第2話 Day After Day?(2)
…フワフワする、ここはどこだ?足元にはたくさんの本が散らばっている。これはこの前読み終えた本だ、こっちは途中で読むのをやめたケツを拭く紙にもならないようなつまらないラノベだ。読んだとこまでしかない。
「そんなにオタオタすんなってイッキョウ、相変わらず動揺が態度に出過ぎるな。直したほうがいいぜその癖。」
現実味のない声が響く。声の主はカゲロウよりも頼りなく儚い人間の形をした黒いモヤだった。
「誰だお前は!」
「そうカリカリするな、心配しなくてもお前の永遠の味方さ。いつもお前の中から見守っている。それに今はそれどころじゃないしな。」
「なんだどういうことだ?」
「人の話は聞くもんだ。時間もない。今は覚えてないだろうが今にもお前はあの地雷に殺されそうだ。お前のトリガーは顔にある初めてだから強い力が必要だ。話は以上だ、そろそろいける。さっさと戻れ。」
名前も聞かないうちにイッキョウは崩れた足元から落下した。見下ろしてくるモヤはニヤついていた。
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ガクンっ
落ちる夢を見た居眠り学生のようにイッキョウは目を覚ました。
そうだ危険な地雷女に追われていたんだ。もうすでに奴は展望台から降りてきてこっちに向かってきている。
「死んでないの?やっぱりランナーか。手加減しちゃダメだね。」
地雷女は50kgはありそうな石を浮かせてきた。
「死ね!」
石は意思を持つように罵声と共に飛んできた。
ほら、それだよ
モヤの声が聞こえる。もうヤケクソだ。
飛んできた石に思い切り頭をぶつける。顔がプッシュオープン扉のように少し押し込まれて……横に開いた。
鈍い音と共に開いた顔の暗い穴から精巧なマネキンのような何かがずるりと出てきた。ダルメシアンのように白黒ブチで顔は印象が薄い。
「こいつは…」
マネキンは右手首を駆動音と共に回転させた。
展望台のライトが怪しく点滅して消える。
「やっぱり出したね。怪物を出すのは初めて見たけど、あんまり強そうじゃないね。小細工の前に締めちゃおうか。」
「………嫌なこったバーカ!」
イッキョウは走って逃げ出した。マネキンは後を追って共に逃げる。
地雷女は逃げるイッキョウに石を飛ばす。石は身を屈めたイッキョウの上を飛んで展望台のライトに電気を送る電柱を砕いて倒した。イッキョウは近くの小さな池をザブザブと渡って逃げている。
地雷女はイッキョウを射程に捉えるべく池に飛び込んだ。
「逃げ切れると思ってんの君ー!死ね!」
地雷女は石を浮かした。
イッキョウはマネキンと協力して、池の上に生えている木の枝に捕まって池から上がる。いい的だ。
「ばっかじゃないの!ご褒美に楽に殺してあげるね!」
「……バカはオメーだ。なんでライトが消えて、何で俺が感電していないか分からないのか?」
池にはさっき倒れた電柱の電線が浸かっている。
「……は?」
「命乞いも、逃走もさせない。」
「助」
マネキンは木の枝に右手でぶら下がった状態で左手首を駆動音と共に回転させた。
「ギ」
池の中の小魚や虫と共に、地雷女が水面に浮かんだ。
「……助かった…」
マネキンはイッキョウの顔を押してまた穴の中に戻っていった。
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トーキョーミッドナイトランナーズハイ⤴︎ーー人間観察好き人間嫌い系人間の深夜徘徊物語ーー ノーメン @kzkzidononaka4978
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