第4話言いたいことも言えないこんな世の中じゃ 4

「ただいまー。まあ、誰もいないんだけど」

 陽菜と別れ、朝ほどではないが少し混みあった電車を降り、マンションの最寄り駅からもっとも駅近のスーパーで、今日の自炊ようの食材を物色。

 持参していたエコバッグに買った食材を詰め、ぶらぶらと揺らしながら10分ほど歩く。

 そして、冒頭である。間借りしているマンションの一室は一人暮らしなので、すでにとっぷりと暮れた夜で暗く、静まり返っていた。

 誰もいないのに、なんとなく言ってみた『ただいま』。特に深い意味はないんだけど、何故かぼんやりした気持ちになる。

 「とりあえず作るか…」

 そういって、買った食材をテーブルに置き、エプロンを装着しながら調理の邪魔にならないように髪ゴムで髪をまとめ、先ほど大学の学食で読んでいた本を広げる。読んでいた本は初心者用の料理本。今日の晩御飯はその中にレシピの乗っている料理にするつもりで食材を買ってきた。

 今日作るのは、そう…。


 「肉じゃが!」


 そんな感じで調理開始である。


 今日は、豚肉を使った肉じゃがに挑戦である。

 まずは買ったパックから豚こま切れ肉を出し、一口大に切ってよけておく。

 お次はジャガイモ。土がついたジャガイモをよく洗い、土と汚れを落とし、そのうち皮をとるのも包丁でできるようになりたいが、今日のところはピーラーで皮をむき、根の部分を包丁の角の部分でえぐり、取り除き乱切りにし、水をはったボウルに入れ水にさらしておく。

 次は玉ねぎと人参。人参はジャガイモと同じように皮をピーラーでむき、乱切りしておく。玉ねぎの方は串切りにする。

 しかしである。料理を勉強、つまり自炊し始めてレシピ集などの料理本を初めて本屋で購入し、読んでみた初心者はみんなぶち当たる壁だと思うのだが。


 乱切りってどんな切り方? 串切り? 焼き鳥みたいに切るの?

 少々って小匙何杯? 目分量って何グラム? what?



 そんな感じで、そもそも用語そのものがわからないので、まず、用語の意味や少々などさじ加減の把握に苦労する。

 というか私はした。


 最初はそんな感じだったので、料理が上手な知り合いに泣きつきメッセージを送ってみたりしたわけである。

 そして、返ってきたメッセージはというと…。


 『考えるんじゃない…、感じるんだ。』


 …ホアチャーッ! とか叫ばれた気分でした。

 まあ、それも少し成長した自分には笑い話なわけだが…。


 肉の臭み消しに、ショウガも少しばかり薄切りにしておき、鍋にごま油を軽くたらし熱し、ショウガを炒める。

 さらに、少ししたら切っておいた豚小間肉を投入し炒め、肉の色が軽く変わるまで炒め続ける。肉の色が変わったら次である。

 切っておいてさらしておいたジャガイモ、さらに人参と玉ねぎを投入。さっと炒め、頃合いをみて出汁で煮て、浮き出るアクをとり調味料、砂糖、料理酒、みりん、醤油を投入。

 すると…。


 ぱんぱかぱーん。初心者用のレシピまんまの肉じゃがの完成である。

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それはまるで澄んだ済んだ青のようで 和音 @wadati888

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