マジでウケるわ

J.D

マジでウケるわ

気持ち悪いったらありゃしない。

雄貴、お前の態度にゃ反吐が出るんだ。

いつも猫なで声で、どいつにもこいつにも

「大丈夫?」

とか、気持ち悪くて仕方ない。

いつもトイレの鏡見て、くしゃくしゃ髪の毛いじって、最近流行りのk-pop風な髪にして、なよなよして、良い子ぶりやがって。

それになんだあの集団?メス猿の雄貴軍団。

あんな狐みたいな奴に騙されて、ウキウキしやがって馬鹿面どもが。


「雄貴くん今日も可愛い!!!」

「今日雄貴くんに数学教えてもらったんだけど、分かりやすいし丁寧だし、ほんともうマジで無理」

「それな!一回結婚して欲しい」

あほか?お前らは。

雄貴もお前らみたいな阿呆はお呼びじゃないと思うぜ?瞬間発情加湿器さんたち?


あいつに発情してんのは、この馬鹿女どもだけじゃない。

この学校の不良どもからも、気に入れらている。

曰く、

「あいつマジで良いやつだわ。ノリいいし、話おもろいし、この前あのクソ教師から逃がしてくれたし」

とのこと。

しかし、雄貴様はさすがの手腕で、そいつらと迎合することはなく、うまい付き合いをしている。


どいつもこいつも、上手いこと乗せられやがって。

でも、俺は、俺だけは認めない。あいつは許さねぇ。


「ねぇ、孝太郎くん。今日、文化祭の打ち上げするんだけど、君もどう?」

「ねぇちょっと雄貴くん・・・やめときなって・・・」

「そうだよ・・・こいつ来たってどうせむすってしておもしろくないし・・・」

はっ、誰が行ってやるもんかよ?むすってしておもしろくない?おもしろくないはこっちのセリフじゃ!

「だとよ、雄貴。俺を呼ぶのはそいつらが許さんってさ。・・・いや、心配すんなよ?俺だってこんなアホどもと行くのは勘弁してほしいくらいだ」

すると、バカ女どもが顔を猿より真っ赤にして罵倒してきた。

こっちのがおもしろいや。

すると、雄貴様は何かお考えになったような顔をして、

「ん〜・・・でもやっぱり、みんなで来たほうが楽しいよ?ハブるなんてそんなの楽しくないし。勿論、孝太郎くんがどうしても嫌っていうなら、無理強いはしないけど」

・・・こう言われると、断りづらい。何か、負けたような気がするから。

仕方なく、俺は乗せられてやることにした。こいつに負けたわけではないけど。


・・・正直、書くのもうんざりするほど、おもしろくなかった。

いや、こういうのは大体、「やっぱり面白かった!みんなといた方が楽しいことに気付いたんだ!」みたいなオチになるだろうけど、本当に、想像以上につまんなかった。はっきし言って、まだ写経みたいに勉強しといたほうが数億倍ましだ。勉強したら自分の身になるしな。

まぁ・・・どんなだったかというと・・・

「ねぇねぇ、雄貴くんって、誰が好きぃ?」

「あ、それ聞いちゃう?私も聞きた〜い!」

「え、うちもうちも!」

・・・初めて雄貴に同情したかも知れない。阿呆は阿呆なんだなと、改めて思った。こんな感じのが3時間続くんだぜ?あいつ、大変なんだなと、多分もう一生思うことがない、完全純粋な同情をしてしまった。面倒くさそうな顔してたしな。

ちなみに男子たちは、羨ましそうに「いいなぁ雄貴・・・楽しそうだな・・・」と呟いていた。いやよく見てやれよ?げっそりしてるぞ?



