「窓辺に写る影」

人一

「窓辺に写る影」

窓に写った僕がニヤリと笑った。

そんな気がした。


最近頭が痛い。

その上、変な幻聴まで聞こえてくる。

『なぁ、もう満足しただろう?』

「そんなわけがあるか。」

いつもいつも喧嘩している。


僕は普通に日常生活を送りたいのに、幻聴が邪魔をしてくる。

ただ日常に出てくるだけならまだしも、仕事中もお構いなしにやって来る。

『それ、違うんじゃないか?』

「そんなわけが……いや、本当に違うな。」

僕は、迷惑な幻聴にサポートをされている。

そのおかげで、ミスばかりだった仕事は比較的マシになった。


僕が夜眠る時は、幻聴も黙り静かにしてくれている。

日中うるさい癖して、意図は分からないが静かに越したことはない。


眠りには抵抗なく入れるけど、朝起きた時身体がやけに疲れている時が多い。

幻聴に次ぐレベルの問題だ。

消し忘れたのか、たまにPCやTVがつきっぱなしの時もあった。

ただの消し忘れか、夢遊病ってやつなのか……考えたくはないが、幻聴が僕が眠っている間身体を勝手に使ってるとか。

まぁ、そんなまさかな。


とある日の朝。

目を覚ますと金縛りのように動けなかった。

目は開くが他はダメだ。

指1本すら動かせない。

「やばい!遅刻する!」なんて焦っていると、幻聴が聞こえてきた。

『おはよう。さてそろそろ返してもらうぞ。俺の身体を。』

「知るかよ!今は僕がこの身体の主なんだぞ!」

口は動かせないので、心の中で叫んで反論する。

何とか身を捩って、抵抗しようとするが突然激しい眠気に襲われる。


「ぅあ……」

『ほら、もういいから。寝ちまえよ。』


抗い難い眠気に僕はそのまま瞼を閉じて意識を手放した。


「ふぅ。ようやく俺の身体を取り替えせた。

まったく……油断も隙もないな。」


『……!……!』

頭の中でなにかが聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


窓に写った俺が悔しそうに泣いている。

そんな日もある。

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「窓辺に写る影」 人一 @hitoHito93

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