天と地の架け橋になれるように。

五月雨翠紗

第1話

「え· · · · · ·?」


 私———姫宮陽毬は、思わずそう呟いて振り向く。


 そこにいたのは、


———声からも予想できたが、



 2人の美形男子だった。


 1人は黒髪で、赤い瞳。血のような、赤。

 そして、臙脂色のシャツに、黒のジャケットとパンツ、黒のネクタイ。派手なようで、品が良い。シャツの臙脂色と瞳の紅の相性が良いのだろうか。


 もう1人は銀髪で、青い瞳。薄い、空色。

 そして、青みがかった白いシャツに、白のチノパン。ネクタイはしていなかった。ラフな格好でありながら、その着こなしがいいのか洗練された印象を受ける。


 ———2人とも、ニンゲンではないのだろう。あまり見かけない瞳の色をしていた。



「驚かせて申し訳ない」

 

 眉を寄せて、銀髪の方が言った。


 先程の声は、もっと軽かったように感じる。黒髪の方の声だったのだろうか。


 それにしても、本気なのだろうか。———結婚、だなんて。




『俺と結婚してくれないか』


 先程の声が、蘇る。


 無意識に、頬が赤くなるのを感じた。




「場所を変えて話そうか」

 

 銀髪がそう言って片手を上げると、どこからか車がやってきた。


「えっと· · · · · ·」


 私が困惑していると、ふっと足が地を離れた。


「えっ· · · · · ·⁉︎ えっと· · · · · ·」


 後ろをみると、黒髪の方が私を持ち上げているのが分かった。


「強引でごめんね〜」


 目が合った黒髪に、そう言われる。そしてそのまま、車の後部座席に押し込まれた。


 · · · · · ·強引どうこうと言う前に、これはまるで拉致ではないか。


 私は誘拐されているのだろうか。


 ———もしかして、これは生命の危機⁉︎



 車内を見回しながら困惑していると、


「おい、戸惑っているじゃないか」


 車の反対側から乗ってきた銀髪が、口を挟んだ。


 ———いや、これで冷静でいられる人なかなかいないと思いますよ?


「それはすまない。だが、すぐに着く」


 黒髪が、運転手に何かを指示する。行く場所を伝えたのだろうか。私には、聞こえなかった。


 ———どこに行くのかを教えて欲しいのですが?


 そんな私の心の叫びが伝わるはずもなく、車は静かに動き出した———。

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天と地の架け橋になれるように。 五月雨翠紗 @rulina

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