ことばに、酔うがいい。

小説を読む快楽とは、なにか。

まず、ことばだ。
ことばによって小説は構成されている。

あなたにも「絵柄が好きな漫画」というものはあるだろう?
それとおなじで、小説を織り成す最小単位であることば――文と、それがつらなってできあがる文章とが、まずは読みの快楽をもたらす。

この効用を、理解できていない作品が、すくなくない。プロの作品においても、新聞記事みたいな味気ない文章を書いて「小説だ」と言い張っているものが散見される。
まず、ことばを読むことのきもちよさを、小説はあたえねばならない。

ひるがえって、本作はどうか。

快楽――である。
リズム感、造語のルビ芸の楽しさ、大仰なリフレイン、こってりと塗りかためるような形容詞の使いかた……すべてが、小説を読む快楽へとつながっている。

こうまでくると、ストーリーなどは二の次になる。もちろん、かんがえぬかれた設定、魅力的なキャラ造形などもきちんと用意されているが……それよりまず、読むことのよろこびにあなたは打たれるだろう。字を追い、ことばに浸るだけで、あなたは極上の酔いに揺られるだろう。

それが、小説というものだ。

すなわち――
「これ」が、小説というものだ。

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