禁歌と結界が恋と呪いを加速させる、静かな少年の痛快呪獄学園戦線必読作!

 『呪獄恋愛戦線 地味な呪術師男子とイケてる陰陽師女子には恋も愛もまだ早い!』は、呪術を「怖い力」ではなく「生活の作法」として置いた導入がうまい。合儀肺助が、自分の家が拝み屋で食べていると知った瞬間から、世間の視線を恐れて目立たず生きたい気持ちが固まる。その小さな防衛本能があるから、学園で突然絡まれる場面も誇張にならず、読者の体感として切実に立ち上がる。

 序盤の「告白のおまじない」相談が印象に残る。体格も迫力も規格外の柔道部員が、恋の話になると一気に子どもっぽくなる落差が笑いを作る一方で、肺助は「相手に呪いはかけない」という線を守ろうとする。第2話で、呪術の説明より先に免責事項を真面目に読み上げてしまうところも含めて、この作品はギャグで勢い任せにせず、呪術の扱いに「理屈と慎重さ」を噛ませるので、ラブコメの軽さと不穏さが同時に進む。

 10話まで読むと、伝説の木を使った告白の場が思わぬ方向に傾き、呪術が「恋の手伝い」から「戦線」へ姿を変え始める。肺助の性格は地味で受け身なのに、禁歌という術の性質が「禁じる」だけに、選ぶ言葉と覚悟がそのまま刃になる。恋と呪いの距離が近い作品で、近いからこそ、次の一言が怖くて面白い。
注……僕は27話まで読みましたが、ネタバレを避けるため、10話までのレビューにしました。一気に読めて面白い。

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