◆人面石◆

茶房の幽霊店主

第1話 父、人面石を拾う。

※(店主の体験談です)

※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)


※※※※※


まず店主の一族。 父はオカルト肯定派。

※(これには訳がありますが、また別件で)

幽霊も妖怪もUFOも全て『存在している』との考えです。


そして母は完全な否定派です。 この世に不思議な事などありはしない。

全ての現象には現実的な要因がある。 そう断じて譲らないひと。


バチバチにやりあう二人の間。店主は現実的な要因もあり、それでは説明のできない現象を目の当たりしているので中立です。(今は実家から離れて暮らしています)


夜、普段は寡黙な父が上機嫌で帰宅しました 。


『すごいもの拾った!これはすごいぞ!』


とかなり興奮ぎみで、

『何を拾ったの?』と母は玄関まで父を迎えにいっているようです 。


『車のライトで光っていたから、見に行ったら』


雰囲気からして拾ったものを母へ見せているようでした。


『来たらあかん!絶対、見たらあかんで!』


玄関から母の大声が轟きました 。


店主は二階の部屋から丁度おりてきた所で 口論している風な両親の様子に唖然とするしかなく 。


『何? 何を拾ってきたの?』

『来たらあかん! 絶対に見るな!』


母は父の姿を遮る形で背中を向けていて、声音も鬼気迫っています。


『縁起の良いものやろ?』


父は自分を褒めて欲しそうです。声しか聞こえませんが、不穏な、何処か不気味さを感じました。


『あった場所に戻してきて!今すぐ!早く!』

『なんだよ。カッコイイやろコレ。庭に置こう』


へらへらしている父と、怒り狂う母。尋常ではない状況。

家の中に入ろうとする父、それを遮り押し戻す母。


何度か繰り返される内、急に父が冷めたようで 『戻してくるわ』と、再び家の外へ エンジン音が聞こえたので、車で行ったのだと分かりました。


『何があったの?』

『石や。気持ち悪い、人の顔をした。赤い石。神社の近くで拾ってきたんだって。あかんやろ!』


男の手のひら大の赤い石。

表面には 苦悶の表情がのっていたそうです。


正直、見なくてよかったです。


その後、父は無事二度目の帰宅 ビールを飲みながらさっきあった事を忘れたのかテレビに夢中でした。


むやみに石を持って帰るのはやめたほうがいいでしょうね。

外で何かを拾って帰るときにはご用心を。


※※※※※


※(ここからは【人面石】考察です)


恐らく父が拾ってきたのは人為的に何者かが 『人面』に仕立てた石ではなかったのかと。

車のライトで光って見えたのは、表面に塗られた塗料が反射していた?

※(店主は素材の表面を見てないため、あくまで推測です)


だとして、なぜ神社の周辺へ置いたのか。驚かせるためのイタズラ。

もしくは父のように興味本位で家へ持ち帰るのを想定して設置したのではないか 。


いずれにしても善意ではなさそうです。


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◆人面石◆ 茶房の幽霊店主 @tearoom_phantom

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