トーキョーミッドナイトランナーズハイ⤴︎ーー人間観察好き人間嫌い系人間の深夜徘徊物語ーー

ノーメン

第1話 Day After Day?(1)

「なあイッキョウ、ここ教えてくれよ。得意科目の一つだろ?」

「……1000円」

「…ん?1000円?」

「そう、1000円」

「何で1000円?」

「…なんで俺が時間をかけて上げた成績の秘訣をタダでただのクラスメイトに教えなくちゃいけないんだ?」

「じゃいいわ、じゃあなカス」


悪態を突かれたイッキョウは昼寝の体勢を取った。

最近の学校にしては珍しくテストの結果、順位まで詳細に掲示される。勿論申請すれば非公開にできるが、どんなクラスにも必ず1人はいる動物園で客に下品な言葉ばかり教えられて、うるさい上に不快なオウムみたいな奴のせいで、詳細な順位まで流出してしまう。プライバシーとは流出させるためのものを定めているようなものだ。

やればできることをやりもせず、簡単に他人から結果のみを得ようとする人間のことが心底理解できない。それを良しとして、クラスの雰囲気のみ維持しようとする短絡教師もどきは、顔についたケツの穴から臭い匂いしか出さない。


「…ダルイなあ……」


クラスメイトからの奇異の目に晒された放課後、イッキョウは貸してもらえた寮とは逆方向に足を進めた。


目と耳を侵す騒音とネオンが乱舞する繁華街を越え、観光雑誌にも載らないような昨日の生い茂る丘の展望台の上にやって来た。海があるとか、街が明るいとか以外、特に特徴の無い景観がイッキョウの雑念を一時払ってくれる。

繁華街と打って変わって無音が聞こえるほどの静けさだ。無駄なものをどんどんデトックスされていく気がする。


「ほんまにええ夜ですね。」


無駄なものがきた。


「そこのお兄さん、ええ夜ですね。」


振り返るとそこにはいかにもな地雷系女子がいた。うるさいキーホルダーを無駄にジャラジャラさせ、デカすぎる涙袋をこれ見よがしに見せつけながら近づいてくる。


「それ以上近寄るな、俺はこの時間を長い長い人生の中で、今最も大切にしている。それをどこの馬のバカとも知れない、見るからに毒親に育てられて、股を開いて日銭を稼いでそうな貴様なんかに邪魔されるのは我慢ならない。」

「…馬の骨じゃないかな?それを言うならね、お兄さん」

「……ジョークも通じないなんてますます我慢ならない。」


大きくため息をついたイッキョウはスマホを取り出した。


「こんな時間にこんなとこにいるやつなんて不審者丸出しだ。それ以上近づいたら通報させてもらう。」


地雷女はニヤリと笑って……1歩足を踏み出した。


「警告したからな」


イッキョウが110をプッシュした時、スマホは飛んできた石に砕かれた。


「……なんてことだ、機種変したばかりなのに」


睨みつけたイッキョウはギョッとした。

地雷女の周りには拳大くらいの石がいくつか浮遊していた。


「ごめんな、お詫びに気ならないようにしてあげるね」


地雷女がピュッと指差すと石が一斉に発射された。

イッキョウは咄嗟に頭を守ると石を全身に受け、展望台の柵から落下した。

強か体を打ちつけたイッキョウは目の前が真っ暗になった。

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