同じ文字列が、こうまで美しくなるなんて……。

タイトルから想像しうるお気楽さは、作中にはない。
あるのは、静謐さと美しさ。
こまやかな感情の交差が、キンキンという文字列であらわされる刃筋の交差によってあらわされる。そのシンプルに過ぎるほどの音は、澄んでいればいるほどに舞手の練達をしめしている。

そして、音がいっしゅん、揺らぐそのとき――。
そこに、哀切なまでの純情がちらりと通りすぎるのだ。

……こりゃあ、ひどいよ。
おとなげないよ。
こんな実力差の示し方があるなんて。

「第一級レベルのプロ」ってこういうもんなんだと、分からされたよ。

負けました。
既刊、全部読ませていただきます。

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