その小説を読んだ時、AI生成された美麗イラストが見えた

橋元 宏平

AIに取って代わられる仕事

 ――さんがまだ出会っていないカクヨムで注目されている小説をご紹介します。


 カクヨム運営さんから定期的に送信されてくる「今週注目の小説」メールで、新たな小説を知る人は一定数いると思います。

 自分もそのひとりで、紹介された小説は1話は読むようにしています。

 気に入ったらフォローして、続きを読みます。

「自分には合わない」と思ったら、申し訳ないですけど1話切りします。


 みんながそうとは言いませんが、小説を読む時には情景を想像すると思うんですよ。

 例えば、中世ヨーロッパ風の石造りの街並み。

 雑然ざつぜんとした冒険者ギルド。

 カッコイイ主人公。

 可愛いヒロイン。

 頼りになる仲間。

 迫り来る魔物。

 禍々まがまがしくおぞましい魔王。


 場合によっては脳内でアニメ化されて、声や効果音までついてきます。

 だから、アニメ化された時に「イメージと違う」と感じるんですね。

 だいたいは観ているうちに、慣れてくるんですけど。


「今週注目の小説」から、とある小説を読んでいたところ、妙な違和感を覚えました。

 その小説は、確かに面白い。

 面白いのですが、明らかに違和感を抱いたのです。

 脳内に浮かんだ情景が、AI生成された美麗びれいイラストだったからです。


 人の手によって書かれた小説には、作家の個性がまろび出てくると思うんですよ。

 一方、AIによって生成された小説は高品質だけれど、違和感しかない。

 感覚的に言うと、心が動かされないのです。

 そう、AI生成された美麗イラストを見た時と同じ感覚。


  近年、AI生成された美麗イラストをよく見かけるようになりました。

 AI生成された画像は、めちゃくちゃ綺麗ですよね。

 ですが、不自然な違和感があります。


 自分が、時代遅れのジジイだからですかね?

 AI生成のエロ画像には、全然興奮しないんです。

 下品な言い方をすると、チンピクしない。

 チンピクは、チンチンがピクピクするの略です。

 つまり、チンチンがピクリとも反応しなかったのです!

 いや、チンピクの話はどうでもいいんですよっ!


 その小説の作者が気になって、確認してみれば膨大な投稿数。

 どれもこれも、似たような小説ばかりが並んでいました。

 小説のキャッチコピーも付いていません。

  𝕏(旧Twitter)アカウントもありません。

 作者の自己紹介文すらありません。


 違和感は、確信に変わりました。

「これは、生成AI小説だ」と。


 ふいに、小学校の担任を思い出しました。

 小学生の自分が「将来は小説家になりたいです」と言ったら、

「そんなもん、どうせすぐにAIに取って代わられる仕事なんだから諦めろ」と、吐き捨てられました。

 仮にも、小学校の先生がですよ?

 小学生相手に、そんなこと言っちゃダメでしょ。

 

 あれから、約40年。

 生成AI小説でリワードを稼ぐことを、副業にする人が増えました。

 ChatGPTを使った小説が、芥川賞を受賞したなんて話もあります。

 生成AI小説でも、作家を名乗れる時代なんですね。

 ジジイはビックリです。


 どんなに素晴らしい小説をAI生成出来たとしても、それは自分が書いた小説とは言えません。

 AIが生成したAIの小説です。

 先生が言っていた未来が、現実になりましたよ。

 皮肉なものですね。


 話は変わりますが、読者の皆さんは「魔法のスター マジカルエミ」という魔法少女アニメをご存じでしょうか?

 1985年に放送されたアニメなので、知らない人の方が多いと思います。


 主人公は、一流手品師マジシャンを夢見る11歳の不器用な女の子。

 妖精から魔法を与えられ、16歳の天才手品師理想の自分へと変身。

 超人気スターとなった彼女は、マジックの祭典で大賞を獲得します。


 ですがそれは魔法の力によるものであり、彼女の実力ではありません。

 彼女は喜ぶことが出来ず、魔法に頼ることに疑問を抱きます。

 悶々もんもんとしていたある日、憧れの伝説的手品師が努力で一流になったことを知ります。

 最後は魔法を捨て、実力で夢を叶える道を選ぶのです。


 自分も魔法AIに頼るのではなく、実力で書き続けていきたいと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その小説を読んだ時、AI生成された美麗イラストが見えた 橋元 宏平 @Kouhei-K

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画