうの世界で見つけて集めてくれた」
「そんなつもりは……」
「魔力がないとこの子達は衰弱してしまうの。でも六佳がいたから魔力を分け与えられたの。六佳の心の世界に住む事ができたから。みんな感謝してるんだよ」
「……そうだったんだ」
「そう。魔法の盛んじゃない向こうでそれほどの力を持ってる六佳だったからこそ出会えたの」
魔力に魔法。
コールドリーディングで人を騙していた自分にそんなものがあるとはにわかには信じがたい……いや信じる気も起きないが。
カードたちが集まり、六佳の手元に降りてきた。
自分が断ればこの子達はどうなるんだろう。
聞くのが怖い気がした。それに実際に仕事を長らく手伝ってくれた恩は確かだ。
「……わかりました。やってみましょう」
「ほんと!?」
「危険なのはしませんよ」
「大丈夫。今回みたいに守るから」
「あと学校優先です。まともな職に就くって決めたので」
「もちろん。じゃあ卒業したらうちのカフェに就職しなよ」
「それは……まあ卒業するまでに決めます」
「えー。入ってよー」
そんな話をしながら、二人は道を歩き始めた。
その様子を見る者はいなかったが……並んで歩く二人はまるで姉妹のような姿だった。
♡ ♢ ♧ ♤
「……で、なんでこうなるんですか!」
「よっしゃ! やっぱかわいい!!」
カフェ〈アレス〉客室ホール。
六佳はウェイトレス姿に着替えさせられて、練習にとコーヒーを命奈の座る客席に運ばされていた。
「こ、こんな接客業とか無理です! バイトはフォボスじゃないんですか!?」
「いやー、うちの業務形態としてはね。ホールスタッフかキッチンスタッフという形で雇わなくちゃいけないのよ」
「じゃ、キッチンスタッフがいいです」
「だめ! 絶対こっちのが可愛い!」
「真顔で拳を握らないでください」
「てか接客はいままでもしてたじゃない」
「そうだけど、ちがう仕事だし」
「あ、せっかくだから占いスペースとか作ろうか」
「いいですよそんなの……」
「あー、可愛い子の淹れたコーヒーはうまいなぁ」
「淹れてはないです」
コーヒーとスイーツの香りが包むカフェを見回し、軽くため息をついて、六佳はこの先の事を今一度考えてみた。
つづく
https://kakuyomu.jp/users/herkysaro/news/822139840466738281
次の更新予定
毎週 日曜日 20:00 予定は変更される可能性があります
カードオブテインー魔法銃と放たれたモンスターとカード化の物語ー @herkysaro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。カードオブテインー魔法銃と放たれたモンスターとカード化の物語ーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます