後編
おばさん「雪斗君・・・ そろそろ・・・・ね」
そう、おばさんに告げられ俺は静かに頷いた。
おばさんは、やさしく冬華の肩にカーデガンをかけるとそのまま街灯の奥に停めていた車に連れていった。
冬華はおばさんに肩を抱かれながら歩いてる最中も空から降る雪を見ていた。
街灯の明かりから二人が見えなくなったのを確認して雫さんが声をかけてきた。
雫「雪斗君・・・いつもありがとうね・・・」
そういうと深々と頭を下げた。
雪斗「やめて下さい、お義姉さん・・・これは俺の・・・冬華・・妻との大事な思い出ですから・・・」
雫「でも!!雪斗君も、もう43才になったんじゃない!いつまでも妹に人生を・・・時間を割くのは・・私たちも・・・申訳なくて・・・」
そう、冬華は若年性アルツハイマーだった。
おれは中学最後の冬に、冬華と交際を始め冬華と大学卒業と同時に結婚した。
二人の間には子供もでき、冬華と娘と俺の3人で幸せな日が続くと思っていた、そんなある日残酷な診断が冬華に告げられた。
先生「若年性アルツハイマーです」
俺もお母さんも雫さんも言葉を失った、先生になんとか治療をお願いしたが冬華のアルツハイマーの進行は早く診断から一年後には・・・
冬華「ねえ!!雪斗!!! しらない子供が部屋にいる!!!警察に連絡して保護してもらって!!」
そう指差す先には自分の愛娘が泣いたまま部屋の隅で蹲っていた。
俺は絶望した・・・・このままでは娘に被害が出ると思い。
冬華を義両親に預ける事にした。
それ以降も冬華の容体は悪くなる一方で、とうとう俺との結婚も大学の思い出も、高校での二人の甘酸っぱい青春も全てわすれてしまった。
雫「冬華は中学のこの時の事までしか覚えて無いんだね・・・」
お義姉さんは、冬華と良く似た横顔で同じように空を見上げてそう微笑んだ。
雪斗「きっと、この思い出だけが冬華の今の希望なんだと思います」
そう俺も空を見上げて、つぶやく。
雫「そうかもしれないね・・そういえば娘さんはどうなの?最近は?」
あの冬華の一件から娘は部屋に引きこもるようになり、中学に上がる少し前にようやく普通に生活が出来るレベルになった、しかし母親へのトラウマは消えず決して母親の実家には行こうとしなかった。
雪斗「ええもう、大学生ですから・・・この間彼氏を紹介されて正直複雑でしたよ・・・」
雫「ねぇ・・雪斗君・・・もう冬華の事で縛られなくても良いんじゃない?このクリスマスイブの告白も10年も続いて・・いつまで・・・」
そう言いかけたお義姉さんの言葉を遮るようにベンチから立ち上がり、左手の指輪を雪の降り注ぐ空にかざす。
雪斗「俺、たとえ100回冬華に告白されても、君を好きだって伝えます!」
(たとえ、100回目の好きが聞けなくなっても 俺の方から100回でも1000回でも君に好きだと伝えるよ・・)
完
読んでくださりありがとうございます。
100回告白されても・・・ nayaminotake @nayaminotake
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