第3話言いたいことも言えないこんな世の中じゃ 3
まだまだ田舎から出てきた新入生が、都会の雑踏とか満員電車とかの都会のルールに慣れず、落ち着きがなく、おのぼりさん丸出しの桜の散った五月の半ば。
ゼミやら大学のサークルなどで知り合った私たちのグループは、グール内で一人暮らしをしている私の1LDKのマンション一室に集まって、少し時期のずれた鍋パーティーをしようとしていた。
前々から、芽生えたばかりの親睦をさらに深めるために家飲みをしようと盛り上がってており、みなの都合が良い日程を事前に話し合って決め、決行日となっていた日。
その日は生憎の空模様で、シトシトと小雨が地面のアスファルトを濡らす、旧暦では夏なのに少し肌寒い日だった。
今日は寒いなあ。こんな寒い日は鍋が食べたい。そうだ、今日のパーティーは鍋パーティーにしよう!
家飲み用の食材を、集合場所に指定された私のマンションの最寄り駅から一番近いスーパーで雑談しながら物色していたら、そんな感じで盛り上がり、ちょうど実家の親に勧められて私が土鍋を持っていたことにより、その日は全会一致で鍋パーティーをすることになった。
そこまでは特に問題はなかった。そう、問題はなかったのである。
しかし、パーティー開始のために、皆で私の住むマンションの狭苦しいキッチンスペースで皆が集まって鍋の準備を始めた瞬間、その問題は発覚した。
初めに、私は料理の初心者だったということを自白しておく。
そして、それは皆同じだと思っていた。
だって、みんな片親とか鍵っ子とかじゃないと、事前の交流中の会話で把握していた。
だから、皆料理の腕前は同レベルだと思っていた。
しかし、実際に調理を開始してみると…、
ギャー、なんでそんな切り方するの!?
違う! 猫の手って言ったけど違う! 添えて! 食材に手を添えて!
待って! 塩と砂糖ベタに間違えないで!
お酒はお酒でも料理酒! ビールで鍋の出汁作るのはないってば! お酒入れてとは言ったけど!
そんな感じである。そう、私、堂嶋青葉は大学生活を初めて料理スキルがポンコツなのが発覚してしまったのだ。
今となっては笑い話である。そう、私が友達になったグループ内の子たちは良い人だったので苦笑しながら許してくれたので、今となっては笑い話である。
しかし、この出来事をきっかけにして鍋パーティーの最中、お酒の酔いの勢い手伝ってある宣言をする。
「今から料理の勉強をして、自炊できるようにする!」
そん感じで、私の料理人人生はスタートしたのである。
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