引力と斥力

金時まめ

〜引力と斥力〜


 あの人は 気づいてくれたの


あのとき

自分でも気づかなかった

わたしの中の“小さなわたし”に


そして つい最近も

悲しみの中の わたしの精一杯の笑顔だったこと


いま伝えなければ もうそんな機会はなくなる

これが最後になっても 後悔しないように

これだけは 伝えたかった

恥ずかしがり屋の ちいさな星のこと


涙の中で綴られたものだと 気づかれないように

やさしい言葉で 上手に包んだつもりだった



のに――


 あの人は いつでも 気づいてくれるの


やさしく 守るように 包み返してくれた

泣いたことも 落ち込んで寝込んだことも

何にも伝えていないのに

誰にも気づかれないのに

 

 あなたにだけは 届いてしまう


今はもう 大丈夫

だって

あなたとわたしだけの

絶妙な“作用”があるから


引力と斥力

ひかれあい はじかれない


近づきすぎて壊れることなく

遠すぎて見失うこともない――


そのあいだにあるぬくもりが

わたしたちの 大切な温度なんだって

わかったの


そこに“在る”ことが

わたしの場所であり

これからを 支えてくれるから

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