夢のノート

荒木優堵

夢のノート

正月の日

僕は部屋の掃除をしていると一冊のノートが棚の奥から出てきた。そのノートはいくつかの漫画がボールペンで描かれておりすぐにそのノートがタクのものであるということに気づいた。

(あいつ、夢かなったのかな)

僕は外を見上げながらあの日のことを思い出した。


それはある日のことであった。その日僕は母の仕事の関係でいつもより早く学校に行くことになった。

僕が教室に入るとそこにはすでに一人の生徒が席に座っている姿があり僕は無意識にその生徒と挨拶を交わした。それがタクとの初めての出会いであった。その時タクはノートにたくさんの文字を書いていた。

「何を書いているの?」

「ネタ」

タクはそう言うと僕に一つのノートを見せてきた。そのノートにはたくさんの漫画が描かれておりどれもこれもとても面白いものであった。

「将来は漫画側目指してて、ソレで今のうちにたくさん書いておいているんだ」

タクはそう言うと他のノートも僕に見せてくれた。しかしどの漫画も絵が微妙なものばかりであった。

「すごく面白いね」

僕はそう言うとタクにノートを返した。

それから数カ月、僕はタクの漫画読むのが日課のようになっていた。

とても緻密なストーリー、複雑な心理戦、それは僕にとってもうプロ漫画家の書いた漫画であった。

とある昼休み、僕はいつものようにタクの描く漫画を見ていると一人の女子生徒が僕の見ていたタクの漫画を横から取った。

「なにこれ、もしかして模写?」

女子生徒はそう言うと他のページもめくっていった。

「アンタ、絵へたね」  

「これはタクのノートだよ」

僕がそう言うと女子生徒はタクの席へと向かった。

「ねえ、これってなにの漫画の模写の?」

「これはもしゃなんかじゃないよ、全部僕が描いたんだ」

タク嬉しそうには女子生徒にそういった。

「えっ本当に?」

女子生徒はおどろきながらそういった。

するとタクの顔はさらに嬉しそうになった。

「でも絵はすごく下手なのね」

女子生徒はそう言うとタクの席を離れていった。

それからタクはすっかり自信をなくしてしまい漫画を描かなくなってしまった。

それから数カ月後の終業式の日、タクは何も言わず学校を去っていった。


それから今、僕は本屋で本を見に行った。するとそこにはタクが原作の漫画がおいてあった。僕は驚きその漫画を買った。

作者コメントをみるとそこにはある友達のおかげでここまでこれましたという一文があった。


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夢のノート 荒木優堵 @harukazemibori

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