第7話 大ファンと大アンチ

 ◆◆◆


 ――――真っ暗な暗闇の世界で漂うあたしの身体が、ずぶずぶと闇の中に沈んでいった―――。


 ゆっくりゆっくりゆっくりと………。


 そんなあたしを誰かが見てる。


( これは『夢』の中? 死んだはずの『真由』がいる?)

「……真由……。お姉ちゃん、ナンバー1vtuberになったよ……。約束したとおり…… 」


 うずくまるあたしに妹が近づいてくる。


「真由?」


「バカああっ!」


 顔面をグーパンされた。


「? ? ?」


 困惑するあたしをじっと見つめ。


「いつまでメソメソしてるの、お姉ちゃん!」


「あははっ、情けないなぁ……。夢の中の妹に 慰めてもらうなんて……」


「ここは夢だよ。わたしもただの夢の存在だよ……」


 笑顔で真由は、落ち込むあたしの顔を、両手でむぎゅっとつかんだ。


「……でも、お姉ちゃんの中にいるわたしだよ……」


「………っ」


「お姉ちゃんが大好きっていってくれた、わたしだよぉ」


 あたしを優しく抱きしめた。


「……わたしはお姉ちゃんが大好き。だから自分を嫌いにならないで……」


「ううっ……。うえ――――ん! まゆ〜〜〜〜ぅ!」

 

「さあ、行ってきて。わたしの大好きな お姉ちゃん」


 妹に背中を押され、暗闇の世界から 大切な親友の元に向かった。


 ◆◆◆


 晴れた陽射しの中にいる 妹の姿がすぅーっと消えていく。


( ……ありがとう、真由……。あんたのおかげで、大事なものを失わずにすんだよ…… )


 微笑むあたしに、車椅子に座るマリアが。


「どうかしたんですか、『黒条 切華』さま?」


「……妹に……ちょっとお礼をね……」


「妹さんがいるんですか?」


 胸の前で手を握りしめ、妹との思い出を噛みしめる。


「……うん……。あたしのここに…………」


 ――ん?


「『黒条 切華』……?」


「はい、これからよろしくお願いしますね、黒条 切華さま♡」


 天使の笑顔の親友に問いかける。


「ど、どうしてそれを……?」


「はい。わたし、大ファンですから♡」


 そっと唇を、あたしに近づけ――。


「……さあ、帰りましょう。わたしたちの世界へ……」


 顔を真っ赤にしてあたしたちは歩んで行く。


「……ええ、そうね……帰ろう。あたしたちを待ってくれている、あの場所に……」


 2人でvtuberの道を歩んで行く。


 ――2人でずっと一緒に――

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あたしの親友がvtuberのはずがない。 佐藤ゆう @coco7

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