第7話 防衛

 魔物の襲撃頻度が増えてきた。数が少ないので対応できているが、村人たちは疲弊している。そんな時、近くの集落が壊滅した。何人かが逃げのびてこの村にたどり着いた。話を聞くと、度重なる襲撃に業を煮やした住民たちが、追い払うではなく駆逐しようと大人数で魔物を追いかけたところ、大量の魔物が潜んでおり、一気に襲われそのまま集落を襲った。たまたま出遅れた人間が現場から逃げ帰り、住民は方々に逃げたが何人生き残ったか。魔物はそれほどの数だったらしい。この村もいつ襲われるか。

 幸い、地理的に襲撃は北東からに限定されるのでここに防衛線を敷けば良いのだが、私たちの戦力では数十匹を超える魔物に対応するのは難しい。何度も話し合い、ある結論にた取り着いた。神話の英雄のように戦うしかないと。

ルルークの戦闘は理解できないが、ハロウの戦いはまだ理解ができる。かと言って、杖から魔法が出せる訳でも無い。でも、魔法では無くとも同じようなことが出来れば良いのでは、と誰かが言った。炎は出せなくとも火は使える。水も、爆発もさせることが出来る。西の森には燃える黒い水が溢れている。燃えすぎるので使い道は無いが、これを大量にとってきて、瓶に詰めた。また柵の周りには枯葉を。そして密封した瓶。その先には土塀。住民総出で数日のうちに作り上げた。

 毎日、柵の外にかがり火を上げ、魔物が近づかないようにし、見かけると弓をかけ追い払う。そのようなやり取りが数日続くと、魔物たちも業を煮やしたのか、百匹は越えるような集団で襲ってきた。小鬼や魔犬だけでなく、簡素な防具を着た豚頭も数匹。こいつらが魔物を統制しているのだろうか。小鬼たちが柵を壊して、一気に押し込もうとした瞬間。土塀の上から柵に向けて火矢を打ち込んだ。あっという間に枯草に火が回り、魔犬や小鬼を燃やした。炎を躊躇している魔物どもを豚頭が叱咤して炎に向かわせる。炎より豚頭が怖いのか、狂ったように炎に向かう魔物ども。高々、枯葉の炎では大した火力では無いが、集団が炎を超えるタイミングで旨く次の仕掛けが発動した。大きな爆発音が鳴り響き、黒い破片が魔物どもを貫く。便が爆発して、その中の釘などが魔物を襲った。阿鼻叫喚の地獄絵だ。一部はこの爆発から逃れ、土塀に向かったが、そこには落とし穴が。うまく逃れたものも、土塀の上から落とされ、杭が仕掛けられた落とし穴に落ち込んだ。残るは豚頭と十数匹の魔物。土塀から弓を射かけ数匹は逃したが、大部分始末できた。

 私たちは火が消えるまで勝利の余韻を味わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その他大勢の物語 りゅうちゃん @ryuu240z

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