さじ加減は自分次第

佳上成鳴 カクヨムコンテスト参加中!

 

「何サボってんだよ」


 突然声をかけられて見ると同僚の佐々木が立っていた。


「休憩中に横になってるんだからサボりじゃねーよ」


 そう言ってまたベンチに横になった。


 今日の午前中の仕事は本当にハードだった。次から次へと問い合わせ電話が鳴るし、ひと息入れようと珈琲を淹れれば来客だ。


 どうなってんだよ。と小声で思わず呟いたくらいだ。


「河野、昇進して課長になったからって全部やろうとするから疲れるんだよ」

「全部把握しないと指示出来ないじゃないか」

「少しは周りにフレって話だよ」

「じゃあ、佐々木が少しはやってくれんのかよ?」


 と言うと佐々木は平然と、いいよ。と言った。

 俺は驚いて顔を上げた。


「このままだと倒れちゃうよ」


 ……まぁ確かにこの状態を続けてたら持たない。しかし素直に自分の仕事を回りに振っていいものなのか?

 と、悩んでいると佐々木が続けた。


「課長の仕事は手伝えないけど誰でも出来る仕事も全部1人でやってるって自覚ある?」


 言われて驚いた。そんなつもりはなかった。


 俺の会社はデザイン会社でデザインをするのが仕事だが上司からPCの調整しろだの部下から会議の資料の確認してくれだの余計な仕事も多い。


「部長のPCの調整くらい俺、出来るよ。言ってよ」


 俺は体の力が抜けた。自分に言われた事は全部やっていたことに気付いてなかったのだ。……そうか、俺じゃなくてもいいのか。


「まぁデザイン会社の部長がPC調整出来ないって問題だとも思うけどさ」


 確かに。何で部長になったのか。謎だ。


「そういうところが課長になった理由だとは思うけど部下を上手く使うのも上司の仕事だと思うぜ?」


「……そうか、そうだな。これからは出来そうな事は皆にお願いするよ」


 そう言ってベンチから起き上がった。


 なんだ、俺、自分で自分を忙しくしてたのか。なんだ。

 何だかホッとした。


「わかったか」


 そう言われてにやりと笑って佐々木をどつきながら答える。


「お前はアゴで使って過労死させてやるか」


「俺は適度にサボるから平気」


 2人で顔を見合わせて笑った。


 俺はいい会社に勤めているな。と心から思った休憩時間だった。


 午後も頑張ろう。

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