その後、クソ退屈な、いや拷問に近い3時間の後、解散ということになって、俺はそそくさと帰ろうとした。そしたら、雄貴は俺の肩をぽんと叩き、

「孝太郎くん、ちょっといい?」

と言ってきた。なんなんだ?帰ってやろうかと思ったが、さっきのことを思い出したら、断る気が起きなくて、少し付き合ってやることにした。

少し歩いて、公園に着くと途端に、とんでもないため息をついた。

「はぁぁぁしんど。疲れたよ全く。何?好きな人って?なんで君らに教えないといけない訳?めんどくさいったらありゃしないよ」

・・・いや、それはそうなんだけど・・・やはりというべきか、こっちが素なんだな。

「孝太郎くん見てたでしょ?あの女子たちのベタベタ。鬱陶しいったらありゃしないよ」

「・・・そうか?楽しいかと思ってたんだけどな?」

「・・・分かってるでしょ?ほんとはどう思ってたかくらい」

と、奴はむすっとした顔で言ってきた。

「・・・なんでそう思うんだ?」

「だって、ちらっと君を見たら、『うわっ・・・』みたいな顔してたから。同情?みたいな」

バレてたか。観察眼の鋭いやつ。

「んで、なんだよ急に。俺は忙しんだ早くしてくれ」

「ん?ああ、特に用はないよ?ただ愚痴言いたかっただけ」

「は?そんなのお付のものに仰ったらよろしいんではないですか?なんで俺に言うんだよそんな関わりなかっただろ」

「まぁ、それはそうだけど、彼らに言ったって、どうせみんなにバラそうとするでしょ?面倒くさいじゃん。孝太郎くんそんなことしなさそうだし」

第一相手いないしねと言いたかっただろうが、そこは飲み込んでいた。いや思った時点で有罪だぞ?

「へぇ、雄貴さんはそんな人だったんだぁ。知らなかったなぁ」

「知ってた、てか分かってたでしょ?なんとなくそんな気がするよ」

・・・なんなんだこいつさっきから、見透かしやがって気持ち悪い。

「悪いが、俺はお前の傘下には入らない。俺ははっきり言ってお前が嫌いだ」

「それも知ってるよ?でも、だからこそ、君は他の、僕をカリスマみたいに言って持ち上げてくる人より信用できる」

「それはありがたいね。ところでそのカリスマ持ち上げ隊は、あの瞬間発情加湿器さんたちか?」

「瞬間・・・なんて?今とんでもないこと言ったよね?」

そう言いつつ、奴は笑っていた。・・・意外とストレス溜まってたのか。

そこから、俺と奴の、メスどもの悪口大会を開いた。

意外とこいつ、腹黒かった。

「そういえばね・・・僕好きな人いるんだ・・・」

「ああ?ああ、いるんだな」

「・・・桜庭華奈さん」

桜庭華奈・・・ん?それ俺の妹じゃね?

「えっとぉ・・・それわたくしの妹ですよねぇ?」

「そーですね・・・一年生の・・・」

「・・・・・・」 「・・・・・」

気まずいよ?・・・・まぁ、なんだ、応援はしといてやるか。

「ちなみに、なんで?」

「・・・・一目惚れ・・・」

「そうですか・・・まぁ、頑張れよ。あいつがどんなのが好きか知らんが、ま、聞いといてやるよ」

「ありがとう、心の友よ」

「だから友達にはならないって言ってんだろーが」

・・・にしても面白いな。あの馬鹿女ども。

自分が、雄貴くんに好かれてるかもって思っちゃってるんだ?哀れだねぇ。

雄貴曰く

「ちょっとあの人達は・・・品がないっていうか・・・」

おもろ。マジでウケるわ。









その後、奴との交流が増えた(こっちとしては何も嬉しくないが)。

そこで分かったことがある。

奴が嫌いなのは本当だ。それは変わらない。

だけど、俺が本当に嫌いなのは、阿呆みたいに騒いで、身の程も弁えず他人を見下し、勘違いをしている馬鹿女どもだった。

雄貴に言わせれば、「品がない」奴ら。それが、俺の、そして奴の嫌いな奴ら。

俺と雄貴は、敵の敵を眼の前にして、手は取らずとも、少し、分かり合えた気がした。

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