第3話
ざぁざぁと雨が降る。そんな中も…俺は、どうやって強くなるべきなのかを、未だ悩み続けていた。
(あの後、俺に視界がある原因が分かれば…的なアイデアは浮かんだんだけどな…)
どうにかすれば、体を動かせる…という事は、実は薄々察していた。本来であれば、まるで動物のように動く植物など居ない。地球の食虫植物なども、あれは実は決められた通りの動きしか出来ない。それでは、獲物が来るまで無限に待つ羽目になる。
(だから、もしもガチで強くなるんだったら、動けないと…)
蔦(生えてないけど)が動けば、相手を縛れる。相手が動けなくなれば後はこっちのものだろう。食べてしまってゲームエンド、だ。動かせるのが得なのは間違いない。
そして、ここで話は数行前に戻るのだが…彼はまだ、どうすれば身体を動かせるのか、を僅かも理解していなかったのだ。ヒントとして言えば、植物にはあり得る筈のない鮮明すぎる視界くらいか。
(もし、俺が目が生えてるだけの植物だったら詰みなんだが…)
しかし、そうでなければ。もし、俺が魔力的な何かで視界を獲得しているとしたら、魔力が操れるようになればゴーレムみたいな理屈で体を動かせるかもしれないし…魔術とかすら使えるかもしれない。
となるとこれは…
(まず、魔力を感じる練習をしなきゃいけない奴なのでは…?)
俺は、さっきから今までずっと強くなろう、と考えてきたけれど…言われてみれば、大抵のラノベ主人公というものは魔力トレーニングとかの下積みをしている気がする。なら、俺もそれをするのが王道だろう。
(ふぬぬぬぬ…っ!)
俺は俺の中の体内魔力?的な何かを見つけようと体の奥底に意識を沈める。大丈夫、俺は植物で、餌とかで焦る必要もない。強くなれば時間はそれに比例して増えてく…そうやって自己暗示を掛けながら。
そうやって瞑想を続けて、2日が過ぎた。
しかし、俺は結局…いつまで経っても、魔力の陰すら踏むことは出来なかったのだった。
(なぜに…?)
もしかして、魔力とは存在しないのでは無いか…という、諦めが頭を過ぎる。実は、魔力とは人間やドラゴン専用の物だったりするのか……悩みだけが頭を巡る。
日が、射した。
(疲れた身に日光が染みるぅぅ……)
日光は、植物感覚的にいうと食事だ。それも、栄養剤とはレベチ(な気がする量)の…とんでも栄養を供給するヤバい食事だ。俺的には、こうやって心が疲れた時に疲労回復的に射してくれるのが神すぎると…
(ん?)
体の奥底で、何かが増えたのを感じた。瞑想をする前は気付けなかったほどの、小さ過ぎる変化。雨曇りの中瞑想をしたから、気付けた変化。
(…間違いない)
俺は、ようやく、弱さから脱却する道を、見つけようとしていた。
とある草の成長記 @E-Ikuraka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。とある草の成長記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます